過速スキャンダル [2010年2月に観た映画]
『過速スキャンダル』
(2009・韓国) 1h48
監督・脚本 : カン・ヒョンチョル
出演 : チャ・テヒョン、パク・ボヨン、ワン・ソクヒョン
30代半ばの人気(?)ラジオDJナム・ヒョンス。身に覚えの無い娘と孫が家に押しかけてきた。
ネタバレあり。
芸能人はスキャンダルが命取り。隠し子、ましてや隠し孫などとんでもない。その事実をひた隠そうと策を弄するナム・ヒョンス。
って事でドタバタなアットホームコメディが展開されます。
まあ、なんだっつったら古くは『おくさまは18歳』みたいなお話しなわけで。
30代半ばの男に二十歳そこそこの隠し子、おまけに隠し孫。って所が斬新と言えば斬新。しかしコメディとしては定番中の定番な感じは否めず。安心感は有るが意外性は無い。
と、冷めた感じで観てたのに、ヒョンスが父として、祖父としての自覚に目覚める辺りからしっかりと感情移入して楽しんでる自分がいました。
さすが韓国コメディ映画史上ナンバーワンヒット作。
人気(?)DJのスキャンダルは暴露されてしまうのか?
当然クライマックスはそこに突き進んでいきます。
クライマックスまでの盛り上げ方は完璧と言ってもいいかもしれない。しっかり感情移入してるので。
後はもう普通にやってりゃ気持ちのいいハッピーエンド。のはず。
結果、期待通りのハッピーエンドで充分良かったのだけど。それで満足するべきなのだろうけど。
いい当たりだったのにスタンドに届かずフェンス直撃の3塁打。な感じ。
余裕の3塁打。3塁ベース上でガッツポーズに歓声をあげるべきなのだろうか。でも、もうちょっとでホームランだったのに・・・。という思いもどこかに残る。
ゴールデンスランバー [2010年2月に観た映画]
『ゴールデンスランバー』
(2009・日本) 2h19
監督・脚本 : 中村義洋
出演 : 堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、濱田岳、香川照之、ベンガル
首相暗殺の濡れ衣をかけられた男が必死に逃亡する。
ネタバレあり。
強大な国家権力に罠をかけられ弄ばれる一庶民。その強大な力に抗えるのは人と人との信頼の絆だ。
って事で、ラストは国家権力に庶民がガツンと一撃喰らわして、国家権力にギャフンと言わせる。
みたいな感じを予想していたのだけど。と言うか期待していた。
結果そういう事にはならなかったので、なんともスッキリしなかった。
観終わってからしばらくして考えてみると、権力の罠にかけられた男がその罠からまんまと逃げ、尚且つ事件が起こった現場近くで普通に暮らしている。って所がこの物語のミソなのかなぁ。と思えるようになってきた。
でもそれってなんか悲しい。
普通に暮らしているとは言え、以前の生活には戻る事は出来ないわけで。それは主人公にしても主人公の周りの人にしても。要は泣き寝入りに近い状態。
やっぱり国家権力にギャフンと言わせて欲しかった。
思うにこれは逃亡劇であって、復讐劇ではないという事だろうか。
仙台を巨大な刑務所に見立てた脱獄映画。と考えて観るべきなのかも。
刑務所から脱獄した男が誰も気付かないけど実はまだ刑務所にいた!
