酔いどれ天使と天国と地獄 [2010年7月に観た映画]
『酔いどれ天使』
(1948・日本) 1h38
監督・脚本 : 黒澤明
出演 : 志村喬、三船敏郎、山本礼三郎、中北千枝子、千石規子、久我美子
『天国と地獄』
(1963・日本) 2h23
監督・脚本 : 黒澤明
出演 : 三船敏郎、仲代達矢、山崎努、石山健二郎、香川京子
新文芸坐 《生誕100年 世界に誇る巨匠・黒澤明》にて。
ぴあをパラパラ見てたら、「あ、今日『天国と地獄』やってる」って事で観に行きました。
さすが黒澤監督で、映画館は立ち見、通路に座って御覧になっている人も。
ちょっと懐かしい気分になりました。
しかしそれがいい事なのか悪い事なのか。全員がきちんと座席に座って観れるシステムにするべきなのでは。とも思う。
『酔いどれ天使』
前に観た事有ったか思い出せませんでしたが、観てみたら多分初めて。
アルコールと名のつくものなら何でも来いの酔いどれ医師眞田(志村喬)の元に、町を仕切るヤクザ松永(三船敏郎)が手のケガの治療のためやってくる。
松永は結核に掛かっていた。「療養せい」と眞田。「死ぬのなんか怖かねぇや」と松永。
どうにか療養の方向に持っていけたが、松永はヤクザの身。静かに療養できるはずも無いのでした。
眞田医師と松永の腐れ縁的な関係を軸に、戦後混乱期で町には悪がはびこっていた当時の世相を描く。
松永は悪そのものの存在。その悪に人(松永自身も含めて)は屈するべきなのか。
いや、悪には理性を持って戦うべきなのだ。また理性を持ってすれば悪に勝てるのだ。と。黒澤ヒューマニズム。
黒澤映画は台詞が面白い。と、志村、三船の名優のやりとりで気付きました。
野蛮で下品な言葉遣いだけどそこはかとないユーモアがあり、それらが名優の口から発せられるととても面白い。
『天国と地獄』
大手靴会社ナショナル・シューズ重役権藤(三船敏郎)に「お宅の息子を誘拐した」と電話が入る。しかし誘拐されたのは権藤のお抱え運転手青木の息子だった。
それでもなお犯人は権藤に三千万円の身代金を要求する。
特急こだまを使った身代金の受け渡しは犯人の思惑通りに成功。
子供は無事開放され、戸倉主任警部(仲代達矢)率いる捜査陣の必死の捜査が始まる。
傑作。途中までは超傑作。2時間23分の長尺、その長尺の全編にわたり緊張感が持続する。こちらの集中力が持たない。でも傑作。
誘拐事件、会社の権力争い、人間としてのモラル、当時の社会的背景。それらが重層的に絡み合いながら、犯罪映画、警察映画としての娯楽性も併せ持つ。
警察の人たちカッコよかった。戸倉警部の仲代さん、スマートな物腰でありながら心の内は情熱家。カッコイイ。
こういう映画をもっと観たい。が、なかなか観れない。だからこそ黒澤映画はいまだ人気があるのだろう。
犯人、竹内銀次郎(山崎努)の犯行動機って貧困から来ている。とばかりおぼろげに記憶していました。それも有りな感じで、しかし竹内銀次郎の心の闇はそんな単純なものではなく、もっと複雑で何か得体の知れないドロドロとしたものが心の中でくすぶり、そのはけ口が丘の上の豪邸に住む権藤に向けられたのかと思う。
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