SSブログ

『スティルウォーター』『シチリアを征服したクマ王国の物語』『マークスマン』『クライ・マッチョ』 [映画]

『スティルウォーター』を観た。2021年、アメリカ、2時間19分。
アメリカ、オクラホマの石油掘削作業員ビル・ベイカーは不況のため現在は日雇い労働に従事していたがある用事のため定期的にフランスのマルセイユを訪れなければならなかった。

ネタバレ有り。

予告は目にしなかったのでマット・デイモン主演という事と、マット・デイモンが父親役で娘に何か災難が起こる。くらいの前情報で観た。
娘役がアビゲイル・ブレスリンだったのが意外だったしフランス語が違和感無く聴こえるほど上手かったのも意外だった。
タイトルからすると水が関係した社会派作品かと思ったがスティルウォーターは実在する地名。日本、東京でいうと御茶ノ水的な。
リーアム・ニーソン主演作『96時間』から続く実は父親が最強なアクション映画かとも思っていた。マット・デイモンと言えばジェイソン・ボーンだし。
しかし本作でのマット・デイモンは全然ジェイソン・ボーンではなかった。かと言ってもう一つの代表作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の時の天才的頭脳の持ち主でもなくごく普通の一般人。
娘は異国の地で事件に巻き込まれていて、何も特別な能力は持っていない父親は娘を救う事が出来るのか。といったサスペンスなストーリーではあるけど事件解決に向けてはなかなかすんなりとは行かない。むしろ積極的に脇道に逸れていく感じ。だけどそれが何故かじれったくは思わなかった。主人公のキャラクター、現在の様子は決して愛想の良いタイプではないけど礼儀正しく、過去に何が有ったかは詳しくは描かれないが情報は小出しにされる事で人間として好感、共感の持てる所(娘からすると最悪な父親だったみたいだけど)がサスペンスに進展が無くてもイライラしなかったのかもしれない。
事件が起こったなら必ずと言っていいほど解決するのがフィクションの良いところで、本作でも紆余曲折が有った末に完全とは言えないが作品的に解決する。しかしそれで良かった。という物語では無く、本作が何を描こうとしたのかは主人公ビルの最後の台詞に有るのだろうと思う。今回のマルセイユでの経験によってビルの人生も人間性も全く別のものになって、だからこそビルの目から見た住み慣れた町の景色はそれまでとは全く別のものになったのだろうと思う。そういう一人の人間が変わっていく姿、多分いい方に変わった姿が描かれている物語だったのだと思う。
だったらサスペンスは無くても良かったかと思うが、あれくらいの事が起きないとそうそう人間変われるものではないという事か。
という事でいい映画だった。



『シチリアを征服したクマ王国の物語』を観た。2019年、フランス=イタリア、1時間22分。
昔々、森奥深いクマ王国の国王が川ではぐれた息子を探して国民総出で人間たちの街シチリアへとたどり着く。人間と友好的に関わりたいクマたちだったがクマの大群の出現に恐れおののく邪悪な大公は開戦を即決。クマたちはやむを得ず大公率いる軍隊と戦う事となる。

イタリアの児童文学をアニメーション化。シチリアとタイトルで示されているのでイタリアの話なんだろうなと思っていた。実際そうなんだけどどうも話している言葉がイタリア語っぽくなく、聞いているとどうやらフランス語。そう言えばイタリアでアニメ作品を作っているイメージがほとんど無いし、フランス語を話しているという事はフランスで制作されているのかと納得がいった。本作のロレンツォ・マトッティ監督はイタリア人で現在はフランスで活動しているアーティストとの事。巨大化け猫とか海の化け物ヘビはさすがアーティストといった感じの恐怖感満載の存在だった。
イタリアで作られたアニメで思い出せるのは『名探偵ホームズ』。初めはイタリアのテレビ局から持ち掛けられた企画で宮崎駿監督が関わった最初の数本はイタリアと日本の合作という事だったと思う。
その数本で何かしらの事情により製作は中止されるが後に日本主体でテレビシリーズが製作される。