脱獄映画としてかつて無いそのプロットは面白い。その面白さを追求して欲しかった。
実はそこにいた!なオチは『インサイド・マン』も有りますが、『インサイド・マン』の場合はギャグスレスレな所も無きにしも非ずで。
パレード [2010年2月に観た映画]
『パレード』
(2010・日本) 1h58
監督・脚本 : 行定勲
出演 : 藤原竜也、香里奈、小出恵介、貫地谷しほり、林遣都、正名僕蔵
気兼ねの無い共同生活をおくる男女4人。その気兼ね無さの裏には何かが潜んでいた。
ネタバレあり。
深遠なる問題作。という事で興味を持って観ました。
深遠でした。そして面白怖かった。
誰しもが心の中に闇の部分を持っているものですが。多かれ少なかれ、深かったり浅かったり、どす黒かったり薄暗かったり。
登場人物たちも表面的には共同生活を面白おかしく過ごしているかのように見えるものの、実際は全員が闇を抱えている。
しかしこの映画の中においてその闇は敢えて表面的な所しか描かれず、闇の深部は見えてこない。
それは現代社会においては、お互いがお互いの闇に敢えて踏み込まず、例え闇が露出したとしても見て見ぬ振りをする。なので闇の深部は見えることが無い。という事を表しているかのよう。
闇に踏み込まない。それ以前にお互いが一定の距離より中に踏み入れない。入れさせない。それが現代社会で生きるルール。
その怖さが映画的面白さへと結びつくラストは秀逸でした。
藤原さん今回は暑苦し汁が少なめだった。
と思ったら、最後の方はやっぱり暑苦し汁大量に放出。笑った。
もはや藤原さんは暑苦しくないと、藤原さんではないような気がしてきた。
フローズン・リバー [2010年2月に観た映画]
『フローズン・リバー』
“FROZEN RIVER” (2008・アメリカ) 1h37
監督・脚本 : コートニー・ハント
出演 : メリッサ・レオ、ミスティア・アッパム、チャーリー・マクダーモット、ジェームズ・ライリー
生活に困窮する女性が犯罪に手を染めていく。
ネタバレあり。
これ絶対に救いの無い方向に突き進んでいくんだろうなぁ。と思っていたのですが、そうではなかった。ので良かった。
かと言ってハッピーエンドとは言えず。
あの人たちの人生が好転するわけも無く、せいぜい良くて現状維持。ただ、悪い方向には行かなかっただけでも良かった。
それは凍った川を渡る事によって、主人公のレイ(メリッサ・レオ)は不法移民の密入国という犯罪の一線を越えてしまったわけだけど、最後の身に迫った危機の時では凍った川の前で踏みとどまった。
それは人として越えてはならない一線だったのだと思う。
そこで踏みとどまった事が、悪の道への転落。の事態を回避できたんじゃないだろうか。
レイが最後の一線を越えなかったのは母性によるもののように思える。
レイもレイの犯罪の相方ライラ(ミスティ・アッパム)も子供に対してはとても優しい。
子供を愛するが故に一線を越える事は出来なかったのではないだろうか。
反抗期真っ只中のレイの息子のTJも弟に対してとても優しいのは、コートニー・ハント監督の子供に対する優しさの表われなのかもしれない。
子供には希望の有る未来が有るはずで、その未来を守ったのは母親であった。そういった映画だったように思う。
どよーんとしたドロ沼映画を想像していただけに、ハッピーエンドとは言えないけど微かに明るいラストは清々しいものが有った。
ライラ(ミスティ・アッパム)とレイ(メリッサ・レオ)
ミスティ・アッパムは見た目和田アキ子さんの3割増し(面積的に)。といった感じですが、実は声がメチャクチャ可愛い。
ダーティファイターとダーティファイター/燃えよ鉄拳 [2010年2月に観た映画]
『ダーティファイター』
“EVERY WHICH WAY BUT LOOSE” (1978・アメリカ) 1h55
監督 : ジェームズ・ファーゴ
出演 : クリント・イーストウッド、ジェフリー・ルイス、ソンドラ・ロック、ビヴァリー・ダンジェロ、ルース・ゴードン
ケンカは強いが女にゃ弱いファイロ・ベドー(クリント・イーストウッド)。
町にやって来たカントリーシンガー、リン(ソンドラ・ロック)に一目惚れ。
二人いい感じになったと思ったある日、不意にいなくなるリン。
オランウータンのクライドと、人間のオーヴィル(ジェフリー・ルイス)を引き連れてリン探しの旅に出る。
『ダーティファイター/燃えよ鉄拳』
“ANY WHICH WAY YOU CAN” (1980・アメリカ) 1h55
監督 : バディ・ヴァン・ホーン
出演 : クリント・イーストウッド、、ジェフリー・ルイス、ソンドラ・ロック、ルース・ゴードン、ウィリアム・スミス
ケンカは強いが女にゃ弱いファイロ・ベドー。
リンが再び町にやって来て、やっぱりいい感じになる二人。
時を同じくしてファイロに大金絡みでマフィア絡みのビッグファイトのオファーがやってきたが、ドタキャンしたためリンが誘拐される。
クライド、オーヴィルを引き連れてリン救出へと向かう。
テレビではチラッと見た事が有るけど、オランウータンが相棒。という所で長らく観てこなかったイーストウッドのアクションコメディシリーズ。
オランウータンとはそんなにがっちりとしたコンビという感じではなかった。マスコット的存在。
人間と類人猿のコンビは、『スターウォーズ』のハン・ソロとチューバッカからの影響なんだろうか?
