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《パンダコパンダ》《俺たちの明日》《スルース》《4ヶ月、3週と2日》《地上5センチの恋心》 [2008年3月に観た映画]

『パンダコパンダ』  シネマ・アンジェリカ
(1972・日本) 0h35
演出 : 高畑勲  原案・脚本・画面設定 : 宮崎駿  作画監督 : 小田部洋一、大塚康生
声の出演 : 杉山佳寿子、熊倉一雄、太田淑子、山田康雄

『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』
(1973・日本) 0h38
演出 : 高畑勲  脚本・美術設定・画面構成 : 宮崎駿  作画監督 : 小田部洋一、大塚康生
声の出演 ; 杉山佳寿子、熊倉一雄、丸山裕子、太田淑子、山田康雄、安原義人

[カチンコ]竹やぶに囲まれたお家でひとりお留守番をする少女ミミちゃんの下に、「竹やぶがイイ~[黒ハート]」のパパンダと、コパンダのパンちゃんが現れて。というお話しの『パンダコパンダ』(以下『パンコパ』)。
そこにサーカス団のトラちゃんが加わって。の『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』(以下『雨ふり』)の2本立て。

[カチンコ]子供たちが観て楽しむべきアニメーション作品。子供たちが観て楽しめるアニメーションを。という前提で作られた作品なので当然な事です。
とは言え、オープニングの楽しさは別です。主題歌の歌詞、曲、水森亜土さんの歌声。楽し過ぎる。
イラストもまた楽し。

本編は、いい大人が観るとどうしても大人目線で観てしまうのでツッコミ所が多々有ります。
理論の上に理論を立てる冷徹系理論派のパクさんらしからぬ。と思えます。
時に情熱が理論を上回る情熱系理論派の宮さんとの間で、漫画映画ならではのダイナミズムに重きを置くか否かで白熱の議論が展開されたのでは?と、邪推してみました。
その舌鋒、切れ味鋭い刃(やいば)の如し。の、お二人ですから、それはそれは聞くに耐えない辛辣なものであった事は間違いない。と、邪推します。

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ここからアホ話し。全くのデタラメの大ウソです。

パクさんの理論、それは切れ味鋭い日本刀。
その刃、一振りで竜のウロコを切り裂いた。との伝説有り。

宮さんの理論、それは段平(だんびら)のグレートソード。
その刃、一撃で竜の角をへし折った。との伝説有り。

その周りをジープで走り回る大塚康生さんを見た!との目撃情報も有り。

理論で竜をも倒すお二人に常人が太刀打ちできるはずがござんせん。
その容赦する事を知らない口撃に再起不能、廃人に追い込まれたアニメーターは数知れず。
かの作家トマス・ハリスはそのエピソードを伝え聞き、『羊たちの沈黙』において、レクター博士がクラリスを侮辱した病棟の隣人を罵り殺すシーンを思いついた。との噂。
因みにヒロインのクラリスという名前も『ルパン三世 カリオストロの城』から頂いたらしい。

そんなアニメーター達の無念の魂を鎮めるために“三鷹の森ジブリ美術館”は建てられた。との噂。
地下深くにアニメーター達を祀る塚が有り、屋上にロボット兵がいるのは、祟り封じのため。とも言われています。

ジブリアニメは日本が誇るアニメ作家(兼ドラゴンバスター)のお二人と、その下で朽ち果てた多くのアニメーターの死屍累々の上に成り立っており、
数々の名作アニメには怨念と情念がそのフィルムから溢れるほどに込められているのです。
ああ、恐ろしやジブリアニメ。

なんつって。

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話し元に戻します。パクさんと宮さんの血で血を洗う議論の結果、このアニメは漫画映画ならではのダイナミズム重視となりました。
パパンダ青竹丸かじり。鋼の肉体を持つパンちゃん。刃物を片手に颯爽と駆ける少女ミミちゃん。などなど。思わずツッコミたくなりますが、そこはまず初めの段階のパンダが喋る。という時点でもはや何でも有り。という事です。

[カチンコ]『パンコパ』は以前に1回だけ観ているのですが、『雨ふり』は今回が初めて。
そのブッ飛びぶりにビックリ。『パンコパ』も相当ブッ飛んでますが、『雨ふり』はそれをはるかに上回ります。
これ位ブッ飛んでるとツッコミを忘れて楽しめます。
「続編ならこれ位やらなきゃ駄目だっ!」と、狂気交じりに机に向かって鉛筆を走らせる宮さんの姿が目に浮かびます。
そして、その事について激論を闘わせるパクさんと宮さんのお姿も。
その頃大塚康生さんはジープに乗ってそこらへんを走り回っていたのでしょう。
面白ぇなぁこのトリオ。

しかし確かに続編として正しい。続編なら町の一つや二つは水没しないと。
いいなぁ~この頃の宮さんはクレイジーで。

[カチンコ]大人目線で楽しめる所も有ります。
『パンコパ』で、商店の棚に並ばれた水玉模様の紙包みの乳酸飲料(壜タイプ)を見つけて懐かしい。
最近、店頭に並ばれているのは紙パックが主で、壜タイプはお中元などのギフトでしか見かけなくなりました。

これも『パンコパ』で、群集シーンの中に次元大介らしき人物を発見。
次元しか気付きませんでしたが、このシーンにはスタッフのお遊びで他にも色々な人物(アニメキャラやスタッフなど)がいそうな感じがします。

そしてなんと言ってもハイジ(杉山佳寿子さん)とルパン(山田康雄さん)夢の共演。
当然ながら山田康雄さんの声が若々しくてカッコイイ。
杉山佳寿子さんは今でも時折テレビ番組などでハイジの声を披露される事が有りますが、今も昔もほとんどお変わりなくてビックリします。

[カチンコ]ここ何年もパンフレットを買っていないのですが、今回は買いました。
その中に安田成美さんの寄稿。というか談話が載っています。
宮さんと、安田成美さんといえば、安田成美さんが映画『風の谷のナウシカ』(1984年)のイメージガールに抜擢され主題歌を歌うも、その歌を聞いた宮さんが突っぱねて映画本編には使われず、あくまでイメージソングとしてに止まった。という因縁の間柄。(これは当時の噂と、自分の邪推と妄想が過分に加味されております。実際は最初からイメージソングだったのかもしれません。)

そのお二人、二十四年の歳月を経てここに和解す。
そんな大袈裟な話しじゃないのかもしれませんが。

[カチンコ]大人目線とか偉そうな事を言っておきながら、館内に置かれているスタンプはしっかり押してきました。
いいなぁ~メタボなパパンダ。メタボだっていいじゃない。と、訴えかけている様です。
パンダコパンダ.jpg

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『俺たちの明日』  シアター・イメージ・フォーラム シアター1
“BOYS OF TOMORROW” (2006・韓国) 1h33
監督・脚本 : ノ・ドンソク
出演 : ユ・アイ、キム・ビョンソク、チェ・ジェソン

[カチンコ]韓国の若者たちの悩みと苦しみ。そして、それでも明日に向かって生きてゆく姿を描く。

[カチンコ]『韓国アートフィルムショーケース2008』として上映。この映画のほかに『黒い土の少女』『永遠の魂』『妻の愛人に会う』を上映。
『韓国アートフィルムショーケース』は今回で第2回。
第1回は2007年、『キムチを売る女』『不機嫌な男たち』『許されざるもの』『映画館の恋』が上映され、普段アート系の作品を滅多に見ない自分が何をトチ狂ったのか全作品にチャレンジして、見事全敗を喫した因縁の特集上映。

[カチンコ]『黒い土の少女』と、この映画を観た限りでは、今回は難解度がやや抑え目になった感じ。
普通に観れました。
この映画が言わんとしている「誰でも、いつでも人生はやり直せる。」というメッセージも分かり易い。
ただ、そこに辿り着くまでが長く感じられた。
いきなりそのメッセージを言われるより、一時間何十分かの時間をかけてその背景と人物像を描き出し、その上でメッセージを言われた方が心への届き方が違うという事は分かりますが。

集中力のない自分はつい他の事を考えてしまいます。
今回はそっくりさん探し。
西島秀俊さん、中村俊輔さん、梶原一騎さん、朝青龍関、他の皆さんがおられました。
同じアジア系ですので見つけやすい。
東南アジアの映画も、そっくりさん探しという点では退屈はしない映画と言えます。
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『スルース』  シネスイッチ銀座1
“SLEUTH” (2007・アメリカ) 1h29
製作・監督 : ケネス・ブラナー  製作・出演 : ジュード・ロウ
出演 : マイケル・ケイン

