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『アビス』 [映画]

『アビス』 1989年、アメリカ、2時間20分。を観た。
カリブ海ケイマン海溝付近で米国海軍の原子力潜水艦モンタナが沈没する。ハリケーンの接近で猶予の無い政府は近海で操業中の移動式海底油田採掘プラットフォームディープコアの乗組員達に救助の協力を要請する。

ブルーレイが発売されたので購入。久し振りに観た。ブルーレイ化されるのは今回が初めてらしい。どちらかというと完全版(171分)の方がメイン扱いで劇場公開版はオマケ、ついでみたいな感じなのだろうと思う。確かに完全版の方が社会的なメッセージ性は強くなっているのかもしれない。劇場公開版は突然にファンタジー要素が強まり過ぎなのかもしれない。だとしても最初に観たのが劇場公開版なので(劇場では観ていない)もはや刷り込みに近い形で劇場公開版の方が好き。
ところで、劇場公開版、完全版という風に区別されているが完全版の方も劇場公開はされている。『エイリアン2』や『ターミネーター2』の完全版は劇場公開されていない?

さすがブルーレイは画質がめちゃくちゃ良かった。我が家の貧弱な再生設備でも納得の美麗。

1989年のまだCG全盛ではない頃、色んなアナログな手法を凝らしてこれだけの映像を作り上げたジェームズ・キャメロンはやっぱ凄いなと思う。そのジェームズ・キャメロンも『アバター』では積極的にCGを使うようになるのは世の流れとして致し方ない事なのかもしれない。
ディープコア内部のセットも有りものではなくて一から作り上げたのだと思うけど作り込みが素晴らしくてセット自体に説得力が有る。この経験が後の『タイタニック』に生かされるのだろう。

映画冒頭「深淵(アビス)を覗けば深淵(アビス)に覗かれるであろう」のニーチェの言葉は劇場公開版には無く完全版から付け加えられる。元々劇場公開版にも使用するるはずだったけど同時期に公開された全く別の作品にも引用されていたので被る事を嫌って削除したのを完全版で復活させたという事らしい。

今年35周年。スタッフ、キャストが集まって和やかに制作当時を語らう。なんて事は無いのだろう。いつかそんな時が来ればいいのになあと思う。


アビス 4K UHD [4K ULTRA HD+ブルーレイ] [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2024/04/10
  • メディア: Blu-ray


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『海がきこえる』『人間の証明 4Kデジタル修復版〉』『リオ・ブラボー』 [映画]

『海がきこえる』 1993年、日本、1時間22分。を観た。
1990年代初めの高知の高校生たちの青春。

初見。Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下にて。昨年が30周年だったみたいだけど何故か今年劇場上映された。

主役の男子高校生(後に大学生)のキャラクター像は『未来少年コナン』のコナンや『ラピュタ』のパズーに通じる所も有るだろうと思う。一人の女の子のために体を張って立ち向かうヒーロー。本作の場合そこまで命懸けではないけど高校生にとっての大金のやり取りや地方の高校生には冒険に近いと思われる東京行きにもほとんど臆する事はない。
コナンやパズーみたいな野生児や純真なキャラクターは恋愛に関しては奥手と言うより鈍感だったりするのが普通ではないかと思うが宮崎駿監督はそういうまどろっこしいキャラクターにはせず恋愛に関しては本能的でそしてどこまでも一途。一人の絶対的なヒロインを登場させるからそれが成立するのかもしれない。本作の場合はそこら辺はちょっと違う。男子は恋愛に鈍感でヒロインも絶対的とは言い難い。宮崎駿監督が関わっていないから当然だけど若手スタッフの方々はそこら辺は意識して非宮崎駿なキャラクターを作り出したのだろうか。非宮崎駿である事が現実的であると。
そういうキャラクターでそのキャラクターによる青春ストーリーを宮崎駿監督はどの様に評価したのだろうか?聞くも無惨にけちょんけちょんに貶す宮崎駿監督であって欲しいと個人的には思う。高畑監督は「いいんじゃないですかこれはこれで」と冷静な感想だったかもしれない。アニメーションでも日常が描け、そして日常を描く事がアニメーション作品として成立する事を示したのが例えば『アルプスの少女ハイジ』での高畑監督だろうし。
個人的にはアニメーション、実写作品に関わらず現代の溢れかえっている作品の先取りをしていた。とも言えなくはないとは思う。それがいいかどうかは別にして。
『アルプスの少女ハイジ』の時点でそういう作品を作るという事は大変な挑戦だったはず。発想が無限大であるはずのアニメーション作品はいくらでも挑戦が出来るはずで。その挑戦が本作にはあまり感じられなかった。
本作に関しては宮崎駿監督は制作現場には全くノータッチだったという事だけど本作以降スタジオジブリで高畑、宮崎作品以外での別の監督作品には積極的に介入していったという話も聞くと宮崎駿監督の本作の評価はどうだったのかを勝手に想像してしまう。
こんなのじゃなくこういうのを作れ!と示したのが後に2011年にプロデューサーと脚本を担当した『コクリコ坂から』だったりするのかも。



『人間の証明 4Kデジタル修復版』 1977年、日本、2時間13分。を観た。
東京赤坂の高層ホテルの最上階で胸をナイフで刺された黒人青年が死亡する。麹町署の刑事棟居良一が捜査班に加わる。

K's cinema "生誕75周年記念特集上映 角川シネマコレクション 松田優作の狂気"にて。

『蘇える金狼』『野獣死すべし』と観て本作の棟居刑事が今のところ一番ハードボイルドなキャラクターに思える。狂気も持っているけどその狂気を大っぴらにしない所が凄味になっていた。

戦争の傷痕が事件の根本に有ると言ってもいい。傷を負った人達が生きていた時代でその傷を隠そう、忘れようとしていた。
人間が人間である事を証明するもの、それはエゴなのだろうと思う。一人の息子を溺愛する一方でもう一人の息子には愛情も有りながら拒絶せざるを得ない。エゴによりその様な矛盾した行いをしてしまうのが人間であると。

当時のオールスター映画という事だけどその通りだなと思う。三船さん出てるし。優作さんとの芝居での絡みが無かったのが残念。
音楽が大野雄二さんなのでルパンっぽいのもオールスターと言っていいのかもしれない。

1970年代後半のニューヨークの映像はかなり貴重に思える。誰もが知っている様な場所じゃなくて今は姿が変わっているかもしれない普通の街角や治安の良くなさそうな場所で撮影している。



『リオ・ブラボー』 1959年、アメリカ、2時間21分。を観た。
犯罪者を捕らえた保安官だったがその仲間が駅馬車を破壊。移送手段が無くなり執行官の到着を待たなければならなくなった。

Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下〈濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』公開記念〉にて。
濱口監督のオールタイムでフェイバリットな作品という事でその最新作とは内容的に関係が有るのかは不明。

有名な作品だけど観た事無かった。と思って観たけど、途中でなんか観た事有るなと思って、観終わってからやっぱ観た事有るなと確信した。
内容は忘れていても観たかどうかだけは覚えている自信だけは有ったが今やその記憶ですら危うい。
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『ザ・タワー』『蘇える金狼 4Kデジタル修復版』『野獣死すべし』『12日の殺人』 [映画]

『ザ・タワー』 2022年、フランス、1時間29分。を観た。
フランス。団地の一棟の周囲が暗闇に包まれ電波も届かず何もかもが遮断される。団地に存在する様々なコミュニティはそれぞれで結束し、そしてそれぞれと対立し始める。

