真説・赤鼻のトナカイ [トナカイ]
真っ赤なお鼻のトナカイさんは
いつもみんなの笑いもの
でもその年のクリスマスの日
サンタのおじさんは言いました
暗い夜道はピカピカの
おまえの鼻が役に立つのさ
いつも泣いてたトナカイさんは
今宵こそはと喜びました
しかしその労働は過酷を極めた。
何しろ一夜で世界中を飛び回るのである。
彼は先輩トナカイに最初に言われた言葉を思い出した。
「死の行進へようこそ・・・」。
その言葉に嘘偽りはなかった。
サンタのおじさんのソリは12頭のトナカイによって牽引される。
だが一度に12頭全員が駆動しているわけではない。
もしもその姿を目にする事が有ったならば確認してみるとよいだろう。
一度に駆動しているのは4頭だけである。4頭で1つののグループを形成し、それが3つのグループに分かれている。
1つのグループが駆動している間は他の2つのグループは休息を取る。
3交代制ならば何も死に至るほどではあるまい。と考えられるがそうはいかない。
その行進の先には死が待っている。だからこそ死の行進と呼ばれるのだ。
サンタのおじさんは普段はたいそう穏やかな性格である。
ぷっくりとした体をデッキチェアに預け、健康的な赤ら顔でパイプをくゆらす。そんな日々を過ごしている。
しかし聖夜まで残り1か月となった時、その表情は一変する。
笑顔を見せる事は無くなり、トナカイたちに容赦のない叱責を浴びせかける。
彼はサンタのおじさんのその豹変ぶりに最初は驚いたが、おじさんのそれは仕事への責任感から来るものである。と先輩トナカイから教わり納得した。
とは言えサンタのおじさんの叱責は凄まじい。トナカイたちのプライドをズタズタにし、ほぼ毎日心が挫けそうになる。
そんな時トナカイたちはこの歌を歌う。
俺たちゃトナカイ
ソリを引くのが仕事さ
引け引けソリを引け
そうさ俺たちゃトナカイ
ソリを引く事だけが生きがいさ
引くんだ引くんだソリをひたすらに
一般的にサンタのおじさんが鞭の名手である事はあまり知られていない。
そのテクニックはもはや芸術的ですらある。
一振りで駆動している4頭すべてに鞭打ち、尚且つ4頭それぞれに強弱をつける事が出来る。
そのテクニックはトナカイたちに言わせれば「これこそが聖夜の奇跡!」という事だった。
トナカイたちはそのテクニックに魅了される。いや虜になると言った方がこの場合適切であろう。
だからこそトナカイたちは走るのだ。サンタのおじさんに鞭打たれたくて走るのだ。
死の行進の死とは何も形容的な意味ではない。正に死そのものである。
一夜にして世界中を飛び回る。どだい無理な話なのだ。
その無理を押し通すためには犠牲が必要となり、その犠牲を強いられるのがトナカイたちだ。
無理を押し通した結果、トナカイたちは次々と息絶えてゆく。
息絶えたトナカイたちへのサンタのおじさんの扱いは非情である。容赦なく切り離され地上へと落下する。
12月25日の早朝、世界各地でトナカイの落下死体が発見されるのはそのためだ。
サンタのおじさんのソリを牽引するには4頭のトナカイの駆動力が必要となる。
当初は12頭のトナカイが4頭ずつ3つのグループに分かれ3交代制で牽引するが、1頭のトナカイが息絶えれば他のグループから補充される。
それを繰り返せば次第に頭数が減り2交代制になり、最終的にはギリギリ4頭で最後まで走り通さなければならなくなる。
その頃のトナカイたちの体力は限界をとうに通り越している。後は気力のみだ。
気力を振り絞らせるためサンタのおじさんの鞭がうなる。
鬼神。鞭をうならせるサンタのおじさんのその様は鬼神の如くであった。上半身裸になりソリに仁王立ちし、天を切り裂く雄叫びをあげ休む間もなく鞭を振り下ろす。
鞭打たれたトナカイたちの鮮血がシャワーとなってサンタのおじさんの全身を真っ赤に染め上げる。
鬼神。その時サンタのおじさんは鬼神そのものとなる。
聖夜が明けようとしている。
今年もまたサンタのおじさんの仕事は成し遂げられようとしていた。
残った4頭のトナカイの中に彼はいた。息は絶え絶えだったが最後に残った僅かな気力だけで足を動かしていた。
しかし、気分は晴れやかだった。落ちて行った8頭の仲間たちへの哀悼の意を感じつつも、この難事を成し遂げられた達成感と充足感が彼を温かく包み込んでいた。
サンタのおじさんにもようやく笑顔が戻り、3頭の仲間たちにも晴れやかで誇らしげな表情が見てとれる。
聖夜が白々と明け始めた。
冬の眩しいほどの朝陽が彼たちを迎え入れようとしていた。
俺たちゃトナカイ
サンタのおじさんに鞭を打たれてソリを引く
鞭を求めてソリを引くソリを引く
そうだ俺たちゃトナカイ
俺たちの血でサンタのおじさんを真っ赤に染め上げる
赤く染め上げる赤く赤く染め上げる
いつもみんなの笑いもの
