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スペース・ジコショーカイ [カズキ]

「俺の名前はカズキ。 カズキ・エナリ。
スペース探偵をやっている。
黄金のスペースシップ、ゴールデン・ベアー号のキャプテンでもある。

相棒のみよ子はゴールデン・ベアー号のパイロット。かなり頼りになる奴だ。ヤ・クーザとかいう団体が使う言葉をヒ・ロッシマの方言で喋るのが好きな角刈りの似合う女の子さ。


俺たちのゴールデン・ベアー号はちょいと訳有りでね。なあに、それほど物騒な話じゃないんだが。

この宇宙時代においても探偵ってのは浮気調査が主な仕事なんだ。あの時はある惑星の王様の浮気調査を王様の第三夫人に依頼されたんだが、一夫多妻制でなんで浮気?と一瞬疑問に思ったものの、依頼された仕事は完璧にこなすのが俺の主義でね。

王様は確かに浮気をしていた。その証拠は俺のスペースカメラがばっちり捉えスペースフィルムにしっかりと焼き付けた。
ただ、それがバレると王様はその浮気相手を第二十五夫人にしちまったんだ。それにはいささか拍子抜けしたが、それで第三夫人が納得したのには驚いたな。

で、いざ報酬を受け取るって段になって第三夫人が言うんだが、『わたくしは浮気調査を依頼したがこの度この件は浮気では無くなった・・・。』
ってそれっきり俺を見たまま黙り込んだんだ。このだんまりが何を意味しているのかを理解するのには、時に空気を読み過ぎると言われる俺でも手間取っちまった。

静まり返った大広間のソファーに向かい合い黙って座る俺と第三夫人。その静寂は永遠に続くんじゃないかと思ったよ。
春のうららかな日差しがレースのカーテン越しにキラキラと輝いていてさ。ああ、もうすぐスペース・ゴールデンウィークだなあ、それが終わったらスペース梅雨前線が北上してきてまた蒸し蒸しするなあ、でもそれが過ぎればスペース夏休みがやって来るなあ、今年のスペース夏休みには新しいとびっきりサラッとしたスペース海水パンツを買ってスペース海水浴にでも行こうかなあ・・・
なんて現実逃避してたんだが、無言のまま鬼の形相で俺を睨んでいる第三夫人に気付いてこのだんまりについての意味を真剣に考える事にしたんだ。

・・・あ、この御夫人値切ろうとしてんな。
と不意に気付いたよ。

しかし、さすがにその屁理屈は無えなあと思ったんだが、気が付いたら俺の後ろにロボット兵がずらりと並んでいて有無を言わさずその部屋から連れ出されちまった。
で、結局値切るどころか踏み倒されたんだが、そこでその王家の至宝と言われる黄金のスペースシップ、ゴールデン・ベアー号を報酬の代わりに頂いてきたってわけさ。

まあそっからが大変で、ゴールデン・ベアー号を取り戻そうとする王家の軍隊やら至宝を横取りしようとするスペース盗賊たちに追われたりで・・・うわあああっ!」

突如爆発音とともに激しい振動がゴールデン・ベアー号を襲った。

「なんじゃあっ!尾翼をいかれよった!訳分からん船がどえらいスピードで突っ込んできよるわいっ!」みよ子が状況を報告した。

ミサイルやらビーム砲の攻撃を盛大に仕掛けてくる正体不明のスペースシップ。

「どーするんじゃあっ!!」

「決まってんだろっ!やられたらやり返すっ!みよ子、エンジン出力全開っ!」ミサイルレバーを握る声は何故か弾んでいた。

彼の名前はカズキ。 カズキ=フランシス・ド・エナリ3世。人呼んでスペース探偵カズキだ。
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