SFとして観たかったがヒューマンドラマとして描かれていた。
ラストは藤子・F・不二雄先生のSF(少し不思議)作品の一編にも有ったような感じだった。終わる時ってあんな感じなのだろう。
不条理SFとも言えるがSFだから不条理という事ではなく現実でも不条理な事は多々有る。宇宙で起きる事なんて人間にとってはまだまだ想像も理解も出来るものではないだろうし近年の異常気象もこれから起こるかもしれない事のほんの一端に過ぎないのかも。その一端の時点で大きなダメージを受けてしまうけど。



『蘇える金狼 4Kデジタル修復版』 1979年、日本、2時間11分。を観た。
東和油脂に勤務する朝倉哲也は真面目な勤務態度により同期の中でも出世を見込まれていた。しかしその裏では金のためならどんな非道な事も厭わない別の顔を持っていた。

k's cinema。"生誕75周年記念特集上映 角川シネマコレクション 松田優作の狂気"にて。角川と大映の出演作の上映?
この特集上映が角川シネマ有楽町で上映されていた同時期に丸の内TOEIで東映の出演作11作品が特集上映された"東映classics松田優作"が有ったけどそちらには行けなかった。9月が誕生月なのでその頃にまた何かしらの上映が有るだろうか。

昔は地上波のゴールデンタイムでテレビ放送もされていたがその時にはちゃんと観た事は無かった。映画、テレビドラマで優作さんの出演作をちゃんと観たものと言えば『ブラックレイン』くらいかも。むしろ竹中直人さんの物真似の方が印象が強かったと言ってもいい。竹中さん以前にも優作さんの物真似をする人はいただろうけど竹中さんのそっくり具合はそれまでに見た事の無いレベルだったと記憶している。あとブルース・リーとかも。ブルース・リーは形態模写か。顔真似でいうと遠藤周作、芥川龍之介、松本清張。あいうえおを感情を込めて言う人、笑いながら怒る人も斬新だった。

優作さんカッコ良かった。会社勤めの時の真面目な男を装っている時でもカッコいい。
優作さん以外の方たちもカッコ良かった。役柄的にはカッコ良くはないけど。ミッキー、小池朝雄さん佐藤慶さん。千葉ちゃんが主役以外で出てるのはあんまり観た事が無いので新鮮だった。

ハードドボイルドなのかなと思っていたけどピカレスクだった。己の欲望だけが行動の理念。
なので画面にはおっぱいがいっぱい。昔の日本映画、日本だけに限った事ではないかもしれないがおっぱいは必要不可欠だった。お金とおっぱい、そういった欲望を最優先させ、それがいくらかは許されていた時代の作品。



『野獣死すべし』 1980年、日本、1時間58分。を観た。
通信社の記者として数々の戦場を経験してきた伊達邦彦。日本に戻ってからは銀行強盗を企むが一人で行うには無理と判断しこれと思った人物に接触を試みる。

k's cinema。"生誕75周年記念特集上映 角川シネマコレクション 松田優作の狂気"にて。

『蘇える金狼』とはまた違った大スターの風格を持っていながら個性的な演技派でもある優作さんの魅力が見れる。
時代は日本が平和ボケと言われるようになった頃だろうか。1980年の時点で戦後から35年。『蘇える金狼』でも描かれていた利己主義な人間が増えてそこに伊達邦彦は鉄槌を喰らわそうと思ったのだろう。そのやり方にかなり問題が有ったけどそのやり方しか出来ない伊達邦彦もまた利己主義な人間だったと。

室田日出男さんがカッコ良かった。観ていてジョシュ・ブローリンと重なって見えた。優作さん、ミッキー、室田さんら鬼籍に入られた方が多い。皆さんもう少し長生きしてほしかった。渋くてカッコ良くて面白いおじさんたちの系譜が続いていたら現在の日本映画も大分違うものになったのだろうと思わずにいられない。



『12日の殺人』 2022年、フランス=ベルギー、1時間54分。を観た。
山あいの町の道端で焼死体で発見された女性。他殺の可能性が高く警察は抜かりない捜査を続けるが犯人を特定出来ずにいた。

警察が犯行を明るみにして犯人を捕まえるためには執念、執着心が必要なのだろうと思う。その執着心を生み出すのには心に刻まれる様な忘れられない事件が必要なのではないか。解決未解決に関わらず。そういう刑事ドラマの見すぎでドラマチックに考えすぎなのかもしれない。
本作はドラマチック性を抑えめにして刑事達の日常、人間性も描かれていて良い映画だった。
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『荒野の用心棒』『フォロウィング 〈25周年/HDレストア版〉』『アイアンクロー』 [映画]

『荒野の用心棒』 1964年、イタリア=スペイン=ドイツ、1時間40分。を観た。
二大勢力が争い支配する小さな町に一人のガンマンが現れる。抗争の巻き添えでその数を減らした町の住民たちに荒みきった現状になす術はなく、ガンマンにもこの町で生きて金儲けがしたいならどちらかの勢力に入るべきと勧めるのだった。

セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演、エンニオ・モリコーネ音楽によるドル三部作の始まりの作品は黒澤明監督作品『用心棒』(1961年)を許可なくイタリアで西部劇としてリメイクしたもの。
著作権についてもおおらかな時代だったとも言える。しかし世界的に大ヒットしたおかげで東宝にもバレて裁判沙汰になり東宝もそれなりの収入を得る事になる。

後の二作品と違って主人公の名無しの男(ジョーとは呼ばれている)に正義感が有る様な。西部劇の主人公らしさでもあるんだろうけど。台詞も多いし。マカロニウェスタンとしては正義感よりも己の信念とか流儀に忠実な後の二作品の方が合っていると思う。そういった人物設計は後のアメリカンニューシネマに影響を与えたのだろうか。

ドル三部作に話の繋がりは無いが主人公の名無しの男は薄っすらと繋がっている。本作の怪我によって次作でモンコ(スペイン語で片腕の意味)になったのかなあとも想像出来る。

実子のスコット・イーストウッドにもうちょっと渋味が出てきたらドル三部作のどれかのリメイクとか有るだろうか。THE男の作品だから今の時代には無理か。娘さんの誰かの方が可能性は高いのかも。



『フォロウィング 〈25周年/HDレストア版〉』 1998年、イギリス、1時間10分。を観た。
作家志望で無職のビルは題材探しと暇潰しで目についた通りすがりの人物の後をつける事に没頭していた。いつもの様に見知らぬ男の後をつけカフェに入るとしばらくして男はビルの近くに座り直しビルが後をつけていた事に気付いていたと言う。

シネマロサにて。

クリストファー・ノーラン監督のデビュー作。デビュー作から既に手が込んでいて一貫している。監督自身も気難しい人のイメージが有ったけど、数多くインタビューしている渡辺麻紀さんが書いている記事等を読むと本人は礼儀正しくて作品とは違って素直な好人物らしい。意外と言っては失礼だろうか。

主要な出演者は本作以降見かけないなと思っていたがビルを演じたジェレミー・セオボルトとファム・ファタールのルーシー・ラッセルは本作以降も役者を続けていてクリストファー・ノーラン監督作品にも数は少ないが何本か出演している。ビルに尾けられた男コッブを演じたアレックス・ハウの映画出演作は本作だけみたい。元々が建築を学んでいて、そして役者ではなく建築家になったらしい。



『アイアンクロー』 2023年、アメリカ、2時間10分。を観た。
日本マットでも活躍した鉄の爪フリッツ・フォン・エリックには四人の息子がいた。自身が果たせなかったNWA世界王者の夢を息子たちに託し厳しい指導を行っていた。