[カチンコ]老齢の推理小説家と、若き売れない俳優。一人の女性を巡って二人の男の間で繰り広げられる騙し合いと化かし合いのゲーム。その結末は。

[カチンコ]M・ケインとJ・ロウ。英国を代表する新旧演技派二人がぶつかり合うシリアスなサスペンス・ミステリー。登場人物はこの二人だけ。
ミステリーとして観ると少し物足りない。しかし、二人の演技はそれを補って余りあるものなので、そちらを堪能するべき映画。
特に会話の中で、他愛のない話題を装いながらチクリチクリとお互いを卑下しあう所なんぞはその演技と脚本で、英国人ならではと思えるいやらしさが滲み出ていて秀逸です。

小説家は地位と財力を盾に、俳優の出自と貧困を蔑み。
俳優は若さと美貌を武器に、小説家の老いを嘲る。
やらしいなぁ~英国人。

[カチンコ]二人の騙し合いのゲームが延々と続いたら面白いのになぁ。と、思いましたが、結局一人が本気になってしまったためゲームオーバーとなります。チョット残念でしたが、シリアスな映画なのでしょうがない。
騙し合いゲームのルールとして、
それが“騙し”と気付いても、その“騙し”に乗っかる。
いかに“騙す”かより、“騙す”事によって与える精神的ダメージを競う。
という所が重要だったのですが、片方がそのルールを守り切れなかった。
精神的ダメージがあまりにも大きいと、人の心は簡単に崩れてしまう。
人のエゴがゲームを始めさせ、人の心の脆さがゲームを終わらせたのでしょう。
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『4ヶ月、3週と2日』  銀座テアトルシネマ
“4 LUNI. 3 SAPTAMANI SI 2 ZILE” (2007・ルーマニア) 1h53
製作・監督・脚本 : クリスティアン・ムンジウ
出演 : アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ

[カチンコ]1987年、ルーマニア、チャウシェスク独裁政権下。一人の女性の或る一日の出来事。

[カチンコ]ルーマニア映画を観るのは初めてかもしれない。現在、世界でルーマニア映画が注目を集めている。という事も知りませんでした。この映画もカンヌ映画祭でパルムドールを受賞。

[カチンコ]ルーマニアについてほぼ無知のまま映画に臨みました。ヨーロッパのどこら辺に位置するのかも知らぬまま。
知っている事といえば、昔は社会主義国家で、チャウシェスクという人の独裁国家であった。という事ぐらい。
無謀といえば無謀ですが、この映画はそれぐらいの知識でも大丈夫でした。
映画を観ているだけでその当時のルーマニアがどのような国だったのか分かります。
官僚主義、管理国家、階級社会。悪夢としか言いようがないお国でした。

そんな中、友達のために東奔西走する一人の女性の姿を物語は追い続けます。
その姿は話しが進むほどに痛々しくなり、やるせなくなります。
そして、ある意味衝撃のラストを迎えます。
「一体、彼女のこの一日はなんだったんだ?」と、思わずにいられません。

その当時のルーマニアという国や社会を彼女の一日を追う事で描き出し、
その事によって、社会主義であったルーマニアとはなんだったのか?
また、それらに振り回された人々とはなんだったのか?
その疑問をこの映画はぶつけてきます。
自分は「なんだったんでしょう?」と、疑問返しをするしかありませんが。

[カチンコ]長回しが多用される映画です。ブライアン・デ・パルマ監督のトリック込みの長回しは大好きなのですが、この映画の場合はそれとは全く違います。
カメラはそこにあるだけ。映画の中の登場人物という概念を捨て去るかの如く、そこにいる人物を、そこで起こる出来事をただ見つめる、ひたすら見つめる。
映画も終盤になってくるとそれは我慢較べの様相を呈してきます。
監督はいかに長回しを続けていられるか、観客はいかに集中力を切らさずに観続けていられるか。
集中力が著しく欠如している自分は、ギブアップ寸前。危うく試合放棄するところでした。

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『地上5センチの恋心』  シネスイッチ銀座2
“ODETTE TOULEMONDE” (2006・フランス=ベルギー) 1h40
監督・脚本 : エリック=エマニュエル・シュミット
出演 : カトリーヌ・フロ、アルベール・デュボンテル、ジャック・ウェベール、ファブリス・ミュルジア

[カチンコ]ベルギーに住む夢見がちなチャーミングなおば様と、フランス人の人気作家が繰り広げるロマンチックコメディ。

[カチンコ]ロマンチックコメディの王道のような映画。難しい事は一切なし。それでいいと思います。楽しかったし。
ストーリーやキャラクターも御都合主義で出来ているように思えますが、それでいいと思います。面白かったし。
それらは全てロマンチックであるために存在します。
この映画の場合、御都合主義と言わずにロマンチック主義と言った方が正しい。

おば様は嬉しい事が有ると天にも昇る気持ちになります。
また、好きな音楽が掛かると踊らずにはいられません。時には家族を巻き込んで踊ります。
とってもチャーミーなおば様です。
そんなおば様が迎える大ハッピーエンド。これをロマンチックと言わずして何をロマンチックと言うのでしょう。
全くもって正しいロマンチックな映画でした。

《ス》 シネマート六本木 シアター4 [2008年3月に観た映画]

『ス』
“SOO” (2006・韓国) 2h02
監督 : 崔洋一
出演 : チ・ジニ、カン・ソンヨン、オ・マンソク

[exclamation]ネタバレ多めです。

[カチンコ]『韓流シネマ・フェスティバル2008春』の1本として上映。
この映画の他にも面白そうなのがラインナップされています。

そして、このフェスティバル中のシネマート六本木は“愛”に包まれています。
いや失礼。今や東日本における韓国映画を始めとするアジア映画の聖地となった感のあるシネマート六本木は常に“愛”に包まれています。
“愛の映画館”シネマート六本木。

その“愛”はほぼ韓流スター達への“愛”なのですが、なんかイイ感じです。
さすがにヨン様フィーバーの時は呆れるほどでしたが、フィーバーが去った今も続くスター達への“愛”。素晴しいです。
ロビーにはスター達へのメッセージを書くコーナーが設けられているのですが、皆さんハングルを交えて溢れる想いを伝えています。
正に“愛”は国境を越える。それを目の当たりにして、すっかり薄汚れた自分の心も洗われた気分です。

[カチンコ]で、この映画ですが、“愛”に溢れかえっていたロビーとはうって変わって、崔洋一監督が単身韓国に渡って撮った骨太で血みどろのハードボイルドアクション。
ざっとストーリーを書きますので御注意を。

ある事件をきっかけに生き別れになった双子の兄弟。
十数年の時が経ち、兄はその世界で知らぬ者無しの凄腕のヒットマン“ス”となり、
弟は麻薬組織の中で育てられるも、今は警察官として成長。

十数年の時を経て兄弟が再会する瞬間を迎えますが、その時弟を貫く一発の銃弾。
兄は誓います。弟を殺った奴を殺ったる[パンチ]

かくして兄は、警察官である弟に成りすまし真犯人を捜す事となります。
そこに弟の恋人である同僚の女性刑事。“ス”の逮捕に執念を燃やすベテラン刑事。“ス”の育ての父親。麻薬組織などが絡まり、何故弟は殺されたのか?弟が抱えていた秘密とは?が描かれ、
そしてクライマックスの血みどろの復讐劇へとなだれ込みます。

何やら『レオン』のような、『フェイス/オフ』のような、『インファナル・アフェア』のような感じのストーリーですが、果たしてその結果は・・・。
ん~惜しい。
アクションシーンを含め目を見張る所もあるのですが、ハードボイルドを重視しているため、ハードボイルドに不慣れな自分には冗長に感じられた。
ミステリーでもある弟の秘密などもあまり重要ではなくて付け足し程度に思えたのは、やはりこの映画がハードボイルドだからだと思う。
日本映画ではほとんど観られなくなってきたハードボイルド。それがやりたくて崔監督は韓国に単身渡ったのではないだろうか?
ハードボイルドが作れる韓国映画。またハードボイルド映画で主役が張れる骨太なスター俳優がいる韓国映画。
いいなぁ韓国映画。純愛映画は苦手だけど。

