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宇宙の中心のカズキ [カズキ]

宇宙において人間とはちっぽけな取るに足らない存在である。その事に宇宙に進出して人間は気付いた。いや宇宙に進出する以前から気付いてはいた。その事に気付かぬふりをしていたのだ。
しかし実際に宇宙を目の当たりにしてその事に気付かぬふりをし続ける事は困難だった。

人類という生き物が地球という星に誕生してからわずか数千年。それ以前に地球という星が誕生してから何十億年という月日、地球は太陽の周囲を回り続け、その太陽系もまた銀河系の周囲を回り続け、その銀河系もまた何かの周囲を回り続けていた。



黄金のスペースシップ、ゴールデン・ベアー号の搭乗員は人類で初めて太陽系を離れようとしていた。

搭乗員であるカズキたちが目指しているのは宇宙の中心である。

何も好き好んで目指しているわけではない。スペース探偵であるカズキに依頼があったからだ。

少し時間を遡る事にしよう。



「スペース探偵カズキ。カズキ=フランシス・ド・エナリ3世よ。」
カズキが他人からフルネームで呼ばれる事は滅多にない。またカズキもフルネームで呼ばれる事を好ましく思っていなかった。

「そなたへのこの依頼承知してくれる事をわたくしは望んでいる。カズキ=フランシス・ド・エナリ3世よ。」
この大仰な言い回しをする依頼主は誰あろうゴールデン・ベアー号の本来の持ち主である王様だった。

断れるはずもなかった。ゴールデン・ベアー号を頂いてきたのにはそれなりの理由は有ったが、それを犯罪と言われれば返す言葉は無かった。
なにより今現在ゴールデン・ベアー号は王立宇宙軍第3艦隊所属の大型戦闘スペースシップ数十隻に包囲されている。この有無を言わさぬ状況下でこちらに選択肢を与えて下さりやがる王家の気品とやらにカズキは苛立ちを隠せなかった。

「ちっ・・・、オーケイ分かった。引き受けるぜその依頼。」



宇宙の中心はどこにあるのか?
それは大宇宙時代を迎えた人類にとっても未だ解けない謎だ。その謎は人類には永遠に解き明かされないであろう。というのがその答えとしてもはや定説となっていた。

しかしその謎を解くカギを人類は手に入れた。

そのカギはゴールデン・ベアー号にあった。ゴールデン・ベアー号が王家の至宝と呼ばれる理由は何もその黄金の機体だけにあったわけではなかった。

その理由はゴールデン・ベアー号に搭載されていた人工知能のキョウコにあった。

キョウコを開発したチームがその完成を祝い戯れに「宇宙の中心は」と音声入力したところ、即座にキョウコは宇宙の中心の座標をモニターに表示したのだ。



続く・・・




いや続かない。
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