そのオランウータンが可愛いかった。かなりの芸達者で場を和ませてくれる。
そもそもがイーストウッドのスター映画なのでほぼ何でも有りの映画。
ド突き合いのケンカ、カーチェイス、爆発、ロマンス、友情、カントリーソング。『燃えよ鉄拳』の冒頭ではイーストウッドとレイ・チャールズのデュエットも聴ける。
ゆるい感じのカオスの様相を呈しながらも、それらは全てイーストウッドを中心として巻き起こるのでイーストウッドの映画として成り立っている。
言わばイーストウッドワールド。イーストウッドの夢の国な映画。
この映画を楽しめるのかどうかが真のイーストウッドファンへの関門ではなかろうか。
かろうじて楽しめた。オランウータンによる所が少なからず有った。ありがとうオランウータン。
昔は、続編に成功作無し。と評価されてきましたが、それって続編が公開される時に前作を観れる機会が今ほど無かったから。という所も有るんじゃないだろうか。
前作を意識して作っている部分も有るだろうから、前作を観ていなかったり、忘れていたりすると面白くないだろうし。
だから続編を続編のみで評価すると失敗作という事になるわけで。でもシリーズを通してみればちゃんと楽しめる作品になっているのだと思う。
このシリーズ(と言っても2作品だけど)も続編の方がお約束ギャグもふんだんに入っていて楽しめた。
更なるシリーズ化も出来たと思うけど2作品で終わってしまったのが残念。
ジェイソン・ステイサム主演でリメイク、シリーズ化。ってのは有りじゃないだろうか。製作はリュック・ベッソンのヨーロッパ・コープで。
なんかジェイソン・ステイサムならオランウータンとの共演を引き受けそうな気がするし、リュック・ベッソンならこのシリーズのゆるい持ち味を壊さずにリメイク出来そうな気がする。
リアリティ・バイツ [2010年2月に観た映画]
『リアリティ・バイツ』
“REALITY BITES” (1994・アメリカ) 1h39
監督・出演 : ベン・スティラー
出演 : ウィノナ・ライダー、イーサン・ホーク、ジャニーン・ガロファロ、スティーヴ・ザーン
さる2月14日にザ・ナックのボーカル、ダグ・ファイガーさんがお亡くなりになられました。
ザ・ナックと言えば「マイ・シャロナ」(しか知らない)。「マイ・シャロナ」と言えばこの映画。
これ観てなかったなぁ。という事で観ました。
「ジェネレーションX」と呼ばれていた世代の若者たち。その等身大の姿を描いたラブストーリー。
って感じで公開当時、宣伝されていたように記憶しています。
ベン・スティラーが監督という事で、ひねりの有るラブストーリーなのかと思ってましたが、かなり普通なラブストーリーでした。
ビデオカメラの映像を使う所などは当時は斬新だったのだろうか?
しかし、今観てもまだ色褪せていないのは、出演者の好演による所が大きい。
当時の世相や風俗を織り交ぜながら、若者たちの等身大の姿を描く事が目的だったのではないかと思う。
テレビっ子世代、ビデオカメラの普及、エイズの蔓延、就職難、自分探しを続ける若者。など。
今観てみると、そんな感じだったのかなぁと思うし、今もあまり変わってないんじゃないだろうか。とも思える。
ベン・スティラーはやや嫌味な感じのヤッピー役でも出演。
恐らくこれで初めて見たら第一印象かなり悪かったと思う。
初めて見たのが多分『アメリカの災難』。で、色々と観てきて「ベン・スティラー、面白い」の決定打が『ズーランダー』。
そろそろ『ズーランダー』以上のものを観てみたい。
ウィノナ、ノーブラ?なシーンでは思わず画面を凝視。
ベン・スティラーが「ウィノナ、ここはノーブラで。」と指示を出したんだろうか?