手描きのアニメかと思ったがどうやらCGっぽい。CGも使いつつ手描きの所も有りなのか。それが不満という事では無いけど、全編手描きアニメだったらもっと良かったなとつい思ってしまう。




『マークスマン』を観た。2021年、アメリカ、1時間48分。
アメリカとメキシコの国境近くの牧場で暮らす元海兵隊のジム。メキシコからの密入国者を見つけ次第国境警備隊に報告するのも日々の重要な仕事となっていた。ある日、母親と子供の密入国者を発見するがその母子は麻薬カルテルに追われていた。

リーアム・ニーソンがいつもより最強度は少し抑えめの最強の男を演じる。とは言え海兵隊での狙撃兵としては勲章を授かるほど。
しかし今回の敵はメキシコの麻薬カルテル。メキシコの麻薬カルテルと言えば色んな映画でその残虐さっぷりを見せつけてきて本作でも出会うもの皆傷付けていくスタイル。そんなのと敵対してどういう決着をつけるのか、生半可な事では決着はつかないと考えていたがそこまで厳しくはなくどちらかと言えば緩めな決着の様に思えた。あれは麻薬カルテルとは言っているけどまだ新興で巨大組織ではないという事なのだろうと考えれば一応納得は出来る。



『クライ・マッチョ』を観た。2021年、アメリカ、1時間44分。
1980年、テキサス。元ロデオスターのマイク・マイロの元に昔馴染みで恩義が有りながら喧嘩別れした男が1年振りに現れる。男はメキシコ人の元妻の元で養育されている13歳になる息子を連れてきて欲しいとマイクに半ば強制的に頼み断り切れないマイクはメキシコへと向かう。

予告を見た時点でイーストウッドの老いが急激に進んだ感じはしていてそれが不安でもあった。
映画本編を観るとその不安通りでありつつ、でも老いたからこその可愛らしさみたいなのも感じられた。
しかし60年近く映画スターであり続けた上で90歳を超えて主演映画が作られる人はそんなにはいないわけで。しかもその内容が終活とかそういった辛気臭いものではなく、あくまでイーストウッド主演作品、これまでの主演作品の延長上にあってこの先もまだ続くんじゃないかと思わせてくれるのが良かった。ネバー・エンディング・イーストウッド・ストーリー。

闘鶏の雄鶏の名前がマッチョという所に全てが象徴されている様に思えた。チキンはスラングで臆病者の意味として使われるが思慮深さや慎重でもあるという事だろう。マッチョは強さ、男らしさという意味か。
チキンなだけではいけない。でも無理をしたマッチョもよろしくはない。思慮深く慎みを持った力強さが本物の男であり人間としてあるべき姿だと現在のイーストウッドは考えるが、自身の事を顧みれば若い頃には多少のやんちゃと無理は必要と。

ウィキペディアで本作の製作過程を読むと、一番最初は1988年にイーストウッドに話が行ってそれが色々有って中止に。
2000年代になってシュワルツェネッガー主演作で進みつつもここでも色々有って中止。
そして2020年になってイーストウッド監督主演作品として急速に事が進んで完成。とあった。
その話を信じるとシュワルツェネッガー主演作品として完成していたら明らかに『ターミネーター2』を想起させる作品になっていたんだろうなと思われる。

リニューアルされた丸の内ピカデリーシアター2の2階席で観た。
2階席の最前列で観たのでスクリーンのデカさは相変わらず。当然1階席の前方で観た方がもっとデカいんだろうけどそれだと見上げる姿勢になってツラい(1階席の最前列はリクライニングシートになっていた)が、2階席だと丁度目の前にデカいスクリーンが広がる感じ。
座席数が586から434(車椅子席が2)に変わったので席と席の間も余裕が出来ただろうと思う。今回は最前列だったけど普通に座ってて普通に前を通れる感じの広さ。ちなみにシアター1の方は802から623(車椅子席2)に。
リニューアル前は気圧の関係か何なのかよく分からないが扉を開け閉めする際にバタンバタンうるさかったけどそれも改善されたみたい。
一つ気を付けたいのが2階のトイレが無くなっていた。以前は有ったと思うのだけど。
コメント(0)