[カチンコ]クライマックスの怨念と執念が入り交じった血みどろアクションシーンは必見ですが、
自分が特に凄いシーンだと思ったのは弟を殺したヒットマンと、弟に成りすましている兄が対峙するシーン。
それは何の前触れもなく静かにやってきます。
殺したはずの人間が生きて目の前にいるヒットマンと、弟を殺した男を目の前にする兄。
この複雑な感情のぶつかり合いを冷徹に描く演出が素晴しい。しびれました。
その後に起きる二人の対決、こちらは憎しみがぶつかり合う凄まじいシーンになっており、これまた必見。

《88ミニッツ》 銀座シネマグナム [2008年3月に観た映画]

『88ミニッツ』
”88 MINUTES” (2007・アメリカ) 1h47
製作・監督・脚本 : ジョン・アヴネット
出演 : アル・パチーノ、アリシア・ウィット、エイミー・ブレネマン、リーリー・ソビースキー、ウィリアム・フォーサイス、デボラ・カーラ・アンガー

[exclamation]個人的感想及び妄想あり。

[カチンコ]ナゾがナゾ呼ぶ殺人事件。ケータイ片手にパチーノ登場。

[カチンコ]ミステリーとしては残念ながらもうひとつでした。
A・パチーノの「イヨッ!待ってましたっ!」のギラギラ演技を堪能すべき作品。
ファンとしては、相変わらずお元気で。と、喜ばしくも思うのですが、もーそろそろギラギラもいいんじゃないだろうか。
役者として、いやさ男としていつまでもギラついていたい。というお気持ちも分かりますが。

そこで相変わらずの妄想。
この映画でのA・パチーノのダークスーツと髪形を観ていてフト思ったのですが、
A・パチーノ主演で『古畑任三郎』のハリウッドリメイクってかなりハマりそう。

解決シーン前の古畑の独白シーン。あのシーンをA・パチーノがやる所を想像してみます・・・
観てぇ~
スタミナ酢豚弁当を食べたいとごねるA・パチーノを想像してみます・・・
観てぇ~
しかし、もしリメイクしたとしてギラギラした古畑になってしまった。というオチがつくかもしれませんが。

妄想続きます。
そうなると今泉は誰でしょう?A・パチーノとの対比としてウドの大木系がイイと思うので、ジョン・C・ライリーはどうでしょうか。もしくはウィル・フェレル。
頭髪的にウッディ・ハレルソンも有りかも。
西園寺はイライジャ・ウッドで決まりです。いや、ハーレイ・ジョエル・オスメントも捨てがたいか。

後は犯人役、トム・クルーズ、トム・ハンクス、メル・ギブソン、ジョディ・フォスター、ジュリア・ロバーツ。これは色々な可能性が考えられますが、個人的に是非観たいのは、
勿論そうです御大イーストウッド。
パチーノ対イーストウッドを想像してみます・・・
観てぇ~

《エイリアン2》 新宿バルト9 スクリーン3 [2008年3月に観た映画]

『エイリアン2』
“ALIENS” (1986・アメリカ) 2h17
監督・脚本 : ジェームズ・キャメロン
出演 : シガーニー・ウィーヴァー、マイケル・ビーン、キャリー・ヘン、ランス・ヘンリクセン、ポール・ライザー、ビル・パクストン

[exclamation]ネタバレ及び、当方好きな映画ですので過剰に褒めちぎっているかもしれません。
話半分ぐらいで丁度いい感じかも。

[カチンコ]「劇団☆新感線気まぐれセレクションリレー」という事で、劇団☆新感線の方々の思い出の作品を4週間にわたって1週間ずつレイトショー上映。
最終週の『エイリアン2』は、いのうえひでのりさんのセレクション。
因みに他の方々が選んだのは、古田新太さん『アトランタ・ブギ』、高田聖子さん『女はみんな生きている』、中島かずきさん『柳生一族の陰謀』といった映画が上映されました。

[カチンコ]『エイリアン2』は映画館で観た事が無いので上映される事を知って、これは是非観に行かねば。と、思ったのですが、「終電間に合うのか?」という問題が。
調べたらどうやらギリギリ間に合いそう。もし間に合わなかったらマン喫お泊りも覚悟で観に行きました。

上映開始。
「おおっ!フィルムが傷だらけ!」「で、何やら音もイマイチだ!」
そして止めは「ウワァッ!字幕が横付き!」
古いフィルムでの上映でした。
しかし『エイリアン2』好きはそんな事ではへこたれません。やっぱり面白かった。
フィルムの傷も最初だけで後は気にならなかったし、音響もイマイチと言ってもそこは映画館。家庭では体験できない大音響ですので迫力充分。字幕が横に付いているのも今となってはほとんど見られないので、レアモノ感があってそれはそれで良かった。

[カチンコ]この映画はもう何回も観ています。『エイリアンVS.プレデター』(2004年)公開時にも観直したので、それほど久し振りというわけでもありません。
しかし今回観て改めて思ったのは、J・キャメロン監督はやっぱり天才だった。
監督3作目とはいえ、メジャーな映画は初めて。で、この完成度。
キャメロン、あんたスゲェよ。

SFアクションホラーというくくりがぴったりな作品ですが、意外とアクションは少なくて静かなシーンが多い。
けれど静かなシーンでも緊張感が途絶える事はありません。何か来る、何か起こる。という演出で観ている者の心を離さず、そしていざエイリアンが現れた時のアクション。
キャメロン、あんたメチャクチャスゲェよ。
アクションが単発では終わりません。一つのアクションが次のアクションを生み出し、また更に大きなアクションを生み出す。この畳み掛け方が天才的。
少ないアクションシーンでこれだけの効果を上げたからこそ、この映画がSFアクションホラーの傑作と認識されているのでしょう。

そしてラストのマザー・エイリアンV.S.リプリー(オン・ザ・パワーローダー)。
このガチンコ勝負をCG無しで見せ切ってしまうキャメロンの豪腕演出。
もう褒め称える言葉が見つかりません。
並みの監督さんが撮っていたら恐らくグダグダになっていたと思います。

[ダッシュ(走り出すさま)]初の映画館鑑賞での『エイリアン2』。充分に堪能させていただきましたのでエンドロールも最後まで観たかったのですが、そんな悠長な事は言ってられません。終電が。本編終了後ダッシュ。
結果、何て事はないかなり余裕を持って終電一本前で帰れました。

《マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋》 新宿ガーデンシネマ1 [2008年3月に観た映画]

『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』
“MR.MAGORIUM'S WONDER EMPORIUM” (2007・アメリカ) 1h34
監督・脚本 : ザック・ヘルム
出演 : ナタリー・ポートマン、ダスティン・ホフマン、ジェイソン・ベイトマン、ザック・ミルズ

[exclamation]ネタバレなどあるかもしれません。

[カチンコ]不思議なおもちゃ屋さんを舞台にした不思議なお話し。

[カチンコ]本当に不思議なお話しだった。
ファンタジーと現実の境界が曖昧で、最後までそれがうやむやのままで終わるので呆気に取られてしまった。
Z・ヘルム監督の脚本作品『主人公は僕だった』(2006年)も小説の世界と現実世界の境界が曖昧な物語だったので、そこらへんがこの人の特徴なのかもしれない。
で、この映画は初監督作品を自分のイメージの赴くまま自由に撮っている。という感じ。
そのイメージに乗っかれる人は楽しめる作品だと思う。

[ひらめき]どーでもいい事発見しました。
N・ポートマン、D・ホフマン、J・ベイトマンザック・ヘルム監督、ザック・ミルズ。
「おおっ!フルハウス!」

因みに最強の手は、アレック、ダニエル、ウィリアム、スティーブン、のボールドウィンのフォーカード。と、言われています。
・・・スイマセン。嘘です。
でも、この4兄弟が揃った映画が作られたら、それはそれで話題にはなるだろうなぁ。

燃えよ!ピンポン [2008年3月に観た映画]

『燃えよ!ピンポン』  
“BALLS OF FURY” (2007・アメリカ) 1h30
監督・脚本 : ロバート・ベン・ガラント
出演 : ダン・フォグラー、クリストファー・ウォーケン、ジョージ・ロペス、マギーQ、ジェームズ・ホン、ジェイソン・スコット・リー、ロバート・パトリック
新宿武蔵野館1

[映画]おバカなピンポンコメディ。

[映画]おバカはおバカなんですが、もうひとつ突き抜けきれない惜しいコメディでした。
何故突き抜けきれなかったのか?
おバカなコメディ映画を自分なりに真面目に考えてみました。

D・フォグラーは初めて見ます。面白いんですが作品同様もうひとつ突き抜けきれていない。
そのポッチャリ体型からジャック・ブラックを連想し、ジャック・ブラックの様な爆裂っぷりを期待します。しかしジャック・ブラックが見せる狂気にも似た爆裂破壊衝動は、この人には本質的に無いのかもしれない。
時折ハジける姿も見せますが、基本的にツッコミキャラ。自分から笑いを取りにいくタイプではなくて、おかしな状況やおかしな人の行動に巻き込まれてそれにツッコミを入れて笑いを取るタイプの様な気がする。
この映画においておかしな状況というのは完璧。ただ、おかしな人たち。という点においてそれを演じている俳優さんが本職のコメディアンではない所が突き抜けきれなかった原因かも。
オスカー俳優のC・ウォーケンがあのような役をやるのは確かに笑えます。が、出オチ感は否めません。それ故に次第に笑いのテンションが落ちてしまう。
FBI捜査官、ピンポンのお師さん、ピンポンの対戦相手にしてもボケとしてはやや弱い。ボケが弱いためにD・フォグラーのツッコミの良さが活かしきれていない様に感じ、それが映画自体にも影響したのではないだろうか?