いい趣味してる。
アバター 2D [2010年2月に観た映画]
『アバター』
“AVATAR” (2009・アメリカ) 2h42
製作・監督・脚本・編集 : ジェームズ・キャメロン
出演 : サム・ワーシントン、シガーニー・ウィーヴァー、スティーヴン・ラング
映画を新たなステージへと導く作品。というもっぱらの評判なので、それに乗り遅れてはならぬ。と、2Dで観てみました。
前回観た時ほど腹は立ちませんでした。内容をいい感じに忘れていたので、始まって30分ぐらいはワクワク感も有った。
CGが確かに凄かった。SFファンタジーCGアニメ映画として観れば確かに新たな次元の映画なのだろうと思った。
でもそのCGに途中で飽きた。アクションシーンや、キャラクターの感動的な場面をCGまみれで見せられてもなぁ。と思う。
これがジェームズ・キャメロン監督ではない誰か他の監督のCGアニメだったとしたら、長い映画だなぁと思うだけかもしれないけど、本作は実写映画なのであって、それもCG無しでも迫力の映像を撮れる稀有な監督ジェームズ・キャメロンの。それがここまでCGまみれだと感動、興奮する以前に残念に思えて仕方が無い。
3Dと2Dの違いはほとんど分からず。3Dで観た時に特に印象に残ったシーンが無かったので、最初のシーンの冷凍睡眠機の中の水滴が3Dだったんだろうなぁ。と気付いたぐらいでした。
なのでIMAXでも観てみようかと思ったけど、もういいかなぁとも思う。どうせ途中で飽きるだろうし。でも吹き替えで観るとまた印象が違うのだろうか?それが気になる。映画の新たなステージに行ってみたいし。
アバター用のズボンには尻尾用の穴が開いていた!
それがどうなっているのか気になってそこばかり見ていたけど、最後人間たちがパンドラを後にするシーンでようやくはっきりと分かりました。
ズボンに穴が開いているという事は、当然下着にも穴が開いている!
考えてみると現地にはアバター用の服を作る人も行っているんだろうか?
アンドレサイズの服を作る人が。
単に地球で作ったものを持っていっているだけだろうか?
多分アバターのプロジェクトって超極秘だったのだと思うけど、あの服を発注された服屋さんって「この馬鹿でかい服は何なんだ?でもってなんでケツの所に穴を開けなきゃならんのだ?」と思いながら作っていたんじゃないだろうか。
でもあれだけの規模の使節団(調査団?)なら様々な職種の人もそこには行っている気がする。料理人だったり、散髪屋だったり、歯医者だったり。
科学が進歩しているからそういった人たちは必要ないのだろうか?
そんな人たちも同行していたとして、例えば仮に服を作るためだけに、往復12年以上掛かる未知の星へと旅立ったその人の気持ちはどのようなものだったのだろう?
なんか3部作としての構想も有るようで。だとしたらそういう人たちの姿も見てみたい。
でもジェームズ・キャメロンが素直な続編を作るとも思えない。本作とは全く別角度の別の作品を作りそうな気がする。
想像するのは、アバターはどう考えても兵器化の道を辿るのだと思う。あれだけのアンドレ級パワーがあるのなら。
そうなると考えられるのは人間同士のアバター戦争の勃発。なんにしろ人間は戦争をする。
時間短めCG少なめで観てみたい。
主人公が契りを結んだ怪鳥。
あれ一人に一羽だって言ってんのに、主人公都合のいい別の怪鳥に乗り換える。
突然つながりを外されて別の怪鳥に飛び乗る主人公を見送る。って悲しすぎ。
それでもあの怪鳥は主人公が自分の元に帰ってくるのをどこかの浮遊島でじっと待っているのだろうか。なんか不憫。
最初に契りを結んだ怪鳥が実はもの凄い怪鳥だった。という展開は考えなかったのだろうか?
