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『荒野の用心棒』『フォロウィング 〈25周年/HDレストア版〉』『アイアンクロー』 [映画]

『荒野の用心棒』 1964年、イタリア=スペイン=ドイツ、1時間40分。を観た。
二大勢力が争い支配する小さな町に一人のガンマンが現れる。抗争の巻き添えでその数を減らした町の住民たちに荒みきった現状になす術はなく、ガンマンにもこの町で生きて金儲けがしたいならどちらかの勢力に入るべきと勧めるのだった。

セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演、エンニオ・モリコーネ音楽によるドル三部作の始まりの作品は黒澤明監督作品『用心棒』(1961年)を許可なくイタリアで西部劇としてリメイクしたもの。
著作権についてもおおらかな時代だったとも言える。しかし世界的に大ヒットしたおかげで東宝にもバレて裁判沙汰になり東宝もそれなりの収入を得る事になる。

後の二作品と違って主人公の名無しの男(ジョーとは呼ばれている)に正義感が有る様な。西部劇の主人公らしさでもあるんだろうけど。台詞も多いし。マカロニウェスタンとしては正義感よりも己の信念とか流儀に忠実な後の二作品の方が合っていると思う。そういった人物設計は後のアメリカンニューシネマに影響を与えたのだろうか。

ドル三部作に話の繋がりは無いが主人公の名無しの男は薄っすらと繋がっている。本作の怪我によって次作でモンコ(スペイン語で片腕の意味)になったのかなあとも想像出来る。

実子のスコット・イーストウッドにもうちょっと渋味が出てきたらドル三部作のどれかのリメイクとか有るだろうか。THE男の作品だから今の時代には無理か。娘さんの誰かの方が可能性は高いのかも。



『フォロウィング 〈25周年/HDレストア版〉』 1998年、イギリス、1時間10分。を観た。
作家志望で無職のビルは題材探しと暇潰しで目についた通りすがりの人物の後をつける事に没頭していた。いつもの様に見知らぬ男の後をつけカフェに入るとしばらくして男はビルの近くに座り直しビルが後をつけていた事に気付いていたと言う。

シネマロサにて。

クリストファー・ノーラン監督のデビュー作。デビュー作から既に手が込んでいて一貫している。監督自身も気難しい人のイメージが有ったけど、数多くインタビューしている渡辺麻紀さんが書いている記事等を読むと本人は礼儀正しくて作品とは違って素直な好人物らしい。意外と言っては失礼だろうか。

主要な出演者は本作以降見かけないなと思っていたがビルを演じたジェレミー・セオボルトとファム・ファタールのルーシー・ラッセルは本作以降も役者を続けていてクリストファー・ノーラン監督作品にも数は少ないが何本か出演している。ビルに尾けられた男コッブを演じたアレックス・ハウの映画出演作は本作だけみたい。元々が建築を学んでいて、そして役者ではなく建築家になったらしい。



『アイアンクロー』 2023年、アメリカ、2時間10分。を観た。
日本マットでも活躍した鉄の爪フリッツ・フォン・エリックには四人の息子がいた。自身が果たせなかったNWA世界王者の夢を息子たちに託し厳しい指導を行っていた。

息子たちの身に起きた事から呪われた一家とも呼ばれていた。呪われているとかそんなオカルトな事ではなくてはっきり言って現実的に異常な事だと思う。実は兄弟はもう一人一番下の弟がいるのだとか。長男は幼い頃に亡くなっているので六男という事になる。プロレスラーとしてはフォン・エリック兄弟の五人目。その五人目の方も…。
そういう異常な事態になった原因がきっと有るはずで、本作を観てもなんとなくこの人が元凶なんだろうなとは分かるけどこの映画の中で糾弾される事は無く、なんとなく全てがいい思い出になっていて(家族と共にいたいという夢が実現出来ていたという意味で)、それでいいのだろうか?と思わないでもない。それが家族を愛していた長男(実際には次男)の優しさなのかもしれないけど。
プロレスをそんなに熱心に見ているわけではないけどプロレスという職業、職業と言っていいのか分からないがその道で生きるのはとても厳しい事なのだろうとは常に思ってはいる。トッププロレスラーとなれば、そしてトップで居続けるためには常に観客を驚かせる様なパフォーマンスを見せなければならずそのためには肉体も酷使しなければならないし精神的にも疲弊するだろうし。それを家族という近い距離の人間関係の中で強いた事が悲劇を生んでしまったのだろうか。

プロレスのシーンは思っていたより少なかった。出演者がみんな肉体を鍛え上げていただけにもっと見たかった。
伝説のプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックをはじめフォン・エリック兄弟の実際のプロレスを見た記憶は無いのでどんなファイトスタイルなのかも知らないが一家に共通する決め技が代名詞であるアイアンクローだとしたらそんなに派手な感じでは無いような気がする。実力は当然有ったんだろうけど。
全日本のマットでフリッツ・フォン・エリックと激戦を繰り広げたジャイアント馬場さんのアイアンクローを封じるための秘策がこめかみを掴まれない様に顔の前で拝手の形を取るというものだったけど、そしたら腹を掴まれてそれがストマッククローの始まりだったとビートたけしさんが漫談のネタにしていたのは覚えている。本当の話なのかは分からないが。

昨年11月16日にオープンしたkino cinema新宿にて。半年近く経ってようやっと。トイレはポパイがお出迎え。
新宿文化シネマ、新宿ガーデンシネマ、角川シネマ新宿、EJアニメシアター新宿と館名は変遷したけど映画館の雰囲気は新宿文化シネマの頃からそんなには変わっていない。ロビーが小綺麗になっているくらいか。
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