等と、どーでもいい事を書いてきて、ある本質的なことに気付いてしまいました。
英語が分かればもっと笑えるのかもしれない。
特にコメディにおいて言葉は重要。言葉遣い、言葉のチョイス、イントネーションなど。それらが理解できたらもっと笑えるのかもしれません。

英語は自分の数多くある弱点の内のひとつ。
アメリカ映画を長年観続けたからといって、おいそれと英語が身につくものではありません。
それならばいっちょ英語を勉強したるか。と、これっぽちも思わない向上心のかけらの無さも、自分の数多くある弱点の内の一つ。

[映画]ジェイソン・スコット・リーをチョ~~~~久し振りに見た!
調べてみたら『ソルジャー』(1998年)以来。
『リロ&スティッチ』(2002年)で声の出演をしていますが、生身を見るのはほぼ10年振り。
あまりに久し振りすぎて初めは、この人は本当にJ・S・リーなんだろうか?と、疑ってしまいました。
『ドラゴン/ブルース・リー物語』(1993年)でブルース・リーを演じたJ・S・リーが、ブルース・リーの映画からアイデアを得ているこの映画に出るのは当然と言えば当然です。

しかし、今でもJ・S・リーを見ると『ドラゴン/ブルース・リー物語』の音楽(と、言うより『フォレスト・ガンプ/一期一会』の予告で流れる音楽と言った方が有名かも。『トゥルーマン・ショー』の予告でも流れていたような気がする。)そのワンフレーズが頭の中に流れます。
♪チャ~ラ、ラ~ラ、ラ~ラ、ラ~ラ、チャ~ラ、ラ~ラ、ラララ~
このつたない表現でどれぐらい伝わるかは甚だ疑問ではありますが。

[映画]公開初日なので観終わってエレベーター前まで行くと雑誌「ぴあ」の出口調査の皆さんがお出迎え。
久し振りに協力して『ダイ・ハード4.0』のポストカードを戴きました。
ダイ・ハード4.0.jpg

『バンテージ・ポイント』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『バンテージ・ポイント』

ネタバレもあるかもしれません。

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『バンテージ・ポイント』  池袋東急
“VANTAGE POINT” (2008・アメリカ) 1h30
監 : ピート・トラヴィス
出 : デニス・クエイド、フォレスト・ウィティカー、ウィリアム・ハート、シガーニー・ウィーヴァー

[映画]アメリカ大統領暗殺、無差別テロ。異なる視点から導き出されるその真相とは。

[映画]この手のミステリーを観る時、悪い癖でついアラ探しをしてしまいます。
そしてアラを見付けた時などはそれはもう大変なもので、鬼の首を取ったかの如く勝ち誇った気分になってしまうのです。この悪癖は残念ながら直りそうにありません。

では、この映画の場合どうなのか?ほとんど無かったように思います。
それは脚本がよく出来ていたのか、それとも完全に内容が理解できていなくて、アラに気付かなかっただけなのか。
よく分かりません。ストーリーを追うのに精一杯でしたので。

ただ、アラと言うほどではないのですが、一つ気になったのがアメリカ人観光客(F・ウィティカー)の行動心理。
何が彼をあれほどまでに衝き動かすのか?それは彼の尋常じゃないほどの正義感に拠る所が大きいのですが、あそこまでいっちゃうと何か御都合主義の様にも思えてしまう。
例えば、スクープを狙うジャーナリストとすればあそこまで行動する理由も納得がいくんですが。

また別の見方で、F・ウィティカーはこの映画の真の主人公だから。と考えれば納得がいきます。
彼を衝き動かす正義感。その正義感は何ゆえに?それは主人公だから。
主人公だから、物語の終わりにややクサめのお芝居があったのも納得がいきます。

[映画]それにしても凄かったのは、人間版ターミネーター、スペイン版ランボー、最強(最凶?)の兄弟愛を持つリーサル・ウェポン。の異名をつけたくなる程の御活躍を見せたあの凄腕の特殊部隊のお兄ちゃん。狙った獲物は必ず仕留めます。必ず2発撃ち込んで息の根を止めます。その数ざっと十数人。愛する弟のためなら他人なんてどうなっても構わない。という姿勢で任務を完璧にこなすプロフェッショナルぶり。凄すぎる。
この映画だけに留めておくには勿体無いキャラクターです。是非スピンオフで、愛のために誰彼構わず皆殺しにする勇姿を再見したい。

[映画]それぞれの視点を描く際に使われる巻き戻し演出を観て「ぶっさぁ~ん[もうやだ~(悲しい顔)]」と目頭が熱くなった方もいたと思います。
それを悪用して、「あのシーンで『木更津キャッツアイ』のメンバーが一瞬だけ映ってるんだって。」とデマを流したら集客アップなるか?
そんな映像もそのうちYouTubeで見れるかもしれない。

因みにこの映画の編集はスチュアート・ベアード。『オーメン』『スーパーマン』『リーサル・ウェポン』などの編集を経て、監督として『エグゼグティブ・ディシジョン』『追跡者』などを発表するも、『レジェンド・オブ・ゾロ』『カジノ・ロワイヤル』で編集に舞い戻った方。
監督作も充分に面白かったのにどういう経緯で編集に戻ったんだろう?
これで製作がスピルバーグ、撮影がヤン・デ・ボンだったら監督2作目のP・トラヴィス監督もさぞやりにくかった事でしょう。

[映画]久し振りのネガティブ・カッター・モー・ヘンリー。最近では、ゲイリー・ブレット(バレット?)をよく目にしますが、師弟の間柄という事でもないんだろうなぁ。
そもそも“ネガティブ・カッター”ってどんな仕事なんだろう?今更ながらの疑問です。
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この後、ロサで『明日への遺言』を観ようと思っていたけど、あいにくの頭痛の気配。
頭痛歴も長いと、気配で無理できる頭痛と無理するとマズイ頭痛の違いが分かってきます。
今日のは無理するとマズイ頭痛の気配。なので映画は観ないで、パルコの本屋で珍しく漫画じゃない本。三谷幸喜さんの『ありふれた生活6』と、三谷さんと清水ミチコさんの『いらつく二人』を買って帰りました。

3本 『ジャンパー』『コントロール』『黒い土の少女』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『ジャンパー』
『コントロール』
『黒い土の少女』

ネタバレ等もございます。

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『ジャンパー』  渋東シネタワー2
“JUMPER” (2007・アメリカ) 1h28
監 : ダグ・リーマン
出 : ヘイデン・クリステンセン、ジェイミー・ベル、レイチェル・ビルソン、サミュエル・L・ジャクソン、ダイアン・レイン、マイケル・ルーカー

[映画]何やら3部作になるらしい。その第1部。

[映画]この映画で何が驚いたって、その上映時間。大作感溢れる予告を観た限りでは上映時間も大作級になるんだろうと思っていたけど、まさか90分を切るとは。
映画館側からの強い要請が有ったのか?と邪推と妄想が入り乱れました。
近頃の大作映画は上映時間も大作になる傾向が有るので(2時間半とか3時間近くとか)、映画館側としては短い映画でもっと上映回数を増やして効率を上げたい。
「どーにかならんもんかね。」と映画会社に持ちかけた所、白羽の矢が立ったのがD・リーマン監督。で、撮ったのがこの映画。なのかも。

[映画]賛否両論あるようですが、この映画自体が真っ二つに分かれる内容だと思う。
前半はチョットつらいけど、後半は面白い。
どちらを取るかで評価が分かれるのかもしれない。