息子たちの身に起きた事から呪われた一家とも呼ばれていた。呪われているとかそんなオカルトな事ではなくてはっきり言って現実的に異常な事だと思う。実は兄弟はもう一人一番下の弟がいるのだとか。長男は幼い頃に亡くなっているので六男という事になる。プロレスラーとしてはフォン・エリック兄弟の五人目。その五人目の方も…。
そういう異常な事態になった原因がきっと有るはずで、本作を観てもなんとなくこの人が元凶なんだろうなとは分かるけどこの映画の中で糾弾される事は無く、なんとなく全てがいい思い出になっていて(家族と共にいたいという夢が実現出来ていたという意味で)、それでいいのだろうか?と思わないでもない。それが家族を愛していた長男(実際には次男)の優しさなのかもしれないけど。
プロレスをそんなに熱心に見ているわけではないけどプロレスという職業、職業と言っていいのか分からないがその道で生きるのはとても厳しい事なのだろうとは常に思ってはいる。トッププロレスラーとなれば、そしてトップで居続けるためには常に観客を驚かせる様なパフォーマンスを見せなければならずそのためには肉体も酷使しなければならないし精神的にも疲弊するだろうし。それを家族という近い距離の人間関係の中で強いた事が悲劇を生んでしまったのだろうか。

プロレスのシーンは思っていたより少なかった。出演者がみんな肉体を鍛え上げていただけにもっと見たかった。
伝説のプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックをはじめフォン・エリック兄弟の実際のプロレスを見た記憶は無いのでどんなファイトスタイルなのかも知らないが一家に共通する決め技が代名詞であるアイアンクローだとしたらそんなに派手な感じでは無いような気がする。実力は当然有ったんだろうけど。
全日本のマットでフリッツ・フォン・エリックと激戦を繰り広げたジャイアント馬場さんのアイアンクローを封じるための秘策がこめかみを掴まれない様に顔の前で拝手の形を取るというものだったけど、そしたら腹を掴まれてそれがストマッククローの始まりだったとビートたけしさんが漫談のネタにしていたのは覚えている。本当の話なのかは分からないが。

昨年11月16日にオープンしたkino cinema新宿にて。半年近く経ってようやっと。トイレはポパイがお出迎え。
新宿文化シネマ、新宿ガーデンシネマ、角川シネマ新宿、EJアニメシアター新宿と館名は変遷したけど映画館の雰囲気は新宿文化シネマの頃からそんなには変わっていない。ロビーが小綺麗になっているくらいか。
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『デストラップ/狼狩り』『オッペンハイマー』 [映画]

『デストラップ/狼狩り』 2020年、アメリカ、1時間33分。を観た。
狩猟を生業にしている一家。毛皮を売る事で生計を立てているが年々買取価格が減少していた為生活は苦しく日々の食べ物にも困る事が有った。それに加え人間を襲う狼が現れ家族の緊張が高まる中、更には足に重傷を負った見知らぬ男も現れる。

池袋シネマロサにて。

ポスターやチラシと予告でどういった内容なのかは薄々分かった上で観て、サスペンススリラーとしてこの先どうなるのかも予想しながら観ていたが全く予想していなかった所に着地した。ホラー映画だった。
ハンター+狼+サイコパスによるサスペンススリラーという事前の情報が無かったらはじめは自然の中での生活の困難が描かれそこに狼が現れて家族と狼との戦いが描かれるサバイバルアクションと思っただろう。地味と言えば地味なんだけど退屈ではなくて家族の生活がしっかりと描かれていて個人的には良く出来た映画だなと思っていた。
監督の意図としてはサバイバルアクションと思わせる事が狙いだったのか。もしそうなら日本での宣伝方法は監督の意図するところとは違うのかもしれないが、着地点が強烈過ぎて予めこれはサバイバルスリラー(本当の所はホラー映画)であると告知する必要が有ると判断されたのか。それはある意味正しいのかもしれない。個人的には意外な着地が面白く思えたがそれはホラー映画への耐性が一応は有るからで、ホラー映画だとは思わずに観てこんなの観たくなかったと思う人もいるかもしれないし、自分でもなんにも知らないちびっ子たちには観せたくないなと思う。本作のレイティングはどうなってるのかは分からないがR18でも妥当なんじゃないだろうか。

『ファイナル・デスティネーション』(2000年)のデヴォン・サワが20年が経った本作ではメル・ギブソンな感じになっていた。『ファイナル・デスティネーション』の頃はメル・ギブソンな感じでは無かったのに。

シネマロサの4月5日(金)から1週間の上映ラインナップは、本作(93分)、『神探大戦』(100分)、『フォロウィング』(70分)となんとも魅力的。本作は無責任にはお勧めしにくく、1日で3本観られるスケジュールにはなっていないけど。



『オッペンハイマー』 2023年、アメリカ、3時間。を観た。
第二次世界大戦中。原子爆弾開発製造チームのリーダーであった物理学者J・ロバート・オッペンハイマー。ナチスの脅威を払い人類の未来のための科学を信じて原子爆弾の開発に成功し「原子爆弾の父」とも称賛された男は後の赤狩りの時代に核兵器による軍拡を否定したためスパイ行為が疑われる。

映画とは時間を描くものだ。と押井守監督も言っていた様な気がする。記憶違いかもしれないが確かにそうだと思う。時間を描くのに最適な表現方法と言えるのかもしれない。監督それぞれの時間の感覚が有りその表現も過去と現在、未来を行ったり来たりと自由に出来る。上映時間的には長過ぎても駄目だし短過ぎてもあんまり良くないと時間の制約は有ったりする。
岡本喜八監督はフィルムのコマ数でカットを割っていたという話も聞く。丁度いいビートが有るらしい。
クリストファー・ノーラン監督は時間を描く事について意識が高い映画監督だろうと思う。全く無意識な監督もいるだろうし。監督作品のほとんどに時間が関係している。本作の様な伝記作品も時代を遡るという意味でもそうだし、作品自体の時間軸も複雑でそこら辺が作品を難解にしているとも言え途中のケイシー・アフレックが出ていた所辺りで何がなんだか分からなくなりかけて危なかった。

本作を観て改めて原子爆弾についての知識が無いなと感じさせられた。それは原子力発電にも繋がるのだろう。
物理、化学についてちんぷんかんぷんだけど聞きかじりの知識と勝手な思い込みで解釈を試みると、物質は原子、分子の繋がりで出来ていて原子、分子レベルで見るとその繋がりは結構スカスカで間を通り抜ける事も可能。『アントマン』でもそんな事が言われていなかったっけか。
空気も酸素、二酸化炭素、窒素で構成されていて原子、分子のレベルでは固体の物質と同じと言える。人間に関して言えば常に体の中を色んな原子が通り抜けてたり留まったりしているのかも。
原子には原子核が有ってその原子核を何らかの手段(中性子がどうとか言っていた)によって爆発(核分裂?核融合?)させると繋がっている無数の原子同士が連鎖反応で爆発し、そしてそれが物質の巨大な爆発となる。という事なのだろうか。その核分裂を爆発させずに熱量エネルギーだけを得ようとするのが原子力エネルギーなのか。その原子核を爆発させるのに適しているのがウランやプルトニウムの放射性物質であって、なので巨大な爆発の後で放射能が飛散拡散してしまうのか。
その点で水素爆弾は水素を原料としているので爆発後に放射能は発生しないという事だけど、水素爆弾として爆発させるのにはとてつもない高熱が必要で、その高熱を生み出すのに原子力爆弾を使わなければならずれそのために1954年のアメリカの水爆実験で日本の漁船第五福竜丸乗組員の方が被曝という事態になったという事。しかし、まだ原子爆弾が理論上のものだった時に大気への連鎖反応が起きたら世界が滅亡してしまうかも。という懸念も理論で押し返して実験に踏み切った。水素爆弾なんか爆発させるのが水素なんだからウランやプルトニウムと違って地球上には圧倒的に多いわけで、そっちの方がより連鎖反応の危険性が高かったんじゃないかとド素人は思う。それでも実験に踏み切ったのは東西冷戦による狂気なのか。
出発点は目の前に見えている様々な物体、物質はそもそも何で出来ているんだろう?という疑問だったんじゃないだろうか。突き詰めていって原子、分子にたどり着き原子力というエネルギーを生み出す事になる。
その純粋な探求心が国家間のイデオロギーの対立に利用され英雄と持ち上げるが、利用し尽くして意に沿わないものになったら非国民扱いされる。それを悲劇としてドラマチックに描くと日本人は反省が足りないと言うがじゃあ日本人は反省しているのかと問われたら反省する以前に忘れているか自分たちの都合のいいように解釈した感動映画が作られたりしている方が問題ではないかと思う。

