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『君たちはどう生きるか』『バッド・デイ・ドライブ』 [映画]

『君たちはどう生きるか』を観た。2023年、日本、2時間4分。
戦時中の日本。空襲で母親を亡くした牧眞人(まき まひと)少年。一年後父親は妻の妹夏子(眞人にとっての叔母)と再婚しその元へと父子揃って疎開する。眞人を出迎えたのは叔母とそして一羽のアオサギだった。

二回目。初回の時は導入部プロローグが長いと感じたがやっぱり長かった。テレビアニメ世界名作劇場『赤毛のアン』の時にアンがカスバート家に引き取られるまでに6話、放送期間でいうと一ヶ月半を費やしたバクさんからしたら宮さんもまだまだなのかもしれない。
本作での導入部が長かったからといって退屈だったという事ではなく、ただ、エピローグの呆気なさからすると変わったバランスの作品ではあるなと思う。しかしそれでも成立させてしまうという。
眞人が小説の『君たちはどう生きるか』を読むのが眞人の人間性と物語としての大きな転換点でそこからが本題なんだろうと思う。本作のタイトルにもなっているくらいだし。
『君たちはどう生きるか』は未読なので小説なのかエッセイ的な読み物なのかも分かっていないが本作を理解するにあたっては読むべきなのだろうと思うが思うだけに終わってしまうかもしれない。

作画が良かった。作画監督は本田雄(ほんだ たけし)さん。本作では作画面では本田さんに一任されていたのだとか。なんと言うかこれまでのジブリ作品とは違う艶っぽさが有ったと思う。さすが業界内で大御所達からも「師匠」と呼ばれている凄腕アニメーター。
インコたちのデザインがちょっと手抜きの様に見えるのはあの擬人化されたインコたちは大伯父が創造したもので、ペリカンは上の世界から連れてこられたんだったっけか?大伯父にはそういうキャラクターデザインの才能はそんなに無かったんだろう。
液体の描写がドロッとしているのは変わらずだった。ああいう感じが顕著になったのは『千と千尋の神隠し』からだろうか。あれがちょっと苦手。『もののけ姫』にも有ったか?

巷の本作への意見を聞きかじった感じでは賛否両論、観る人によって見方も異なる。
その意見や見方も同じ人でも観る度に異なったり別の見方になる。その様な作品だと思った。
大伯父が地下の世界で作ろうとしていたのは地上の世界とは違うそこで生きるもの全てが平等で争いの無い完全な世界だったのだろうと思う。インコ大王はそういう名前なだけで君主ではなくインコ集団のリーダーという存在なのだろう。
しかしその世界は完全である事を維持し続けなければならずとても脆く壊れやすい。確かに殺生が許されない世界で肉食動物は何を食べればいいのかという事だし。そのために殺生する人間を特別に許すとか完全な世界からはちょっとずつズレていくがそれでもこれが完全であると言い張るしかない。
そういった大きな理想を掲げて成功したかの様に思えたが理想とは違う方向に向かっていくのはロシア革命とその後のソビエト連邦と似ているのだろうか。
世界の生き物が全て草食動物だったら殺生は無くなるのかと言えばそれでは草木が全て食い尽くされて食うもの無くなって生き物全滅の末路になるのだろう。草木が有って草食動物がいて肉食動物がいてその食物連鎖で生き物のバランスは取れていて、そこには殺生という行為がどうしても必要になってくるわけで。その弱肉強食を言い訳にして殺し合いや戦争を成立させている。
大伯父が不完全と考えているであろう地上の現実の世界は確かに不完全なのかもしれないが不完全である事で上手い事バランスが取れている。本作自体の構成のバランスが変わっているのもその事を現しているのかも。
『風の谷のナウシカ』の原作では腐海の世界で生きる人間は浄化される過渡期に適応するように人工的に施された存在であり、浄化が成された時には不必要とされるが果たしてそこで生き抜いてきた人間は本当に不必要な存在なのか?否っ!とナウシカは言う。眞人もまた大伯父に自分の後を継いで完全な世界を保ち続けて欲しいと言われても断る。生きるものを変えようとした『風の谷のナウシカ』と世界を変えようとした本作。人間が自分たちだけのために自然の摂理に反して物事を変えようとすると強烈なしっぺ返しを喰らうと。

キリコおばあさんの若い頃に煙草を吸う描写が無かった。おばあさんの時のキャラクターからすると若い時の仕事の後の一服とか入れるべきだったと思うが敢えて一服の描写を入れなかったのだとするとやっぱり理由が有るんだろうと思う。完全を目指した世界では煙草は害悪でしかなくて、だから排除されていて煙草そのものが存在しないのか?