自分的には後半の面白さを取ります。
特にJ・ベルが活躍しだしてからが面白い。
キャラクター的にH・クリステンセンは、『ゴレンジャー』でのアカレンジャー、『ガッチャマン』での大鷲のケン。
J・ベルはアオレンジャーで、コンドルのジョー。(例えが古くてスイマセン。)
陽のヒーローに対するクールなアウトサイダー。この関係性はどんな物語においても黄金の関係性ではないでしょうか。
それプラス漫才で言うボケとツッコミの関係性も二人の間には見られます。

映画においてはクールなアウトサイダーを演じるのはクールな2枚目。というのがステレオタイプかもしれませんが、
J・ベルはルックス的にはややもするともっさいタイプ。それが2枚目で“ジャンパー界”においてド素人、少し天然ボケのH・クリステンセンにバシバシツッコミを入れるのが妙に心地よくて面白かった。

この映画の中では二人の間にまだ信頼関係は有りませんが、
何やら続きがあるらしいのでこの先信頼関係を結ぶのか?それともビミョーに対立したままなのか?
そしてS・L・ジャクソンはあの場所からどうやって脱出するのか?続きが気になる映画です。

[映画]映画館前に行くと長蛇の列。そんなに大ヒットしているのかと列に近づくとほぼ親子連れ。
『ドラえもん』のお客さんだった。今でもドラえもんはチビッ子たちの人気者なんだなぁ。と嬉しくなりました。
この後『魔法にかけられて』のお客さんも加わる事になるので、映画館前はとんでもない事になっていたと思われます。
4作品の渋東でこれですから、今の時期はシネコンには近づかない方が無難かも。
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『コントロール』  シネマライズ2F
“CONTROL” (2007・イギリス=アメリカ=オーストラリア=日本) 1h59
製・監 : アントン・コービン
出 : サム・ライリー、サマンサ・モートン、アレクサンドラ・マリア・ラーラ

[映画]“ニュー・オーダー”の前身“ジョイ・ディヴィジョン”のフロントマンであったイアン・カーティスの生涯。
等と書いていますが、“ニュー・オーダー”の事も“ジョイ・ディヴィジョン”の事もイアン・カーティスの事も、強いては1970年代後半からの英国ロック史も全く知りません。
予備知識ゼロで無謀な挑戦をしましたが思いの外しっかりと話についていけました。
“ジョイ・ディヴィジョン”、イアン・カーティス云々というより、一人のミュージシャンの短い生涯を描いた物語としても観れる映画ですので、超初心者の自分には入門篇として最適でした。

[映画]この映画の中ではI・カーティスの周りで起こったことが赤裸々に描かれます。
I・カーティス以外の人達は御存命の方が多いだろうによくそこまで描けたなぁ。と、感心というより少し心配になるぐらいでしたが、何のことは無いこの映画の原作がI・カーティスの奥さんのデボラ・カーティスが書いた著書によるものだった。

[映画]I・カーティスを演じたS・ライリーが見事。ライブシーンでの歌声、パフォーマンス。
I・カーティスの事を全く知らない自分が見るとそっくりだとか、全然似ていないという評価は出来ませんが、ミュージシャンを演じた俳優として素晴しかった。

映画の中で演奏されるジョイ・ディヴィジョンの楽曲は演じている俳優さんたちが実際に演奏されているようです。(エンドロールでほとんどの楽曲の演奏者の所が俳優さんたちの名前でしたので。)
ド素人感覚からするとそのままデビューできるんじゃないかと思えるほどお見事でした。
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『黒い土の少女』  シアター・イメージ・フォーラム シアター1
“WITH A GIRL OF BLACK SOIL” (2007・韓国) 1h29
監・原・脚 : チョン・スイル
出 : ユ・ヨンミ、チョ・ヨンジン、パク・ヒョヌ

[映画]少女とその家族に容赦なく襲い掛かる不幸。そして少女が自ら選んだ悲しい結末。

悲しい物語です。しかし泣けません。アート映画ですのでお涙頂戴に持っていきません。その分、よりシビアに話しは進みます。それをただ観ているしかないのが辛い。辛過ぎて泣けません。

ある炭鉱の町にお母さんのいない、そしてお兄ちゃんは障害を抱えている一家がおりました。
お父さんは子供たちが大好きで、少女もお父さんとお兄ちゃんのことが大好き。
そんな家族がごくごく慎ましやかに暮らしていますが、不幸は静かに忍び寄り、そして一家の上に大きく降りかかる事になります。
最終的にその不幸を幼い少女が一身に背負わなければならなくなります。しかし幼い少女には悲しいかな背負いきれません。
そして少女が下した決断。それを誰も責める事はできません。
悪いのは全部大人、そして社会。少女は何も悪くありません。

そこでこの映画のコピーです。“わたし、みんなを守ると決めたのに”
このコピーに泣きました。この映画を観てしばらくして辛さが和らいだ頃にそのコピーを見て、ラストシーンの少女の姿を思い出すと、イカンです。泣けてきます。

少女はコピーから想像できるように強い少女なのです。辛い時も涙を見せません。
その強さが悲しい結末を選んでしまったのかも。
もっと子供らしく泣く時には泣いて、大人を頼ってくれていたら別の選択も出来たのかもしれない。
でもやっぱり大人達を頼れない状況を作り出している大人と社会が悪い。

3本 『ガチ☆ボーイ』『L change the WorLd』『ライラの冒険 黄金の羅針盤』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『ガチ☆ボーイ』
『L change the WorLd』
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』

ネタバレ、個人的感想有り。悪口多めになっております。

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『ガチ☆ボーイ』  新宿トーア
(2007・日本) 2h00
監 : 小泉徳宏  脚・出 : 西田征史
出 : 佐藤隆太、サエコ、向井理、中谷竜、小椋毅、久保麻衣子、川岡大次郎、宮川大輔、仲里依紗、泉谷しげる 

[映画]学生プロレスを舞台にした青春ストーリー。

[映画]良かった。泣けた。予告でネタバレしているそのままの内容。でも泣けた。
プロレスに懸ける熱い想い、その想いを共にする仲間たち、しかし主人公にはある障害が有って。
という一直線なお話し。その一直線さがズドンと来た。

数有る泣き所の中で特に泣けたのが、主人公はある事故を境に新しい事が記憶できないという障害を持っているため、プロレス同好会に入会して何ヶ月も経っていてもメンバー達とは毎日常に初対面。(主人公は毎朝ある努力をしているので仮の記憶だけは有ります。)
初対面の人に会う緊張感。その気持ちよく分かる。
その緊張感を持って部室に向かうと、そこには自分のことを知っていてくれる人たちがいる。自分の事を仲間だと思ってくれている人たちがいる。
その時の喜び、嬉しさ。一直線にバッコーンと来た。泣けた。ブワァッと泣けた。

『ガンダム』最終回のラストシーンを思い出しました。若井おさむさんだったら「こんなに嬉しい事はない。」と、おっしゃる事でしょう。
小泉監督は『ガンダム』世代よりかなり下(1980年生まれ。まだ28歳)ですが、どこかで影響を受けているのかもしれない。と、邪推してみました。

[映画]佐藤隆太さん良かった。正直今までそんなにお芝居の上手な人ではないと思っていたけど(ゴメンナサイ)、この映画のこの真っ直ぐな主人公にピッタリ。素晴しかった。

予告で佐藤さんが見せる打点の高いドロップキック。それがクライマックスでどのような形で見れるのか興味津々だったけど、そんな事はこの映画においては小さい事に気づきました。
確かに凄い、視覚的にも見栄えがします。前フリも充分にフッてあります。
でもそれが例えフライングボディアタックやエルボースマッシュであったとしても主人公の熱い想いは伝わってきたと思います。

[映画]とても良い映画だったのですが、個人的意見として難が有るとすれば『ガチ☆ボーイ』というタイトル。
何かBL系の匂いがそこはかとなく漂ってきて声にするのがチト恥ずかしい。
というのは妄想癖が過ぎるでしょうか。
フジテレビ製作という事で、『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』の流れの中の1作という事なんでしょう。多分。

因みに原作となった舞台でのタイトルは『五十嵐伝~五十嵐ハ燃エテイルカ』。
そのタイトルでは“フジテレビ式ヒットする映画のノウハウ”から外れるのかもしれない。
だからと言って『ガチ☆ボーイ』が最善だったとは思えない。。
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『L change the WorLd』  新宿ジョイシネマ3
(2008・日本) 2h08
監 : 中田秀夫
出 : 松山ケンイチ、藤村俊二、福田麻由子、福田響志、南原清隆、平泉成

