SSブログ

『ザ・タワー』『蘇える金狼 4Kデジタル修復版』『野獣死すべし』『12日の殺人』 [映画]

『ザ・タワー』 2022年、フランス、1時間29分。を観た。
フランス。団地の一棟の周囲が暗闇に包まれ電波も届かず何もかもが遮断される。団地に存在する様々なコミュニティはそれぞれで結束し、そしてそれぞれと対立し始める。

SFとして観たかったがヒューマンドラマとして描かれていた。
ラストは藤子・F・不二雄先生のSF(少し不思議)作品の一編にも有ったような感じだった。終わる時ってあんな感じなのだろう。
不条理SFとも言えるがSFだから不条理という事ではなく現実でも不条理な事は多々有る。宇宙で起きる事なんて人間にとってはまだまだ想像も理解も出来るものではないだろうし近年の異常気象もこれから起こるかもしれない事のほんの一端に過ぎないのかも。その一端の時点で大きなダメージを受けてしまうけど。



『蘇える金狼 4Kデジタル修復版』 1979年、日本、2時間11分。を観た。
東和油脂に勤務する朝倉哲也は真面目な勤務態度により同期の中でも出世を見込まれていた。しかしその裏では金のためならどんな非道な事も厭わない別の顔を持っていた。

k's cinema。"生誕75周年記念特集上映 角川シネマコレクション 松田優作の狂気"にて。角川と大映の出演作の上映?
この特集上映が角川シネマ有楽町で上映されていた同時期に丸の内TOEIで東映の出演作11作品が特集上映された"東映classics松田優作"が有ったけどそちらには行けなかった。9月が誕生月なのでその頃にまた何かしらの上映が有るだろうか。

昔は地上波のゴールデンタイムでテレビ放送もされていたがその時にはちゃんと観た事は無かった。映画、テレビドラマで優作さんの出演作をちゃんと観たものと言えば『ブラックレイン』くらいかも。むしろ竹中直人さんの物真似の方が印象が強かったと言ってもいい。竹中さん以前にも優作さんの物真似をする人はいただろうけど竹中さんのそっくり具合はそれまでに見た事の無いレベルだったと記憶している。あとブルース・リーとかも。ブルース・リーは形態模写か。顔真似でいうと遠藤周作、芥川龍之介、松本清張。あいうえおを感情を込めて言う人、笑いながら怒る人も斬新だった。

優作さんカッコ良かった。会社勤めの時の真面目な男を装っている時でもカッコいい。
優作さん以外の方たちもカッコ良かった。役柄的にはカッコ良くはないけど。ミッキー、小池朝雄さん佐藤慶さん。千葉ちゃんが主役以外で出てるのはあんまり観た事が無いので新鮮だった。

ハードドボイルドなのかなと思っていたけどピカレスクだった。己の欲望だけが行動の理念。
なので画面にはおっぱいがいっぱい。昔の日本映画、日本だけに限った事ではないかもしれないがおっぱいは必要不可欠だった。お金とおっぱい、そういった欲望を最優先させ、それがいくらかは許されていた時代の作品。



『野獣死すべし』 1980年、日本、1時間58分。を観た。
通信社の記者として数々の戦場を経験してきた伊達邦彦。日本に戻ってからは銀行強盗を企むが一人で行うには無理と判断しこれと思った人物に接触を試みる。

k's cinema。"生誕75周年記念特集上映 角川シネマコレクション 松田優作の狂気"にて。

『蘇える金狼』とはまた違った大スターの風格を持っていながら個性的な演技派でもある優作さんの魅力が見れる。
時代は日本が平和ボケと言われるようになった頃だろうか。1980年の時点で戦後から35年。『蘇える金狼』でも描かれていた利己主義な人間が増えてそこに伊達邦彦は鉄槌を喰らわそうと思ったのだろう。そのやり方にかなり問題が有ったけどそのやり方しか出来ない伊達邦彦もまた利己主義な人間だったと。

室田日出男さんがカッコ良かった。観ていてジョシュ・ブローリンと重なって見えた。優作さん、ミッキー、室田さんら鬼籍に入られた方が多い。皆さんもう少し長生きしてほしかった。渋くてカッコ良くて面白いおじさんたちの系譜が続いていたら現在の日本映画も大分違うものになったのだろうと思わずにいられない。



『12日の殺人』 2022年、フランス=ベルギー、1時間54分。を観た。
山あいの町の道端で焼死体で発見された女性。他殺の可能性が高く警察は抜かりない捜査を続けるが犯人を特定出来ずにいた。

警察が犯行を明るみにして犯人を捕まえるためには執念、執着心が必要なのだろうと思う。その執着心を生み出すのには心に刻まれる様な忘れられない事件が必要なのではないか。解決未解決に関わらず。そういう刑事ドラマの見すぎでドラマチックに考えすぎなのかもしれない。
本作はドラマチック性を抑えめにして刑事達の日常、人間性も描かれていて良い映画だった。
コメント(0)