眞人の母親の子供時代の声がミュージシャンのあいみょんさんと知って驚いた。めちゃくちゃ上手いんだけどただ上手いだけじゃなくて声に個性が有る。
あいみょんさんはこれまでに演技経験は有ったのだろうか?誰があいみょんさんに声優としての素質が有るのを見抜いたのか?鈴木プロデューサーか。

二回目は109シネマズプレミアム新宿にて。109シネマズプレミアム自体も二回目。料金の事を抜きにすればやはり落ち着いて映画を観られて良い。
多分今のところあの料金設定でもやっていけているのだろう。素人が単純に考えれば一人入場すれば二人分の利益になるわけで、二人入れば四人分、四人入れば八人分と。高価格設定に見合うだけの初期費用と維持費への投資は必要だけど通常の営業で十分に取り戻せるという事か。
飲み物一杯とポップコーンがサービスされる。持続可能な社会の取り組みとして飲み物のストローは紙ストロー。初めて使ったけど人によっては紙の味がしてしまうらしいが舌がバカなのでそれは気にならなかったが途中から水分に浸かっている部分がふにゃふにゃになるのが使いづらい。コップの方も紙製だったと思うがコップがふにゃふにゃになる事はなく。紙の厚さで違ってくるのか。
ストローを作る工程はプラスチックなら円筒型になるよう引き伸ばして(どうすれば円筒型になるのかはさっぱり分からないが)それを適宜な長さにカットするのだろうけど、紙の場合は細長い紙をお菓子のピコラの様に螺旋状にローリングさせて糊で接着するという方法だと知った。他の作り方も有るのか?
持続可能のためには石油原料はなるべく使わない方がいいという事なんだろうけど紙の方が製造の手間が掛かるように思えるしその分の燃料費なんかを考えるとどうなんだろうか。
ストローを使うのであればいっその事原点に帰って麦わらをなんにも加工しないでそのまま使えばいいんじゃないだろうか。それで使いづらいとか言って遺伝子操作してストローに適した麦が作られるのかも。だからそういう身勝手な事はしない方がいいよ。と宮崎駿監督は仰られているのだろう。





『バッド・デイ・ドライブ』を観た。2023年、イギリス、1時間31分。
見知らぬスマートフォンに掛かってきた通話から車内に爆弾が仕掛けられている事を知らされた男。座席から離れた瞬間に爆破装置は起動する。

池袋シネマロサにて。

韓国映画『ハード・ヒット発信制限』のリメイクかと思ったがオリジナルはスペインの『暴走車ランナウェイ・カー』。ドイツでのリメイクは『タイム・リミット見知らぬ影』。スペインとドイツのは未見。
韓国のとはちょっと違う内容になっていたかと思うがどちらかがオリジナルに忠実でどちらかがアレンジしていて、もしくは両方ともアレンジしているのか。

本作のリーアム・ニーソンは座席から離れられないのでノー・アクション。車に乗る前にサンドバッグを叩いていた。
元々名前を知られるようになったのは体がデカいという意味での大型演技派でという印象だった。そんな中で『ダークマン』(1990年)という怪作も有ったがアクションスターとしてのスタートは2008年の『96時間』からだろうか。
そろそろ演技派に戻ろうかなという事なのだろうか。その前に30年以上振りの『ダークマン』の続編で年老いたダークマンを観てみたい。ダークヒーローとしてのダークマンは事前の準備が一番大切でそれを用意周到にしていれば成り立つから年老いていても全然問題は無いと思う。


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