でもその年のクリスマスの日
サンタのおじさんは言いました
暗い夜道はピカピカの
おまえの鼻が役に立つのさ
いつも泣いてたトナカイさんは
今宵こそはと喜びました
しかしその労働は過酷を極めた。
何しろ一夜で世界中を飛び回るのである。
彼は先輩トナカイに最初に言われた言葉を思い出した。
「死の行進へようこそ・・・」。
その言葉に嘘偽りはなかった。
サンタのおじさんのソリは12頭のトナカイによって牽引される。
だが一度に12頭全員が駆動しているわけではない。
もしもその姿を目にする事が有ったならば確認してみるとよいだろう。
一度に駆動しているのは4頭だけである。4頭で1つののグループを形成し、それが3つのグループに分かれている。
1つのグループが駆動している間は他の2つのグループは休息を取る。
3交代制ならば何も死に至るほどではあるまい。と考えられるがそうはいかない。
その行進の先には死が待っている。だからこそ死の行進と呼ばれるのだ。
サンタのおじさんは普段はたいそう穏やかな性格である。
ぷっくりとした体をデッキチェアに預け、健康的な赤ら顔でパイプをくゆらす。そんな日々を過ごしている。
しかし聖夜まで残り1か月となった時、その表情は一変する。
笑顔を見せる事は無くなり、トナカイたちに容赦のない叱責を浴びせかける。
彼はサンタのおじさんのその豹変ぶりに最初は驚いたが、おじさんのそれは仕事への責任感から来るものである。と先輩トナカイから教わり納得した。
とは言えサンタのおじさんの叱責は凄まじい。トナカイたちのプライドをズタズタにし、ほぼ毎日心が挫けそうになる。
そんな時トナカイたちはこの歌を歌う。
俺たちゃトナカイ
ソリを引くのが仕事さ
引け引けソリを引け
そうさ俺たちゃトナカイ
ソリを引く事だけが生きがいさ
引くんだ引くんだソリをひたすらに
一般的にサンタのおじさんが鞭の名手である事はあまり知られていない。
そのテクニックはもはや芸術的ですらある。
一振りで駆動している4頭すべてに鞭打ち、尚且つ4頭それぞれに強弱をつける事が出来る。
そのテクニックはトナカイたちに言わせれば「これこそが聖夜の奇跡!」という事だった。
トナカイたちはそのテクニックに魅了される。いや虜になると言った方がこの場合適切であろう。
だからこそトナカイたちは走るのだ。サンタのおじさんに鞭打たれたくて走るのだ。
死の行進の死とは何も形容的な意味ではない。正に死そのものである。
一夜にして世界中を飛び回る。どだい無理な話なのだ。
その無理を押し通すためには犠牲が必要となり、その犠牲を強いられるのがトナカイたちだ。
無理を押し通した結果、トナカイたちは次々と息絶えてゆく。
息絶えたトナカイたちへのサンタのおじさんの扱いは非情である。容赦なく切り離され地上へと落下する。
12月25日の早朝、世界各地でトナカイの落下死体が発見されるのはそのためだ。
サンタのおじさんのソリを牽引するには4頭のトナカイの駆動力が必要となる。
当初は12頭のトナカイが4頭ずつ3つのグループに分かれ3交代制で牽引するが、1頭のトナカイが息絶えれば他のグループから補充される。
それを繰り返せば次第に頭数が減り2交代制になり、最終的にはギリギリ4頭で最後まで走り通さなければならなくなる。
その頃のトナカイたちの体力は限界をとうに通り越している。後は気力のみだ。
気力を振り絞らせるためサンタのおじさんの鞭がうなる。
鬼神。鞭をうならせるサンタのおじさんのその様は鬼神の如くであった。上半身裸になりソリに仁王立ちし、天を切り裂く雄叫びをあげ休む間もなく鞭を振り下ろす。
鞭打たれたトナカイたちの鮮血がシャワーとなってサンタのおじさんの全身を真っ赤に染め上げる。
鬼神。その時サンタのおじさんは鬼神そのものとなる。
聖夜が明けようとしている。
今年もまたサンタのおじさんの仕事は成し遂げられようとしていた。
残った4頭のトナカイの中に彼はいた。息は絶え絶えだったが最後に残った僅かな気力だけで足を動かしていた。
しかし、気分は晴れやかだった。落ちて行った8頭の仲間たちへの哀悼の意を感じつつも、この難事を成し遂げられた達成感と充足感が彼を温かく包み込んでいた。
サンタのおじさんにもようやく笑顔が戻り、3頭の仲間たちにも晴れやかで誇らしげな表情が見てとれる。
聖夜が白々と明け始めた。
冬の眩しいほどの朝陽が彼たちを迎え入れようとしていた。
俺たちゃトナカイ
サンタのおじさんに鞭を打たれてソリを引く
鞭を求めてソリを引くソリを引く
そうだ俺たちゃトナカイ
俺たちの血でサンタのおじさんを真っ赤に染め上げる
赤く染め上げる赤く赤く染め上げる
2012-12-15 10:50
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0