最初からそんなの頭に無い。いいのがいたらそっちに乗り換える。のがジェームズ・キャメロンって事だろうか。
と、ジェームズ・キャメロンの私生活と重ね合わせてしまうのは、虚構と現実をごちゃ混ぜにしすぎだろうか。
処刑山 -デッド・スノウ- [2010年2月に観た映画]
『処刑山 -デッド・スノウ-』
“DΦD SNΦ” (2007・ノルウェー) 1h31
監督・脚本 : トミー・ウィルコラ
出演 : ヴェガール・ホール、ラッシー・ヴァルダル、ヤップ・ベック・ラウセン
休暇を雪山で過ごそうとやってきた男女8人。その雪山にはナチスの怨念がこもっていた。
一目見て残念だったのがフィルムではなくデジタルだった事。それもいかにもデジタルなツルンとしたキレイさのデジタル。
↑のポスターの様なザラついた映像で観たかった。
と、思ったのは本作が真面目なゾンビホラーだと思っていたからで、実際はゾンビコメディでした。IMDBにもallcinemaにもホラー、コメディとして分類されていた。
なので最初の内はなんかヘンだなぁと思っていても笑っていいものなのか悩みましたが、どんどんヘンな事になってくるので笑っていいものなんだと分かりました。
ゾンビに噛まれたらゾンビ化する。ゾンビ映画の鉄則ですがこのゾンビ、ナチス。対する人間はユダヤ系。
ナチスのゾンビが果たしてユダヤ人を仲間のゾンビにするのか?
この過去の歴史を笑い飛ばすような大胆さが面白い。
ツルンとしたデジタルも、ナチスゾンビがワラワラと雪山のそこいら中から現れだすと、真っ白な雪山、どす黒いナチスの軍服、真っ赤に滴る鮮血のコントラストが見事に決まってカッコよかった。
おとうと [2010年2月に観た映画]
『おとうと』
(2009・日本) 2h06
監督・脚本 : 山田洋次
出演 : 吉永小百合、笑福亭鶴瓶、蒼井優、加瀬亮、加藤治子、小日向文世、石田ゆり子、近藤公園
出来のいい姉と出来の悪い弟の話。
これ何の話なんだろう?と思いながら観てました。
観終わって分かったのは、吉永さん主演の映画だった。
だからどこか優等生的。
その優等生的雰囲気を壊すのが出来の悪い弟。
その弟は愛すべき迷惑者として存在しないとこの映画は成り立たない。
でも弟が愛すべき存在だったかと言うと、愛せなかった。
例えば幼少時代、少年時代、青年時代のエピソードを見せてくれれば姉弟愛がより伝わってきて愛せたのかもしれない。しかし、見れるのは初老のはた迷惑な男の醜態だけ。
そこを笑福亭さん自身のキャラクターをもってしてカバー出来れば良かったのだけど、笑福亭さんに特に何の思い入れのない自分が見た場合、やっぱりただの迷惑者にしか見れなかった。
だから本作のカギを握るのは笑福亭さんなのだと思う。
しかしこれは吉永さん主演の映画だから、あくまで吉永さんがメインでなければならないし、吉永さんをより長くスクリーンに映さなければならない。
それ故に吉永さんの登場しない幼少時代から青年時代も描けないし、弟の内に秘めていたであろう思いも長い時間をかけて深い所まで描ききれなかったのではないかと思う。
優等生と愛せない迷惑者。このチグハグ感が終始付きまといましたが、ラストはちゃんと吉永さん主演の映画として締めくくる。
ベテランの技だなぁと思いました。
(500)日のサマー [2010年2月に観た映画]
『(500)日のサマー』
“(500) DAYS OF SUMMER” (2009・アメリカ) 1h36
監督 : マーク・ウェブ
出演 : ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、クロエ・グレース・モレッツ
不思議ちゃんに翻弄されまくりの男子ホロ苦成長物語。
ネタバレあり。
『きみに読む物語』は速球ド真ん中で勝負する本格派ラブストーリーでしたが、本作は多彩な変化球とコーナーワークで翻弄する技巧派ラブストーリー。
ヒョロリヒョロリとかわしてかわして、最後オチでズバッとストレートを投げ込む。ビシッと決まった。やられた。