光や音にも原子や分子が存在するのだろうか。現象だから無いのか。音は空気の振動で、なので宇宙空間には存在しない。光は何なんだろう?火とかも分からない。太陽は何故真空状態で燃えているのか?燃えてるんじゃなくて何か別の現象なのか。
クリストファー・ノーラン監督は時間にも原子や分子が存在するとか考えていそう。ただ無機質に流れて過ぎ去っていくものではなくて。それを映画として形の有るものに残しているのかも。
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『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』 [映画]

『夕陽のガンマン』 1965年、イタリア=スペイン、2時間12分。を観た。
西部開拓時代、凶悪な犯罪者には生死を問わず賞金がかけられていた。凄腕のガンマンで賞金稼ぎであるモーティマー大佐とモンコ(スペイン語で片腕の意味)と呼ばれる名無しの男は破格の1万ドルがかけられているインディオとその一味の賞金を狙って手を組んだ。

セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演、エンニオ・モリコーネ音楽で作られたイタリア製西部劇マカロニウェスタン『荒野の用心棒』の製作60周年を記念して、同じ監督、主演、音楽のトリオで作られた『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』の"ドル三部作"を上映。"ドル三部作"という名称での括りが有るのは知らなかった。
製作年の順番通りに『荒野の用心棒』から観たかったが上映のスケジュールがちょっと合わなかった。
三作品とも以前に観ているとは思うけど映画館で観るのは多分初めてか?
超絶ハンサムのイーストウッドと激渋おじさんのリー・ヴァン・クリーフのバディムービー。対立し騙し合ったりしながら最後、「BOY」「OLD MAN」とお互いを呼び合う。「若造」「おっさん」みたいな感覚なんだろうと思う。師匠と弟子とかではなく年の差は有るけど対等な信頼関係で。作品自体もイーストウッドのワンマンなスター映画ではなくイーストウッドとリー・ヴァン・クリーフの共演作品であった。
後にイーストウッドが激渋おじさん、おじいさんの立場になった映画が自身の手によって作られるがそちらでも若造とおっさんの関係で描かれていたと思う。



『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』 1966年、イタリア、2時間59分。を観た。
各地で戦闘が続くアメリカ南北戦争。そのどさくさに金貨20万ドルを奪いどこかに隠した男を追っている賞金稼ぎのエンジェル。賞金をかけられている犯罪人のテュコとブロンディと呼ばれる金髪の賞金稼ぎもそれぞれ20万ドルの情報を手に入れその場所に向かおうとするが行く先には南軍と北軍が激戦を繰り広げていた。

以前、大分昔に観た時に、大分昔なので3時間ではなく2時間40分のバージョンだったかもしれないがそれでも長いなと思ってその印象のままで現在に至っている。今回は3時間版で観ている間も長いなと思っていたが後半の橋をめぐる戦場のシーンからはとても面白かった。戦場からサッドヒルの墓場へと場所は移りテュコが金貨が埋められている場所を探して走り回るシーン、映画史に残る名シーンとされているが今回観て仰る通りだと納得した。エンニオ・モリコーネの音楽が素晴らしかった。セルジオ・レオーネ監督の撮影方法としてエンニオ・モリコーネが先ず音楽を作ってそれにインスパイアされて撮影するという事らしいがそれが大成功したのがこのシーンではないだろうか。他のシーンでは主に『夕陽のガンマン』でも使われているテーマ曲とも言える音楽が使われているがこのシーンだけで新たに作られた楽曲が使われる。このシーンのためだけに取っておきたかったんだろうなと想像する。
テュコを演じるイーライ・ウォラックの走り方が若干欽ちゃん走りの様にも見えてしまう(欽ちゃん走りが世に出るよりも前?)がそれもまたテュコの愛嬌にも思える。
ドキュメンタリー映画『サッドヒルを掘り返せ』(2017年)でもやっぱりこのシーンが素晴らしいと語られていた。本作を観てから『サッドヒルを掘り返せ』を観た方がよりその事が理解出来るのだろうと思う。

邦題では『続・夕陽のガンマン』となっているが『夕陽のガンマン』との話の繋がりは無いとされている。しかし後半になって名無しの男がある衣装を着る事によって繋がっている様にも思えるのが嬉しい仕掛けだった。

南北戦争時代というのは西部劇でよく描かれる西部開拓時代とはどの様に重なっているのだろう?南北戦争によってアメリカの近代化は始まったと言えるのだろうか。近代化の始まりは西部開拓時代の終わりとも言えるのか。時代が変わっていく中でガンマンたちが自分たちの生き方を貫いて自分たちの流儀による撃ち合いで死んだり生き残ったりする姿が時に無様に、でもそんな姿すらも魅力的に描かれていた。

両作品ともお馬さんが賢かった。映画撮影に合わせた訓練をされてその中でも優秀なお馬さんが出演されているのだろうけど、ちゃんと画角の中でいいポジションにきっちりと止まってスッと静止する。乗り手の技術も有るのかもしれない。
画角とか気にしないで自由に動き回った方がリアルという考え方も有るのかもしれないがそれは監督や作品によるのだろう。『乱』のドキュメンタリーを観た時に黒澤明監督はお馬さんをしっかりと導けない役者さんに怒ってたし。
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『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』劇場版アニメ『名探偵ホームズ』公開40周年記念上映 [映画]

『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』2024年、日本、1時間1分。を観た。

10年前、ハッタンタウンの大学の探偵同好会で知り合ったおしりたんていとスイセン。お互いの推理力を認め合い数々の事件を解決してきたがスイセンが突然姿を消す。そして現在、おしりたんていの元に見覚えの有る整った筆跡のメッセージが届く。

お子さまに大人気の謎解きアニメの劇場版。その謎解きの楽しさも有るが大人な内容でもあったと思う。
名探偵のキャラクターとしては多分シャーロック・ホームズからの影響が有るはずで、前作に登場したシリアーティはモリアーティ教授だし。シャーロック・ホームズは天才的な推理力を持っているのと同時に人間としてはかなりの変人であって、そういった所はシャーロック・ホームズだけに限らず名探偵と呼ばれるキャラクターに共通しているのかもしれない。おしりたんていはその変人である所も受け継いでいる。なので普通の人間、『おしりたんてい』の世界観の中で普通の人間が存在するのかは分からないが、いわゆる現実世界の普通の人間が送るであろう人並みの幸せとは無縁、全くの無ではないかもしれないがかなり縁は薄いのではないかと思う。そういう事が描かれていて、タイトルはスイセンからの視点での事だと思うと切なさもあるが作品としては基本的にギャグアニメでもあって、現在のおしりたんていの相棒のブラウンの面白さとかつての相棒のスイセンの切なさのバランスが上手くとれていた。お子さま向けのアニメと言えど大人な内容も含むのは今は子供たちは理解は出来ないかもしれないけど大人の世界や事情を知るのも大切なのかもしれない。

