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3本 『全然大丈夫』『シスターズ』『ミスター・ロンリー』 [2008年3月に観た映画]

2008年3月に観た映画。

『全然大丈夫』
『シスターズ』
『ミスター・ロンリー』

ネタバレ度高めになっております。

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『全然大丈夫』  シネクイント
(2007・日本) 1h50
監・脚 : 藤田容介
出 : 荒川良々、岡田義徳、木村佳乃、田中直樹、蟹江敬三、きたろう

[映画]男二人、30歳を目の前にして未だ何事も成し得ていない事を憂い、何とかしようとあがきます。
そしてその周りには男たちを含めちょっと問題ありな人達が何かに引き寄せられるかの如く集まっていますが、
この映画はそれら全員をひっくるめて「全然大丈夫」と言ってくれる優しい映画です。

[映画]荒川良々さん。自分は『ピンポン』(2002年、曽利文彦監督)で初めてその存在を知り、
その時はてっきり“りょうりょう”だと思い込んでしばらくの間“りょうりょう”だと思っていました。
その後『森田一義アワー』に出た時に“よしよし”と読む事を知りました。

その荒川さんの魅力全開のコメディなのですが、最初の内は、未だ何事も成し得ていない男二人が自分自身とダブってしまい、身につまされ過ぎて笑うに笑えませんでした。
これは映画や荒川さんや他の出演者の皆さんがつまらなかったと言う事では決してなく、(場内は笑い声に包まれていました。)笑えなかったのはあくまで個人的問題。
その問題は中盤以降映画が「全然大丈夫」モードに入り無事解決。お気楽に笑えるようになりました。

「全然大丈夫」モード素晴しいです。ある意味スゴイです。
物語として何事も起こらない。と言うより何事も起こさない。
ある些細な展開が有りますが、そこから一悶着有って場を盛り上げて物語は収束する。
というのが映画としてのお約束ですが、おそらく有ったであろうその一悶着をばっさりカット。

盛り上げない事によって物足りなく感じる事は一切無く、この映画がそれまで作り上げてきた“『全然大丈夫』ワールド”を完璧なものに作り上げてくれた事と、その世界がこの映画の中に確実に存在し続けてくれているという二重の喜びの方が大きい。

監督としては、盛り上がりが有った方がいいのか悩んだと思いますが、“『全然大丈夫』ワールド”を作り上げる方を選んだその勇気。素晴しい。
「全然大丈夫」には、ちょっと問題は有るけれど健気に生きている人達に向けられているのとは別に、
この映画はこれで「全然大丈夫」と監督自身に向けられているのかも。

[映画]何事も成し得ていない事を憂いていた男二人ですが、最後はそんな事は無かったかのようなお気楽ぶり。
多分この先もこの二人は憂いたり、お気楽だったりを繰り返して生きてゆくんだろうと思う。
その姿を見続けたい。出来れば1年に1本ペースで。
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『シスターズ』  シアターN渋谷 シアター1
“SISTERS” (2006・アメリカ) 1h31
監・脚 : ダグラス・バック
出 : クロエ・セヴィニー、ルー・ドワイヨン、スティーヴン・レイ、ダラス・ロバーツ

[映画]ブライアン・デ・パルマ監督の1973年の作品『悪魔のシスター』のリメイク。
過去に死亡事故を起こした怪しげな医師。その事故の真相を追う女性記者の前に現れた謎の双子。
その双子の起こした殺人事件を目撃した事によって女性記者に医師の悪魔的陰謀が襲い掛かる。

[映画]デ・パルマ監督の『悪魔のシスター』は多分未見。’70年代のデ・パルマ作品は観ているのと観てないのがあって、何を観て何を観てないのか記憶が曖昧。
この映画を観ても『悪魔のシスター』を観た記憶が一切甦らないのでやはり観ていないと思う。

前フリの殺人事件までの何かが起こりそうで起こらないねちっこい粘着質気味の感じは、その当時のデ・パルマ作品の雰囲気をよく再現できてると思う。デ・パルマ作品はねちっこくないと。
昨今のリメイク作品と言えば、VFXを多用して映像を派手にしてお茶を濁す。というパターンに陥ってしまうことがありますが、この映画にはその様な事は有りません。映像も地味ならキャストも地味め。その雰囲気が’70年代の映画をそのまま現代に持ってきたようで、何か心地よかった。

[映画]ミステリーとしてはその要となる双子の謎は簡単に想像がついてしまいそれほど面白みはありません。自分としてはミステリーとしてでではなくその裏に潜む悲劇的物語を興味深く観れた。
医師の陰謀にあっさりと落ちてしまう女性記者。しかし彼女にも他人に言えない過去があり、皮肉にもその陰謀は彼女の人生ににとって最も望んでいた事なのだった。
というある種倒錯した結末がチョット変わっている。
このなんとも言えないモヤッとした結末、嫌いじゃないです。

[映画]謎の双子を演じるL・ドワイヨン。因みに映画監督ジャック・ドワイヨンと女優ジェーン・バーキンとの間に生まれた娘さん。という事でシャルロット・ゲンズブールとは異父姉妹ということになります。
女優としてはサラブレッドと言えますが、対する女性記者を演じたC・セヴィニーの演技力と存在感の前ではかなり分が悪い。
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『ミスター・ロンリー』  シネマライズBF
“MISTER LONELY” (2007・イギリス=フランス) 1h51
監・脚 : ハーモニー・コリン
出 : ディエゴ・ルナ、サマンサ・モートン、ドニ・ラヴァン、ヴェルナー・ヘルツォーク、レオス・カラックス

[映画]H・コリン監督の作品を観るのは初めて。脚本デビュー作『KIDS/キッズ』、監督デビュー作『ガンモ』で注目を集め、そして監督2作目を撮り終えて以降長らくのお休みがあっての新作。
デビューから注目を集め、しかし長らく映画を撮らなかった。その間H・コリンが何を思い、何に苦しんだのかが正直にスクリーンに映し出された映画の様な気がする。

この映画はH・コリン監督の極個人的映画と言えるかもしれない。だからこの映画に描かれている事は監督にとっては全て意味のある事。物真似でしか生きられない人たち、そんな人たちの物真似の楽園、射殺される羊、S・モートンの生き様、間に挿入されるシスターに起こった奇跡のエピソード。など。
しかしその意味を他人である観客が100%理解する事は難しい。
なんとなくは分かるけど、やはり極個人的映画。

[映画]H・コリン監督の宗教観、死生観も正直に映し出されているが、何か相当深い所にイってしまっているみたいでチョット心配になる。

[映画]『ミスター・ロンリー』というタイトルは同名の楽曲から頂いていると思われます。現に冒頭でその曲が流れます。
しかし自分は『ミスター・ロンリー』と聞くと「ミィスタァ~、ロォンリィ~」という女性コーラスと共に桂文珍師匠の満面の笑みと、日曜日の昼間のまったりとした時間が思い起こされます。
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