でもあれってハッピーエンドに見せかけて、新たなホロ苦恋物語の始まりの様にも取れる。
『(?)日のオータム』。
秋、冬、春。と来て、10年ぐらいしてまた夏に戻ったりしたら面白そう。
ストーリーは至って普通なラブストーリーだと思う。普通に作ったら普通のラブコメになっていたかもしれない。ジム・キャリーとかベン・スティラーが主演だとドタバタなラブコメ。
それを様々なアイデアとテクニックを駆使して、オリジナリティ溢れる雰囲気の中で、若者男子がちょっとだけ成長する素敵な映画へと昇華させたのはさすがとしか言いようがない。
特にジョセフ・ゴードン=レヴィットの有頂天ダンスのシーンはその有頂天っぷりが楽しい。
もうちょっと長めに見たかった。
これくらい。
ユキとニナ [2010年2月に観た映画]
『ユキとニナ』
“YUKI & NINA” (2009・フランス=日本) 1h33
監督・脚本 : 諏訪敦彦 監督・脚本・出演 : イボリット・ジラルド
出演 : ノエ・サンピ、アリエル・ムーテル、ツユ
両親の離婚。子供の世界を揺るがす一大事件を目の前にして、少女が起こした行動は。
ネタバレあり。
子供の生態観察ドキュメンタリー的ドラマ。
両親の離婚に際して、子供は子供なりに懸命に考え行動を起こす。
子供なりの行動ゆえに大人の事情を変えるまでには至らず(時と場合によっては変えられるのかもしれないけど)、大人の事情に従わざるを得ない。
でも、そんな大人の事情にもすんなりと順応してしまうのが子供。
子供って見た目か弱く見えるけど、実は大人よりも強いのかもしれない。
それは現代っ子にしても。現代っ子には現代っ子なりの強さが有る。
今の時代両親が日本とフランスで離れ離れになったとしても、ネットで常に繋がっているし、お金の事を考えなければ飛行機で1日も経たずに行けてしまう。
それらを取り入れ、利用して子供たちは強く生きてゆく。
考えてみるとこれは、『かいじゅうたちのいるところ』の女の子版と言えるかもしれない。
男の子の場合船に乗ったらかいじゅうたちのいるところに着いちゃったけど、本作の女の子はトトロでも出て来そうな森を抜けるとそこには・・・。
あれが男の子と女の子の差なのかなぁと思う。
きみに読む物語 [2010年2月に観た映画]
『きみに読む物語』
"THE NOTEBOOK” (2004・アメリカ) 2h03
監督 : ニック・カサヴェテス
出演 : ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ、ジェームズ・ガーナー、ジョーン・アレン、ジェームズ・マースデン、サム・シェパード
ノアとアリー。2人は運命の恋人。
劇場公開時はラブストーリーという事で敬遠しましたが、ニック・カサヴェテス監督の『私の中のあなた』が、感動実話系のドラマでありながら、お涙頂戴にしなかった作風が好感だったので、本作ももしかしてラブストーリーでありながら、何か違う観せ方をしてくれるのではないか。と期待して観ました。
早稲田松竹にて。ネタバレあり。
観たら『私の中のあなた』とは全く違う、観てて気恥ずかしくなるくらいのド直球な大河純愛ロマンスだった。
それは徹頭徹尾。エンドロールが終わるまで全てが純愛ロマンス。
しかし、これくらいド直球だと観ていて清々しさも感じる。
運命の恋の始まりから終わりまで全てを真っ正面から正攻法で描ききる。その腹のくくり方の潔さも含めて清々しい。
若かりし頃の2人を演じるライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが良かった。
しかし、ライアン・ゴズリングはラースのイメージしかなかったので、本作では見た感じラースの時の3分の2ぐらいの細さで驚いた。
あの2人(←の2人ではなく)が年を取ったらジェームズ・ガーナーとジーナ・ローランズになるのは強引な気がしたけど。
疑問に思ったのは、中盤辺りで2人の恋の結末ネタバレな所が有ったけど、ノアとアリーの子供が現れて。あれってどういう意図で子供を出したんだろう?