本作の前に『映画おしりたんてい なんでもかいけつ倶楽部 対 かいとうU』(10分)が上映される。前作の『シリアーティ』の時もそうだったけど同時上映作品の話がちゃんと繋がっていながらそれぞれが単独作品としても成立しているのがいいなと思う。



劇場版アニメ『名探偵ホームズ』公開40周年記念上映を観た。
宮崎駿演出話セレクションとして、
『劇場版名探偵ホームズ 青い紅玉(ルビー)の巻/海底の財宝の巻』(46分)
『劇場版名探偵ホームズ ミセス・ハドソン人質事件/ドーバー海峡の大空中戦!』(47分)の計4本。
前者は『風の谷のナウシカ』(1984年)、後者は『天空の城ラピュタ』(1986年)劇場公開時の併映作品。
詳しい事はウィキペディアに書いてあってこれまで知らなかった事も有った。完全に鵜呑みにしてはいけない事も有るのだろうけど。
1984年の時に著作権が切れたのでフリーに使えると思ったら第二次世界大戦の間国交が断絶していたのでその期間分だけ延長されていて、苦肉の策なのかシャーロック・ホームズとは全く別物の作品であるとしなければならなかったという事情は初めて知った。後に改めて正式に原作アーサー・コナン・ドイルがクレジットされシャーロック・ホームズの世界を犬世界に置き変えた作品という事にはなる。

最近になって、『この世界の片隅に』のヒット以降か、当時大学生であった片渕須直監督の脚本や一部のデザインが採用されていて、その功績が語られる様になった。でも宮崎駿監督が画コンテ切ってるし脚本がどれだけ原型を留めているのかは外部の者には分からない所ではある。
後にスタジオジブリ作品『魔女の宅急便』は当初片渕監督の監督作品としてスタートしたけど色々有って宮崎駿監督作品になったという事も有り、御二人の間では愛憎が絡まってんのかなあとか想像してしまう。
スタジオジブリ、宮崎駿監督の元では後進が育たなかったが、ジブリを去ってから頭角を現すケースが見られるのは、結局はスタジオジブリ=宮崎、高畑監督作品を発表する場であったという事なのかもしれない。

モリアーティ教授の声を担当した大塚周夫さんが最高だった。大塚周夫さんはいつでも最高だった。ブラック魔王、ねずみ男、海原雄山、ビッグマーフィーなど。
ギャグアニメの部分を担当しているのがモリアーティ教授と手下のトッドとスマイリーの悪者トリオ。その原型は『ハッスルパンチ』の悪者トリオに有るのではないだろうか。と『ハッスルパンチ』の動画を観た時に思った。https://youtu.be/S6OIgWJDin4?si=p6-hzZkJ7JX1GX5H


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『ブリックレイヤー』『導火線 FLASH POINT』 [映画]

『ブリックレイヤー』 2023年、アメリカ=ブルガリア=ギリシャ、1時間50分。を観た。
ギリシャでアメリカ政府による他国への違法な諜報活動の特ダネを掴んだ記者が殺害される。折しもヨーロッパでは反米活動が起こっていた。CIA分析官ケイト・バノンは映像により元工作員ヴィクター・ラデックの姿を発見する。現在はレンガ職人になっているラデックの同僚であったスティーヴ・ヴェイルに捜査の協力が要請された。

アクションシーンが迫力が有っていいなと思っていたら監督がレニー・ハーリンだった。CGだけに頼らないのはやっぱりベテランならではだろうか。

話の方はなんだか分かった様な分からなかった様な。ヴェイルはラデックが差し向けた刺客によってこの事件に関わる事を決めたけど、そもそもラデックはCIAには恨みがあってもヴェイルには無かったわけで。むしろCIAの中で唯一恩義みたいなものは有ったはず。ラデック側に情報が筒抜けである事を現していて、恩義の有るヴェイルも含めてCIAの全てをぶっ潰したいという憎しみと狂気なのか?そうだったとしたらそこら辺はもっと深く突っ込んで描かなければならなかったのかも。

アーロン・エッカートは唇が薄い。ケネス・ブラナーとどちらが薄いだろうか。二人合わせてもアンジェリーナ・ジョリーより薄いかもしれない。



『導火線 FLASH POINT』 2007年、香港、1時間27分。を観た。
中国返還を目前にした香港。香港警察マー刑事は犯罪者の逮捕には行き過ぎた暴力も辞さず上層部からは問題視され遂には警察音楽隊への異動を命じられる。
かねてから追っていたベトナム移民三兄弟の逮捕の目処がつき現場に復帰するマー刑事だったが、三兄弟のもとに潜入捜査をしていたウィルソン刑事の命が狙われる。

新文芸坐にて。ドニーさん監督・主演の『シャクラ』(2023年)との二本立て。本作だけを観た。
『チョコレート・ファイター』と『マッハ!!!!!!!!』もしくは『トム・ヤム・クン!』のタイアクション映画二本立てを観てみたい。
ジージャーの近況をさっぱり追っていなかったがあまり目立った出演作品は無いみたいだけどプライベートでは『チョコレート・ソルジャー』『マッハ!無限大』で共演したカズ=パトリック・タンと再婚して二児の母となっているのだとか。

正に『導火線』の邦題がピッタリな作品だと思う。マー刑事の怒りの着火点に到達するまでの導火線が物語のベースであり、そのベースが有るからこそ着火した時に大爆発する。
西部劇や任侠モノも同じ様な構造ではないかと思う。しかし本作の怒りの大爆発は凄い、ドニーさんは当然凄いけどそれを受ける相手役のコリン・チョウも凄かった。

マー刑事は音楽隊でも真面目に活動していたみたいで、そこら辺の描写は少ししかないけど想像するだけでも面白い。
音楽隊での活動だけを描いたスピンオフが観てみたかったが、マー刑事ではない別の映画でそういった内容の非アクションなのもその内作られるかもしれない。

ファン・ビンビンも出ていたのはすっかり忘れていた。色々と有ったけど現在は芸能活動も再開されているらしい。
ちなみに同じく芸能活動している19歳差の実弟の名前はファン・チェンチェン(日本語表記はチャンチャンだったりチョンチョンだったりする)。

谷垣健治さんもスタントコーディネーターとして参加されているが出演者としてもがっつり出ていた事に今更気付いたのは流石に遅過ぎると自分でも思う。
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『デューン 砂の惑星PART2』『FLY!/フライ!』『ARGYLLE/アーガイル』 [映画]

『デューン 砂の惑星PART2』 2023年、アメリカ、2時間46分。を観た。
惑星アラキスの香料を巡りハルコンネン家の不意討ちにあったアトレイデス家の跡取りポールと母親のジェシカは生き延びて砂漠の民フレメンに匿われる。ジェシカが属する秘密結社ベネ・ゲセリットの真の意図はポールが救世主となりフレメンと共に長きにわたり宇宙を制してきた皇帝と闘う事にあった。女戦士チャニをはじめフレメンと心を通じ合わせたポールだったが救世主と崇められた闘いによって多くの命が失われる事を予知し心を痛めていた。

これは間違いなく前作を観直しておかなければならないやつだと思って観直しておいて良かった。じゃなければ2時間40分近くをちんぷんかんぷんで過ごさなければならなかっただろうと思う。作品独自の固有名詞も難しい。