[映画]大ヒット映画『デスノート』からのスピンオフ。

[映画]この映画も大ヒット。なので思う存分悪口書けます。重箱の隅突っつきます。

先ずは細かい所でスイマセン。ウィルス研究所の研究室の自爆装置(爆発はしませんが、中にいる人がとんでもない事になります。)。そのスイッチ。
フタをパカッと開けてボタンをポチッとな。と、学校の非常ベル並みのお手軽さ。
別に『エイリアン』のノストロモ号ほどの工程は求めませんけど、せめてフタは鍵ぐらい使って開けてほしい。
最大限に良い解釈をすると、最新鋭の識別システムが付いていたのかもしれない。
だからスイッチの前に立つだけでフタが開けられたのかもしれない。
それならそう描かないと。せっかくお金のある映画なんだから。

もう一つ、抗ウィルス薬の開発を依頼した博士に、Lと一緒にいる少年がウィルスで全滅したタイの村で唯一生き残った少年だという事を説明します。
博士に会って半日ほど経ってから。
・・・遅くね?
どう考えても抗ウィルス薬を開発する何かしらのヒントが少年に隠されている。と、観ている誰もが思ってますけど。実際、タイ人の体に多く含まれている何とかという物質がどーたらこーたら。という事だったし。
もう『全員集合!!』の「志村ぁ~、後ろぉ~」状態です。
天才探偵の天才ぶりがLの最大の魅力だと思うけど、それを台無しにする凡ミス。

もう一つ、ナンチャンの扱いはいくらなんでも可哀相だった。登場のシーンで客席から失笑。その後も出るシーン、出るシーンでスベリまくりの浮きまくり。
役柄がコメディリリーフ兼運転手なのですが、いくらプロの芸人だからといって、固定ファンのついているシリーズの3作目にいきなり出ていって笑わせろ。というのは無理な話だと思う。
そもそもこの話しに笑わせるシーンがどうしても必要だったとは思えない。

勝ち目の無い勝負に果敢に挑んで見事に砕け散ったナンチャンに日本男児の心意気を見ました。
この挑戦を描いた映画が観たいぐらいです。

悪口書くの楽しいんですけどこれぐらいにして、次は邪推します。

[映画]以下“L”風に読んで頂ければ幸いです。

「この映画ではやけにワタリ(おヒョイさん)がフィーチャーされています。
そしてこの映画には日本テレビが製作に一枚噛んでいる。
・・・。
分かりました。おそらく彼らは『デスノート』以前の物語をテレビドラマ化する事を目論んでいます。
そして、その結末を映画化して更なるドジョウを捕らえようとしています。」

と、低レベルな推理をしてみました。まぁテレビ局がそう簡単に金の成る木は手放さないだろうという事で。

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『ライラの冒険 黄金の羅針盤』  新宿ミラノ1
“THE GOLDEN COMPASS” (2007・アメリカ) 1h52
監・脚 : クリス・ワイツ
出 : ダコタ・ブルー・リチャーズ、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、サム・エリオット、ベン・ウォーカー
声 : フレディ・ハイモア、イアン・マッケラン

[映画]ファンタジー3部作の第1部。

[映画]本編が始まる前に、ご丁寧に「このシリーズは3部作である。そしてこの映画はあくまで第1部なのである。」という説明があります。そんな予防線を張られたらこの映画のみの評価はしづらい。
でもまぁ正直言ってそんなに面白くはなかった。と言うか、話しがどこに向かっているのかが全く分からないまま終わってしまった。
3部作が前提となっているぐらいだから壮大な物語になるんだろうけど、残念ながらこの映画からはそれは伝わってこなかった。

[映画]映像は凄い。CG山盛り。なのでエンドロールも長い。

『茄子 スーツケースの渡り鳥』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。(正確には映画ではありませんが。)

『茄子 スーツケースの渡り鳥』

ネタバレやら邪推やら駄知識などあります。

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『茄子 スーツケースの渡り鳥』  DVD(レンタル)
(2007・日本) 0h54
監・脚・キャラクターデザイン : 高坂希太郎
声 : 大泉洋、山寺宏一、大塚明夫、坂本真綾、芝井伶太

[映画]2003年に劇場公開された『茄子 アンダルシアの夏』の続編。
今回は劇場公開されずオリジナルビデオアニメとして発表。
ですがアニメーションとしてのクオリティは前作とほとんど変わってませんでした。
絵がよく動きます。よく動くアニメは観ていて気持ちがイイです。
リアルな動きばかりでなくアニメならではのオーバーアクションもかつての宮崎アニメを観ている様で楽しい。

高坂監督は数々のジブリ宮崎アニメで作画監督をされた方なので、ジブリファンの方には絵柄も見覚えが有ってとっつきやすいかと思われます。

[映画]お話しは世にも珍しい自転車アニメ。何故珍しいか?
それは自転車描くのが面倒臭いから誰も作る気にならない。
というのはあくまで邪推ですが、にしてもよっぽどの自転車好きじゃないとここまで出来ません。

前作は自転車レース有り、ヒューマンドラマ有りという感じだったけど、
今回はほぼ自転車レース、と言うか自転車そのものに特化したお話しになっています。
自転車に獲り憑かれた人たちが、何故に苦しい思いをしてまでレースを続けるのか疑問に感じ、そして引き際を模索します。
でも最後は、やっぱり自転車面白ぇ~!やめらんねぇ~!という自転車好きの熱い想いが伝わってきます。
高坂監督を始めスタッフの方々、やっぱり相当の自転車好きが集まってます。
中には「面倒臭ぇなぁ」と思っていた方もいた事でしょうが。というのも邪推です。

[映画]大泉洋さん、半分声優と言っていいぐらい上手い。話題性だけで使われるタレントさんたちとはちょっとレベルが違う感じです。

大泉さんとブラックジャックの声でもお馴染みの大塚明夫さんの接点は何でしょう?
と、少々マニアックな質問を問われたならば、正解は『ゲゲゲの鬼太郎』の“ねずみ男”。

大泉さんは2007年の実写版『ゲゲゲの鬼太郎』でねずみ男を演じており、
大塚明夫さんのお父上はアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男の初代声優、大塚周夫さん。
因みに『チキチキマシン猛レース』のブラック魔王でもお馴染みの大ベテランであられます。

まぁそれを知った所でどこで披露していいのか分からない駄知識ではありますが、
そこは「知識は荷物になりません。あなたを守る懐刀。」という事で。

『プロポジション 血の誓約』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『プロポジション 血の誓約』

ネタバレ、個人的感想ありです。

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『プロポジション 血の誓約』  DVD(レンタル)
“THE PROPOSITION” (2005・オーストラリア=イギリス) 1h44
監 : ジョン・ヒルコート
出 : ガイ・ピアース、レイ・ウィンストン、エミリー・ワトソン、ダニー・ヒューストン、ジョン・ハート、デヴィッド・ウェンハム

[映画]レンタル店の前を通ったら半額デーだった。フラフラと店内に入りボケーッと店内を見回したところ目に止まったのがこの映画。
ポスターがカッコイイので以前からいつか観たいなぁと思っていた。ので観ました。

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[映画]オーストラリア開拓時代のオージー・ウェスタン。
血と暴力たっぷりなヴァイオレンスなお話しなのですが、お国柄なのか美しい自然を背景にノンビリと展開します。
オーストラリアの自然を美しく切り取っておりますので、是非御堪能ください。
という意味があるのかどうかは分かりませんが、その映像は確かにキレイです。

お話しは、何やらオーストラリアの当時の統治者であった英国の警察(軍隊?)と、白人の移民の荒くれ者達と、先住民のアボリジニの三つ巴の対立の様相を呈してきますが、
オーストラリアの人たちにとってみれば「皆さんお馴染みの・・・」となるんでしょうが、そこらへんの知識が全く無い自分には理解するのが難しい。
なんとなくは分かりますが、もう一歩踏み込めない歯痒さが残る映画でした。

[映画]G・ピアースがアボリジニの放った槍で串刺しになるシーンが有ります(奇跡的に軽傷)。
「オオッ!弐号機!」とエヴァファンにはたまらないシーンになっております。

3本 『ラスト、コーション』『アメリカを売った男』『潜水服は蝶の夢を見る』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『ラスト、コーション』
『アメリカを売った男』
『潜水服は蝶の夢を見る』

ネタバレ、極個人的感想有りです。

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『ラスト、コーション』  シャンテ シネ2
“LUST.CAUTION” (2007・中国=アメリカ) 2h38
製・監 : アン・リー
出 : タン・ウェイ、トニー・レオン、ワン・リー・ホン、ジョアン・チェン