観客に深読みさせるためだろうか?子供だけど実の子供ではないのでは?みたいな。顔が全然似てなかったし。
かずら [2010年2月に観た映画]
『かずら』
(2009・日本) 1h34
監督・脚本 : 塚本連平
出演 : 三村マサカズ、大竹一樹、芦名星、麿赤兒、丘みつ子
森山茂35歳。先祖代々の薄毛体質に悩む日々。
薄毛ネタ、カツラネタで押し通すコメディ。
面白かった。
コメディ映画としての出来がかなり良かったです。何よりさまぁ~ずのお二人が面白い。
間、表情、佇まい、言葉のチョイス。どれも素晴しくて笑える。
大竹さんのマニアックさと、三村さんの大衆性。それが見事に映画にマッチしている。
さまぁ~ずのお笑いは映画との相性が良いのかもしれない。
コンプレックス克服ムービー。という事ですが、克服したのか。って言ったら微妙な感じ。
たまたま理解の有る人がそばにいて。という感じだから。
だから周りが偏見を持たずに理解するべし。って事なのかもしれない。
立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。
女性のお客さんがほぼ9割近かったような。
さまぁ~ずって女性の人気が凄いんだなぁ。と思っていたら、この日はレディース・デイだった。
他の日はどうなんだろう。
海角七号/君想う、国境の南 [2010年2月に観た映画]
『海角七号/君想う、国境の南』
”海角七號” (2008・台湾) 2h10
監督・脚本 : ウェイ・ダーション
出演 : ファン・イーチェン、田中千絵、リン・ゾンレン、マー・ニエンシエン、ミンション、イン・ウェイミン、マイズ、中孝介
第2次大戦終戦によって引き裂かれた一組の恋人。
男の想いを綴った手紙が、現代の台湾で急遽バンドを組む事になった男女と結びついてゆく。
ネタバレあり。
前半の古臭くてベタベタなギャグの連打にあまり笑えずどうしようかと思いました。
が、いつの間にかギャグはベタではあるものの、ちゃんとギャグとして機能して笑えるものになっていた。琴のじいさんがいい味出しておいしい所持って行ってました。
全体としては、60年以上前でも現代でも根本的には人の想いが変わる事はあるまい。といった良いお話でした。
引き裂かれた恋人たちが現代のバンドメンバーと実は・・・。
といった関連性は薄く、そこらへんが物語としては弱い所かと思います。
想いを綴った手紙が現代のバンドによって一つの曲として蘇る。って所が物語の核なのかも。
エンドロールが台湾観光CMのようなのが残念。
良いお話しだったなぁ。という思いが薄れてしまった。
インビクタス/負けざる者たち [2010年2月に観た映画]
『インビクタス/負けざる者たち』
"INVICTUS” (2009・アメリカ) 2h14
製作・監督 : クリント・イーストウッド 製作総指揮・出演 : モーガン・フリーマン
出演 : マット・デイモン
1995年、ラグビーW杯。
南アフリカの黒人初の大統領ネルソン・マンデラ氏は国の統合の悲願をW杯に託す。
良かった。何よりスポーツ映画として素晴しい作品だった。
前半は人種差別政策アパルトヘイトからの完全なる脱却、そして南アフリカの真の統合のため粉骨砕身働くネルソン・マンデラ大統領の姿を描き出し、後半はその願いがスポーツを通して叶えられる様を感動的に描く。
イーストウッドがこんなに若々しく猛々しい、そしてあれほど爽やかな幕切れのスポーツ映画を撮るなんて思ってもみなかった。
年齢の事はもうこの際どうでもいいのかもしれないけど、しかしながら今年で80歳にして今までとは全く違う作風の映画をさらりと作ってしまう。
なんだろうかイーストウッド。凄いとしか言い様が無い。
もう2010年度キネマ旬報ベスト10第1位確定。と断言してもいいかもしれない。
南アフリカの事に関してはあまりよく知らないけど、本作で描かれているそれまでの価値観が全て逆転した社会。それを一つにまとめ上げるためには寛容な心、赦しの精神が大切なのだとネルソン・マンデラ氏は説いている。
赦しの精神。『ラブリーボーン』でもそれが大切なのだと言われているけど、「赦し」は今の世界での重要なキーワードという事だろうか。
『ラブリーボーン』より本作の方が説得力が有ったのは、モーガン・フリーマンの存在感の大きさによる所なのかもしれない。