1作目の邦題は『DUNE/デューン 砂の惑星』で2作目が『デューン 砂の惑星 PART2』と変わっている。
本記事の他二本もだけど最近は原題+カタカナ訳の邦題が増えた様に思える。一作目はそれで二作目はその流れに逆らったのか。

ネタバレ有。

2作品合わせて5時間超の大作。だからなのか物語が語られるペースは遅く、こんなゆっくりなペースで終わるのか?と不安にも思いながら観ていた。
皇帝との闘いとしては一応は終わるんだけど何か消化不良にも思える終わり方ではあった。それは皇帝軍が軍隊として弱かったから。
それは皇帝自身としても弱体化していて、だからアトレイデス家が自分よりも力を持っているかもしれないと恐れてハルコンネン家と共謀したのだろう。ハルコンネン家はその事で皇帝の弱味を握ろうとしているというなんともお互いがいやらしい。
皇帝とその軍隊の力は絶大であるとの恐怖のイメージを植え付ける事によって制してきたけど、いざ実際に闘ってみたら砂の惑星という地の利が大きかった事も有るのだろうけどかつてほどの強さは無かったという事だったのかもしれない。
それとアトレイデス家が隠し持っていた核爆弾も戦闘を有利に進めるのに大きかったけど、あれを現実世界の核爆弾と同じものとは考えない方がいいのだろうと思う。爆発時にキノコ雲も無かったし。恐らく核爆弾にも香料は使われていてそれが放射能を抑えているのかもしれない。
惑星間移動の燃料にも香料が使われていてそれによって数日間で移動出来る様でもあった。現在の技術では理論上地球から隣の火星まで200日以上かかるのだとか。
オーニソプター(羽ばたき機)が実用化もされていて、そんなSF世界の技術力や科学力が現実と同じではないはず。でも、そうだったとしたなら"核爆弾"という言い方を変えた方が良かったのかもしれない。強力な爆弾としての分かりやすさで使っているのかもしれないが。

しかし、本作を単純にSF作品として片付ける事にはいかない所はあって、砂漠の民による革命の物語とするとそれは現在起きている中東の国によるテロリズムにも通じるであろうし、そのテロの正当化にもなったりするのではないだろうか。金髪碧眼のキャラクターがいないのは欧米との対立を想起させる事を避けるためなのかも。

ティモシー・シャラメは現在最強のお坊っちゃまキャラであろうと思う。お坊っちゃまでありながらその嫌味さを感じさせない所に好感が持てる。これがディカプリオだったとしたら嫌味がだだ漏れになるのだろうなと思ってしまうのはあくまで個人的な見解。

ハビエル・バルデムとジョシュ・ブローリンは『ノーカントリー』(2007年)の二人。前作の時には気付かなかったのか?二人が同じ画面に収まる事自体は前作とも合わせて少なかったけど仲はいいみたい。
https://www.youtube.com/shorts/HlICsfM57V8



『FLY!/ フライ!』 2023年、アメリカ、1時間23分。を観た。
アメリカ、ニューイングランドの池に暮らすマガモの一家。家長のマックは極度の心配性で本来マガモが行うはずの渡りが危険であるとして通年をその池で暮らしていた。そのマックが一念発起し家族とダンおじさんと共に南の楽園ジャマイカへの渡りを決行する。

面白かった。最初の内はキャラクターデザインがあまり好みでなかったので話しにも入り込めなかったけどなんだかんだで結局面白くなる。流石イルミネーション。
『映画クレヨンしんちゃん』もそうであって欲しいけど今年のもまた感動作になってしまうのだろうか。
本作にも感動要素は有るけど感動がメインではないと思う。あくまで面白いアニメーションである事がメイン。『映画クレヨンしんちゃん』に限らず今の日本映画、映画に限らずフィクションの殆んどが感動メインで反吐が出る。感動メインで反吐が出る(大事なので二度言った)。作詞家の井荻麟さんならそんな歌詞を書くかもしれない。

同時上映の『ミニオンの月世界』(9分)も面白かった。



『ARGYLLE/アーガイル』 2024年、アメリカ=イギリス、2時間19分。を観た。

大人気スパイ小説『アーガイル』の作者エリー・コンウェイ。最新作を書き終えるといつも通りに母親からの意見を聞く。最も信頼出来る読者である母親のアドバイスを素直に聞き入れ追加の最終章の構想に入ろうとするがその作業は一向に進まず母親に直接相談しようと列車に乗ったエリーの前にスパイを名乗る男が現れエリーの命を守ると言う。

スパイミステリー映画。予想外の展開が有ってミステリーとして面白かったが長い。予想外の展開が有る事が分かった上で観たら余計長く感じるかもしれない。

サム・ロックウェルの起用はトム・クルーズを意識しての事だろうか。体型が似ている。

原油まみれの床でのフィギュアスケートアクションが良かった。ジェイソン・ステイサムも油(エンジンオイルだったか?)まみれの床でアクションしてたけど何の映画だったか思い出せない。
『トランスポーター』シリーズのどれかかなあと思っていたが「ジェイソン・ステイサム」「油まみれ」で検索したら『トランスポーター』の1作目だった。
https://front-row.jp/_ct/17524918
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『DOGMAN ドッグマン』『ネクスト・ゴール・ウィンズ』『コヴェナント/約束の救出』 [映画]

『DOGMAN ドッグマン』 2023年、フランス、1時間54分。を観た。
殺人事件の被疑者として勾留されているダグラスと名乗る人物から事情を聞く女性医師はその壮絶な半生を知る事となる。

GODを逆さにすればDOGだという事で神は誰にでも無慈悲であるけどその代わりに慈愛に満ちた犬が人間のそばにいてくれるという事なのだろう。
そういった信仰とか、どれだけ慎ましい幸せを望んでもままならない人生を描いた高尚な面も有るのだろうけどリュック・ベッソンらしい素っ頓狂な脚本だなと思いながら観ていた。
可愛さとハードバイオレンスの混在がリュック・ベッソン作品の一つの特徴ではないかと思う。『ニキータ』『レオン』『WASABI』など。本作の場合の可愛さは犬であるけど他の作品と違って犬だと可愛さの方が勝ってしまってハードバイオレンスと上手く混ざらなかったと思う。だから話し自体が素っ頓狂に思えたのかもしれない。

劇中で阪神タイガースのユニフォームを着ている人がチラッとだけ映っていた様な気がした。

ヨーロッパ・コープのロゴを久し振りに見たが『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』がコケて経営が傾いてリュック・ベッソンは経営権を手放したという事らしい。会社自体は存続してしばらくはリュック・ベッソンの作品も製作はするみたい。



『ネクスト・ゴール・ウィンズ』 2023年、イギリス=アメリカ、1時間44分。を観た。
アメリカ領サモアのサッカー代表チームが公式戦の初勝利を目指し白人監督を招聘する。

面白かった。タイカ・ワイティティ監督は大作映画とかよりも本作の様な小規模作品の中で異彩を放った方がいいんじゃないだろうか。本作はいわゆるプログラムピクチャーだろうと思うが、プログラムピクチャーとしての定番な作りの中にタイカ・ワイティティ監督ならではの外し方が上手くはまっていたと思う。
主役のマイケル・ファスベンダーは初コメディだろうか。今まではシリアスな役でしか見た事が無かったけどコメディも上手くて面白かった。

スポーツはやはりどうしても勝ち負けに拘る事になってしまうが、最近は勝ったから嬉しいよりも負けたから悔しいの方に感情移入してしまい、勝っても負けても上手でも下手でも続ける事が大事という考え方になってきた。
その続けるモチベーションの一つとしての勝ち負けとそれを受け入れる事が大事なのかなあと本作を観て思う。スポーツを全然しないけども。