[映画]戦争によって人生を変えられた若者達の悲劇。
T・レオンは若者達の運命を大きく狂わす役人。しかし果たして若者達が己の人生を懸けてまで命を狙うほどの要人だったのか?例え暗殺に成功しても代りはいくらでもいる。という様子もチラッと伺える。そこら辺がまた若者達にとって悲劇だったのかもしれない。

[映画]エロいエロいという評判が先走っている作品。確かにエロい。肉体的繋がりから生まれた精神的繋がり。という意味がある。らしい。よく分かんないが。
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『アメリカを売った男』  シャンテ シネ3
“BLEACH” (2007・アメリカ) 1h50
監・脚 : ビリー・レイ
出 : クリス・クーパー、ライアン・フィリップ、ローラ・リニー、カロリン・ダヴァーナス、キャスリーン・クインラン

[映画]面白かった。派手さは無いけど新旧FBI捜査官の心理戦が見事なサスペンスを作り出している。
その結末は冒頭で明かされる構成。実際に起こった全米を揺るがした事件ということでその手法をとったんだろうと思う。しかしその事件を知らない者にとっては迷惑な話し。
とはなりません。
何故ならベテラン捜査官を演じるC・クーパーと新人捜査官を演じるR・フィリップが素晴しく、
静かに火花散る迫真の心理戦を見せてくれるから例え結末が分かっていても観応え十二分。

C・クーパーのベテランならではの鉄壁の防御と、常にプレッシャーをかけ続けるイヤラシイ攻撃。
その尊大さと、R・フィリップに時折見せる優しさ。表裏を持った人物をC・クーパーが見事に表現。
不思議なのがこの演技に対して賞レースで無視された事。
C・クーパーならこれぐらいの演技をして当たり前。という感じなんだろうか?

対する新人のR・フィリップ。その防御と攻撃の前にフラフラになりながらも相手の一瞬の隙をついてウィークポイントへのピンポイントの一撃。
新人である事の初々しさと、その事を最大限に利用するしたたかさを的確に表現したR・フィリップもこれまた見事。

これほど良く出来た心理戦を見せてくれる映画はそうそう有るもんじゃありません。
ハリウッドもまだまだ捨てたもんじゃないです。

[映画]C・クーパーは敬虔なクリスチャンでありながら祖国の重要機密を20年近くに渡って売りさばいてきたスパイ。
その罪の意識を贖うための熱心なクリスチャンであったのかもしれない。
そして罪が発覚したC・クーパーが最後にすがるのは信仰しかなかった。
そのラストシーン、C・クーパーの壮絶な表情とR・フィリップとの言葉少ない会話。カッコイイ幕切れでした。

[映画]脇に回ったL・リニーも良かった。脇役が良いと映画が引き締まります。

[映画]B・レイ監督は『ボルケーノ』『サスペクト・ゼロ』『フライト・プラン』の脚本家。
監督作品はこの映画の他に『ニュースの天才』があります。監督作品の方が数段面白いと思うのはあくまで個人的意見です。

ポスターがカッコイイ。C・クーパーの表情!ラストシーンではもっと凄い事になってます。
アメリカを売った男 1.jpg

もう1枚
アメリカを売った男 2.jpg

更にもう1枚
アメリカを売った男 3.jpg
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『潜水服は蝶の夢を見る』  シネカノン有楽町1丁目
“LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON” (2007・フランス=アメリカ) 1h52
監 : ジュリアン・シュナーベル
出 : マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マックス・フォン・シドー

[映画]本日3本目ですが、3本目に観るにはかなりしんどい映画だった。まぁ例え1本目に観たとしてもしんどかったとは思うけど。
お涙頂戴に持っていこうと思えばそれも出来たと思うけど、それをしなかった。それよりも観客を主人公の立場に立たせることが監督の狙いだったんだと思う。自由の利かない体になってしまった時あなたならどうする?何を思う?
要は観る者の感受性に委ねた映画だと思う。そこら辺感受性の乏しい自分なんかは、「さぞかしツライだろうなぁ。」止まり。監督にしてみたらガッカリな観客なんだろうなぁ。

3本 『全然大丈夫』『シスターズ』『ミスター・ロンリー』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『全然大丈夫』
『シスターズ』
『ミスター・ロンリー』

ネタバレ度高めになっております。

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『全然大丈夫』  シネクイント
(2007・日本) 1h50
監・脚 : 藤田容介
出 : 荒川良々、岡田義徳、木村佳乃、田中直樹、蟹江敬三、きたろう

[映画]男二人、30歳を目の前にして未だ何事も成し得ていない事を憂い、何とかしようとあがきます。
そしてその周りには男たちを含めちょっと問題ありな人達が何かに引き寄せられるかの如く集まっていますが、
この映画はそれら全員をひっくるめて「全然大丈夫」と言ってくれる優しい映画です。

[映画]荒川良々さん。自分は『ピンポン』(2002年、曽利文彦監督)で初めてその存在を知り、
その時はてっきり“りょうりょう”だと思い込んでしばらくの間“りょうりょう”だと思っていました。
その後『森田一義アワー』に出た時に“よしよし”と読む事を知りました。

その荒川さんの魅力全開のコメディなのですが、最初の内は、未だ何事も成し得ていない男二人が自分自身とダブってしまい、身につまされ過ぎて笑うに笑えませんでした。
これは映画や荒川さんや他の出演者の皆さんがつまらなかったと言う事では決してなく、(場内は笑い声に包まれていました。)笑えなかったのはあくまで個人的問題。
その問題は中盤以降映画が「全然大丈夫」モードに入り無事解決。お気楽に笑えるようになりました。

「全然大丈夫」モード素晴しいです。ある意味スゴイです。
物語として何事も起こらない。と言うより何事も起こさない。
ある些細な展開が有りますが、そこから一悶着有って場を盛り上げて物語は収束する。
というのが映画としてのお約束ですが、おそらく有ったであろうその一悶着をばっさりカット。

盛り上げない事によって物足りなく感じる事は一切無く、この映画がそれまで作り上げてきた“『全然大丈夫』ワールド”を完璧なものに作り上げてくれた事と、その世界がこの映画の中に確実に存在し続けてくれているという二重の喜びの方が大きい。

監督としては、盛り上がりが有った方がいいのか悩んだと思いますが、“『全然大丈夫』ワールド”を作り上げる方を選んだその勇気。素晴しい。
「全然大丈夫」には、ちょっと問題は有るけれど健気に生きている人達に向けられているのとは別に、
この映画はこれで「全然大丈夫」と監督自身に向けられているのかも。

[映画]何事も成し得ていない事を憂いていた男二人ですが、最後はそんな事は無かったかのようなお気楽ぶり。
多分この先もこの二人は憂いたり、お気楽だったりを繰り返して生きてゆくんだろうと思う。
その姿を見続けたい。出来れば1年に1本ペースで。
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『シスターズ』  シアターN渋谷 シアター1
“SISTERS” (2006・アメリカ) 1h31
監・脚 : ダグラス・バック
出 : クロエ・セヴィニー、ルー・ドワイヨン、スティーヴン・レイ、ダラス・ロバーツ

[映画]ブライアン・デ・パルマ監督の1973年の作品『悪魔のシスター』のリメイク。
過去に死亡事故を起こした怪しげな医師。その事故の真相を追う女性記者の前に現れた謎の双子。
その双子の起こした殺人事件を目撃した事によって女性記者に医師の悪魔的陰謀が襲い掛かる。

[映画]デ・パルマ監督の『悪魔のシスター』は多分未見。’70年代のデ・パルマ作品は観ているのと観てないのがあって、何を観て何を観てないのか記憶が曖昧。
この映画を観ても『悪魔のシスター』を観た記憶が一切甦らないのでやはり観ていないと思う。

前フリの殺人事件までの何かが起こりそうで起こらないねちっこい粘着質気味の感じは、その当時のデ・パルマ作品の雰囲気をよく再現できてると思う。デ・パルマ作品はねちっこくないと。
昨今のリメイク作品と言えば、VFXを多用して映像を派手にしてお茶を濁す。というパターンに陥ってしまうことがありますが、この映画にはその様な事は有りません。映像も地味ならキャストも地味め。その雰囲気が’70年代の映画をそのまま現代に持ってきたようで、何か心地よかった。

