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2年3組冬菜海 ~代表選考会始まる~ [トナカイ]

「続いては日本ボブスレーに彗星の如く現れた高校生チームコメットボーイズの滑走です。いよいよですねー解説の山本さーん。」
「はいー、いよいよですねー。」
僕たちがチームを組んでボブスレーを始めて半年。遂にここまで来た。

「コメットボーイズ、ここまでは圧倒的な強さでしたがレースは走ってみなければ分からないのが実際の所。しかしこれまでの実力通りの滑走をする事が出来れば次期冬季オリンピックの代表に決定となります。どーですか山本さーん。」
「はいーどーうでしょうー、はいー。」
「…」
滑走前の緊張感は格別のものだ。いつもピースフルに和ませてくれる三太もこの場だけは高揚して目が血走っている。2組の斎藤と4組の小林も真剣な面持ちだ。
僕はドキドキとワクワクが止まらない。まるであの夜のあの時の様に…。

「先頭のパイロットは黒須君、そして斎藤君、小林君、そしてしんがりの冬菜君が乗り込みます。コメットボーイズ、これまでの一体感は素晴らしくコース上を飛ぶ様に駆け抜けて行きます。
さあー選手は位置に着きましたよー。山本さーん。」
「はいー着きましたねー、はいー。」
「…」
…あの夜?あの夜っていつの事だ?そんな覚えは無いはずなのに…は!なんだ?何か僕の中の別の記憶が呼び覚まされていくようだ………。

「さあ!コメットボーイズのスタート、テイクオフです!」
「はいーテークオフですー」
「…おおっとー!冬菜君が遅れているぞー、このまま乗り込めなければ失格になってしまうー!どうしたー!?コメットボーイズ!」

彼の名前は冬菜海。愛称トナカイ君。
彼、そして彼ら4人は何故ボブスレーというソリ競技に魅入られていくのか。
一年中の大半を雪に覆われるフィンランド北部、クロース地方。当然の様に雪上競技が盛んである。特にソリ競技に力が入れられており最早クロース地方における国技と言って差し支え無かった。その中でもトウナ村の選手の実力は抜きん出ていたが毎年12月の24、25日に行われる競技会には必ず欠場し、そしてそれ以降は何か全てをやり尽くしてしまった様に平凡な記録となってしまうのだった。
そんな遠い異国の事を冬菜海は今まで知らずにいたし、この事がボブスレーに魅入られていく理由である事も知らずにいた。が、しかし今、冬菜海の閉ざされていた記憶が甦られようとしていたのだった。
続、く、、のか?
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