『コヴェナント/約束の救出』 2022年、アメリカ、2時間2分。を観た。
2018年、タリバン支配下のアフガニスタン。アメリカ陸軍ジョン・キンリー軍曹率いる部隊はある作戦において絶対絶命の危機に陥る。その中で軍曹の命を救ったのは現地通訳のアーメッドだった。しかしその事でアーメッドはタリバンから命を狙われる事になる。

戦争、戦場の辛い現実が描かれていてそれをただ観ているだけなのに辛かった。本作は一応美談となってはいるけど美談のその後の現実も伝えられていてそっちがまたより辛かった。
戦闘シーンなどはポール・グリーングラス監督作品を参考にしているのではないかと感じた。誰に対しても人の命が失われる様とかが淡々と描かれるので辛さが増すのかもしれない。

主人公の上官役はジョニー・リー・ミラーだった。随分とおじさんになったなあと思ったが若い頃の面影も当然有る。
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『ハンテッド 狩られる夜』『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』 [映画]

『ハンテッド 狩られる夜』 2023年、アメリカ=フランス、1時間35分。を観た。
深夜のガソリンスタンドで長距離射撃で狙われるアリス。

アレクサンドル・アジャ製作という事でフランスでの話しなのかと思っていたが映画が始まってしばらく経ってからフランス語じゃないなと気付いた。元々がスペイン映画『シャドウ・スナイパー』(2014年)のリメイク。そちらではどこの話なのかは未見なので分からない。
どこの話しだからどうとかいう事でも無いのだけどなんか気になってしまう。銃社会である事が重要ではある。
フランス語、アメリカ英語、スペイン語の違いで作品の雰囲気もちょっとは変わってくるとは思う。フランス語よりもアメリカ英語で作りたいという事なのか。作品のセールス的には英語の方が有利なのかも。

アレクサンドル・アジャは『屋敷女』(2007年)の監督だと思っていたけど『屋敷女』の監督はアレクサンドル・バスティロ(ジュリアン・モーリーとの共同監督)だった。
本作の主演カミーユ・ロウはそのアレクサンドル・バスティロ、ジュリアン・モーリーの監督作品『ザ・ディープ・ハウス』(2021年)で主演していてアレクサンドルで繋がっている。『ザ・ディープ・ハウス』も確かフランスでの話では無かった。カミーユ・ロウはアメリカとフランスとのハーフなので英語もフランス語も話せるみたい。



『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』 2023年、アメリカ、1時間41分。を観た。
1950年代からロックンロールの草分けの一人として活躍したリトル・リチャードの半生を描く。

名前は初耳だったけど知っている曲は有った。中でも「のっぽのサリー」は『プレデター』で冒頭に流れるのが印象深い。

カール・ウェザースが今年の2月に逝去。『ロッキー』シリーズのアポロ・クリード、『プレデター』のディロンと脇役での方が有名かと思うが黒人スターがもっと当たり前の時代だったらもっとビッグスターになっていただろうと思う。


リトル・リチャードも楽曲自体はよく知られているがオリジナルである自身よりもビートルズやプレスリーなどがカバーした方が有名、と言うか売れたという事らしい。それもやはり黒人だからという事も理由の一つなのか。

その半生はアーティストならではと思える波乱の人生。本作を観た限りではその晩年に至るまで歌手としてのパフォーマンスは衰える事は無かったのが凄いなと思った。
歌手活動としての始まりがゴスペルでロックスターになってからも要所要所でゴスペルにも関わっていたという事。元々持って生まれた才能でもあるのだろうけど、それに加えて基本がゴスペルなので更に歌唱力が半端なかったのだろう。
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『漫才協会 THE MOVIE ~舞台の上の懲りない面々~』『梟 ‐フクロウ‐』 [映画]

『漫才協会 THE MOVIE ~舞台の上の懲りない面々~』 2024年、日本、1時間40分。を観た。
漫才を中心とした演芸の普及向上、継承と振興を図る事を主眼として設立された一般社団法人漫才協会。浅草東洋館を活動の拠点とし日々多くの芸人が舞台に立ち続けている。

池袋シネマ・ロサにて。

ドキュメンタリー映画。舞台では面白おかしく振る舞う芸人さんの舞台裏での健全さを前面に押し出している。それは個人は元より団体としても何か過去にやましい事が有ったからではないかと想像してしまう。浅草でストリップ小屋を始まりとした興行となればそれはもうそういう反社会的な関係の人達が関わっていたのだろうと思う。飲む打つ買うが当たり前の業界であったとよく聞くし。今でも常識や法律の範囲内でそういう所は有るのかもしれない。時に法律からはみ出してしまう人もいて。
フランス座出身のビートたけしさんがそういう反社会的な人達を描いた映画を多く作っているのは浅草フランス座時代に関わっていたのかは分からないけど目にする事は度々有ったからではないだろうか。
関西の吉本興業もそういった関係を切るために苦労をした。みたいな事を何かでチラッと読んだ様な気がする。
演芸だけに限った事ではなくて昔から有る興行と呼ばれたものには反社会的な人達との関係が恐らく有ったのだろう。地方に巡業に行った時などのその土地土地のそういった人たちとも。
現在の世論的な事からすれば何事も健全でなければならないのかもしれないが、お笑い、芸能、もっと大きく芸術に関して反社会的な事だけではなくモラルとして健全である事がいいのか、正しいのかと言えばどうなんだろうとも思う。健全さを前面に押し出している本作が面白い映画であったかと言えばそうとも言えなかったのがそれを現している様でもあった。



『梟 ‐フクロウ‐』 2022年、韓国、1時間58分。を観た。
朝鮮王朝実録に記されている王の子の謎の死。その現場を盲目の鍼師ギョンスが目撃していた。

単なるサスペンスミステリーを期待していたが、権力者がその力をふるう中で庶民が翻弄される姿を描く韓国映画でよく観るタイプの作品でもあった。1960年代からの軍事政権時代を描いた作品を朝鮮王朝時代に置き換えた様な。
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『犯罪都市 NO WAY OUT』『落下の解剖学』 [映画]

『犯罪都市 NO WAY OUT』 2023年、韓国、1時間45分。を観た。
不審死事件を捜査するマ・ソクト刑事は新手の合成麻薬"ハイパー"の存在に辿り着く。"ハイパー"を巡って韓国、中国、日本の悪者共が蠢く中にマ・ソクト刑事は拳だけで乗り込んでいく。

『犯罪都市』シリーズ3作目。前作から7年後の2015年の話でまだ現在には追いついていない。4作目も同時進行で撮影しているらしい。
前2作品ではマ・ソクト刑事はソウル・クムチョン(衿川)署強力班の所属だったけど本作ではソウル地方警察庁広域捜査隊に異動している。より広い管轄、韓国全域(?)の事件に首を突っ込める様になったという事だろうか。前作ではベトナムで勝手に捜査していた。

マ・ソクト刑事の強さの秘密は実はディフェンスの方に有るのだろうと思った。ボクシングをしていたという設定になっているので(本作から?だからなのかビンタの回数がかなり減った。一回だけだったと思う。)ディフェンスの技術もかなり高度に見えるがそれよりもなによりもとにかく打たれ強い。痛みに鈍感と言った方が正しいのかもしれない。背後から凶器でクリーンヒットすればちゃんと気を失って、車に轢かれればダメージは受けるけども、そのダメージを後に引きずらずにむしろパワーアップして全力を出しきれる。それは戦う側からしたら脅威でしかないだろうと想像する。『ターミネーター』の韓国版リメイク出来そう。
マ・ドンソクのアクションも上手いのだろうけど映像としての見せ方も上手いと思う。ちゃんと相手の急所めがけてパンチを出していて思いっきり当てにいっているように見える。どうやってパンチを出してそれをどこからどう撮ればそういう風に見えるのかを熟知しているのだろう。
実際に当たってしまう事もそれで怪我をする事も有るのだろうけど、それはもう仕方ないと覚悟の上で。それくらいの覚悟がないと手に汗握る様なアクションにはならないのかもしれない。観客がそれを期待してしまうし。