[映画]ミステリーとしてはその要となる双子の謎は簡単に想像がついてしまいそれほど面白みはありません。自分としてはミステリーとしてでではなくその裏に潜む悲劇的物語を興味深く観れた。
医師の陰謀にあっさりと落ちてしまう女性記者。しかし彼女にも他人に言えない過去があり、皮肉にもその陰謀は彼女の人生ににとって最も望んでいた事なのだった。
というある種倒錯した結末がチョット変わっている。
このなんとも言えないモヤッとした結末、嫌いじゃないです。

[映画]謎の双子を演じるL・ドワイヨン。因みに映画監督ジャック・ドワイヨンと女優ジェーン・バーキンとの間に生まれた娘さん。という事でシャルロット・ゲンズブールとは異父姉妹ということになります。
女優としてはサラブレッドと言えますが、対する女性記者を演じたC・セヴィニーの演技力と存在感の前ではかなり分が悪い。
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『ミスター・ロンリー』  シネマライズBF
“MISTER LONELY” (2007・イギリス=フランス) 1h51
監・脚 : ハーモニー・コリン
出 : ディエゴ・ルナ、サマンサ・モートン、ドニ・ラヴァン、ヴェルナー・ヘルツォーク、レオス・カラックス

[映画]H・コリン監督の作品を観るのは初めて。脚本デビュー作『KIDS/キッズ』、監督デビュー作『ガンモ』で注目を集め、そして監督2作目を撮り終えて以降長らくのお休みがあっての新作。
デビューから注目を集め、しかし長らく映画を撮らなかった。その間H・コリンが何を思い、何に苦しんだのかが正直にスクリーンに映し出された映画の様な気がする。

この映画はH・コリン監督の極個人的映画と言えるかもしれない。だからこの映画に描かれている事は監督にとっては全て意味のある事。物真似でしか生きられない人たち、そんな人たちの物真似の楽園、射殺される羊、S・モートンの生き様、間に挿入されるシスターに起こった奇跡のエピソード。など。
しかしその意味を他人である観客が100%理解する事は難しい。
なんとなくは分かるけど、やはり極個人的映画。

[映画]H・コリン監督の宗教観、死生観も正直に映し出されているが、何か相当深い所にイってしまっているみたいでチョット心配になる。

[映画]『ミスター・ロンリー』というタイトルは同名の楽曲から頂いていると思われます。現に冒頭でその曲が流れます。
しかし自分は『ミスター・ロンリー』と聞くと「ミィスタァ~、ロォンリィ~」という女性コーラスと共に桂文珍師匠の満面の笑みと、日曜日の昼間のまったりとした時間が思い起こされます。

『陰日向に咲く』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『陰日向に咲く』

ネタバレ、個人的感想有りです。

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『陰日向に咲く』  池袋HUMAXシネマズ4 シネマ4
(2008・日本) 2h09
監 : 平川雄一朗  原 : 劇団ひとり
出 : 岡田准一、宮崎あおい、西田敏行、三浦友和、伊東淳史、塚本高史、平山あや

[映画]ラスト30分。雪崩の如く押し寄せてくる“エエ話し”のお涙頂戴攻撃にあなたは耐えられるか?

ゴメンナサイ。自分ギブアップっす。

恋心、初恋、死別、和解。
各種泣ける要素を取り揃え、老若男女誰もがどれかに当てはまって泣けんだろう。
という目論見が有ったかどうかは分かりませんが、ここまであからさまに泣かそう、泣かそうとされると逆に引いてしまいます。

ベストセラーとなった原作もこんな感じなんでしょうか?当然未読。
なんか自分が持っていた劇団ひとりさんの印象とは全く違うんですが。
映画ほど押しの強い人ではないと思うんだけど。
劇団ひとりさん自身が映画の監督をされたら、全然違うものになったんじゃないだろうか。

そう言えば麒麟の田村さんの『ホームレス中学生』も映画化が決まったようで、
やっぱりお涙頂戴になってしまうんでしょうかねぇ。

[映画]花の都大東京。その人口約1,280万人。その中で奇跡的に交錯する登場人物たち。
でも、秋葉原編だけはポツンと浮いてる感じ。
箸休め的な意味合いなんだろうか?

[映画]台風直撃のシーンが有りますが、本当に台風直撃の中で撮影されている様に見える。
引きの広範囲の画でも雨風が凄まじかったから多分そうなんだろうと思う。

スゲェな、まさしく撮影のその日に台風直撃なんて。奇跡だ。
と、バカみたいに感心しちゃいましたが、冷静に考えれば撮影のその日がたまたま台風直撃で、
お忙しい出演者の方達ですからその日しかなくて、やむなく撮影してシナリオを台風直撃に書き換えた。という事も考えられます。
でなきゃ台風がすぐそこまで来てる中で花火大会が開催されるわけが無い。
本当の所はどうなんでしょう?

2本 『裏切りの闇で眠れ』『エリザベス:ゴールデン・エイジ』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『裏切りの闇で眠れ』
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』

ネタバレ、個人的感想有りです。

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『裏切りの闇で眠れ』  新宿武蔵野館1
“TRUANDS” (2006・フランス) 1h47
製・監・脚 : フレデリック・シェンデルフェール
出 : ブノワ・マジメル、フィリップ・コーベール、ベアトリス・ダル、オリヴィエ・マルシャル

[映画]フランス版『仁義なき戦い』。
この映画で描かれるフランス裏社会には、本当に仁義もへったくれもありません。
有るのは己の欲望のみ。
そして欲望から生み出される暴力、また暴力、そして暴力。
その欲望と暴力を容赦なく描ききるので不快に感じる方もいるかもしれません。
自分も不快でした。

ただ、他の映画において有りがちな裏社会においての義理と人情等のキレイ事を描かず、
裏社会というのはこの様に汚れきっているものなのだ。
という事を観ている人に知らしめるのは、特に若い人達に裏社会への憧れを抱かせないためには意味の有る事なのかも。

そしてラストは、裏切りの代償。
裏切った者に待ち受けるものは、その後の人生において裏切りの代償をいつか払う時がやってくるのではないか。という恐怖に怯える日々しかない。

もしかしたらこの映画は、裏社会から描いた反面教師的な道徳映画。と言えるのかもしれない。

[映画]B・マジメルがカッコよかったんですけど、脱いだらぽっちゃりボディ。役作りなのか?
その点あまり他人の事をどうこう言えないのですが、やはり2枚目映画スターにはもう少しシュッとしていて欲しい。
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『エリザベス:ゴールデン・エイジ』  新宿アカデミー
“ELIZABETH : THE GOLDEN AGE” (2007・イギリス=フランス) 1h54
監 : シェカール・カプール
出 : ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライブ・オーウェン、アビー・コーニッシュ

[映画]“ヴァージン・クイーン”誕生までを描いた『エリザベス』(1998年、シェカール・カプール監督)のその後。

[映画]英国史に疎い自分は『エリザベス』を最初に観た時は完全に見失いました。
その轍は踏むまい。と、この映画を観る前にその時代の英国史をチラッとだけ勉強し、それから『エリザベス』を観直してから臨んだのでこの映画には何とかついていけました。

[映画]前作『エリザベス』を観直してみると、何か表面上だけのエピソードの羅列のように感じた。
その時代の英国史を勉強されている方が観れば、登場人物のその時の感情や思惑が深読み出来るので映画として楽しめるし、また良い教材になるんだろうと思う。

そして続編のこの映画にも全く同じ印象を受けた。
一定の教養が無いと映画として楽しめないハードルの高い作品であり、
そしてまた良く出来た教材映画。

教養の無い自分にはやはりエピソードの羅列に思えた。
キャスト、衣装、小道具、美術。どれも一級品なので見応えだけは有りました。

[映画]『エリザベス』の方の話でスイマセン。
『エリザベス』で一番印象に残っていたのが、劇場公開時同時期に公開されていた『スターウォーズ エピソード1』に出ていた“ダース・モール”と同じような格好の黒マントの人物が出ていたなぁ。という事。
で、今回観直してみて驚いたのが、その黒マントの人物が現007のダニエル・クレイグだった。
で、映画の中にD・クレイグが拷問を受けるシーンが有り。
そこで「おぉっ!『カジノ・ロワイヤル』!」と、なにかパズルのピースが埋まった気分になった。

『SW/EP1』⇒『エリザベス』⇒『カジノ・ロワイヤル』。

一見ジャンルも描かれている時代も何一つとして関連性の無い3本の映画が、D・クレイグによって繋がった。
かなり強引ですが、まぁこんな見方も映画の楽しみの一つという事で。
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