『落下の解剖学』 2023年、フランス、2時間32分。を観た。
フランス。山荘に暮らす三人家族。フランス人の父、ドイツ人の母、視覚障がいを持つ11歳の息子。ある日息子が飼い犬を連れた散歩から戻ると庭先で倒れている父親に気付く。

ネタバレ有り。

裁判の展開が丁寧に描かれていて、これは裁判とはどういうものなのかが描かれている映画なのだと思った。
片方は無罪を主張し、片方は有罪にする事を目的としていてその為に証人や証拠を用意して裁判で発表(発表?)するが、一つの証拠をもってしても無罪を主張するための証拠になる事も有れば逆にそれが有罪の証拠になる事も有り得る。それを如何に自分達の主張の方が正しいか、正しくなくても説得力が有るかを競い合っているようで、真実を探り明らかにするのが目的では無いようにも思えた。
確か本作の中でも二つのの選択肢が有った場合どれから一つを選ばなければならない。みたいな事を言っていたと思う。裁判にかけられたら何かしらの一つの答えを出さなければならなくて、どっちでもいいじゃんは有り得なくて。だから無理矢理にでも答えを捻り出さなければならない。そこに真実の追及という考え自体あまり必要ではなくて、だから本作でも何が真実だったのかはっきりと明かされないのか。
結局どういう判断であの結審に至ったのかも説明されない。それは逆の結果になっていた可能性もかなり高かったという事なのではないかと思う。

弁護士役のスワン・アルローがカッコ良かった。これから世界中で大人気になるんじゃないだろうか。もう既になっているのかも。名前がスワンなのが出来すぎの様な気がするが綴りはSWANNで英語のSWANとは違う。

カンヌ国際映画祭でパルム・ドッグ賞を受賞。確かにあの犬は賢そうで演技力も有った。当人(人?)は演技しているとは思っていないだろうけど。
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『マダム・ウェブ』『神探大戦』 [映画]

『マダム・ウェブ』 2024年、アメリカ、1時間56分。を観た。
1973年、ペルーのジャングルでコンスタンス・ウェブは探し求めていた蜘蛛を発見する。30年後のニューヨーク、娘のカサンドラ・ウェブは救急隊員としての日々を過ごしていた。

マーベルのヒーロー映画はもう観ないつもりでいたが予告を目にしたらタハール・ラヒムが出ていたのでちょっと気にはなっていた。そして観ようと思ったひと押しはダイアンが宣伝していたから。
ハリウッド大作の宣伝に映画と関係の無い芸能人を使う事に批判も有るけど、それきっかけで観てみようと思う人もいるわけだから一概に良くない事とは言えないかもしれない。と今度の事で思った。逆にこの人が宣伝しているから観る気を失ったという事も有るだろうし。



最上級の「スーを差し上げます。受け取ってください」の時だけ片仮名の「スー」になる。



本作はディズニーのマーベルヒーロー作品ではなく、ソニーの主にスパイダーマンを中心としたソニー・スパイダーマン・ユニバース(SSU)と知ったのは本編上映が始まってコロンビアのロゴが出てから。ディズニーとソニーのマーベルヒーローが全く無関係ではなくてそこら辺はややこしくてよく分かっていない。本作ではまだ2003年の話なので半分に減るのはこれから起こるのか、こちらでは起こらない事になるのか。
恐らくアニメの『スパイダーバース』シリーズともつながっているんではないかと思う。もしそうならさっぱり分からなくなってしまう。
ダイアンが宣伝に起用されたのは「ごいごいすー」の「すー」の部分だけでスパイダーマンとギリギリ薄く関わっているのかもしれない。

宣伝でマーベル映画初の本格ミステリーと言われているがどこら辺がミステリーなのかよく分からない。観客も推理するタイプのミステリーではなかった。カサンドラがどの様にしてマダム・ウェブと呼ばれるスーパーヒーローになったのかが描かれるという意味でのミステリーだったとしたら別にそういうのはこれまでにも有ったし。
予知能力がスーパーヒーローとしての能力として見栄えのするものなのかと言えば本作ではそんな事は無かった。スーパーヒーローでは無いけど予知能力を持つ主人公の映画で言えばニコラス・ケイジ主演の『NEXT ‐ネクスト‐』は面白かった。

タハール・ラヒムがこの後もハリウッド大作で活躍出来るのかと言えば本作だけで評価されると微妙なんではないか。

女子高校生三人(スパイダーウーマン?)の内の一人のシドニー・スウィーニーは実年齢は26歳で大人の女性。
アメリカの興行成績ベスト10に何週間もランクインしているこちらの方が実年齢に近い役なのかも。

ハリウッドエクスプレスでは何週間も上の動画の同じ映像が流れていて、シリアスな恋愛映画なのかと思っていたけど下の動画を観るとロマンチックコメディだったので観てみたい。




『神探大戦』 2023年、香港、1時間40分。を観た。
香港で起きた未解決の凶悪事件に関連した人物達が殺され殺害現場に「神探」のメッセージが残される。かつて神探(神の捜査官)と呼ばれた元刑事の男がその独特な捜査手段で犯人に近づいていく。

ヒューマントラストシネマ渋谷 "未体験ゾーンの映画たち2024"にて。
2022年の東京国際映画祭で上映されて、その後にも2回くらいかなり限定的に映画館で上映されたのをやっと観る事が出来た。

ジョニー・トー監督作品の脚本家で知られるワイ・カーファイ。『マッスル・モンク』(2003年)や『MAD探偵 7人の容疑者』(2007年)などでは共同監督も務めていて本作では単独での監督作品(脚本も担当)。
その『MAD探偵』の主人公と本作の主人公はどちらもラウ・チウワンが演じていてよく似ているが同一人物ではないみたい。すっかり忘れていたが『MAD探偵』の主人公の方は×んでた。
本作だけでも十分に面白いけどそれでも同一人物で違う世界線での物語として観た方がより面白いのだろうと思う。

本作での香港警察のオフィスの様に香港映画も小綺麗な感じになってしまっている様に思えるけど、本作にはかつての泥臭い雰囲気も感じられてそれが良かった。
最後に中国当局の圧力か忖度か何かは分からないが警察組織を褒め称える方向に行くと思わせてギャグに持っていくのが面白かった。それはラストシーンも含めての反骨精神の様にも窺えた。正義は必ず勝つ。の綺麗事だけではこの世の中は成り立っていないというのが『MAD探偵』と本作で描かれている事だろうし。



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『ボーはおそれている』 [映画]

『ボーはおそれている』 2023年、アメリカ、2時間59分。を観た。
ボー・ワッサーマンは母に会いに行く予定だったが出発当日寝坊してしまい更には家の鍵を盗まれ外に出る事自体が難しくなっていた。その事を電話で伝えると母は不機嫌になりボーは途方に暮れ不安が押し寄せる。掛かり付けの医者に処方された薬を飲もうとするが水で飲むようにと言われていたため目の前にある食料雑貨店に駆け込まなければならなかった。その隙をついて大勢の者たちがボーの家に上がり込んで家の中をメチャクチャにするのだった。家の惨状に更に途方に暮れるボーが風呂に入る準備を整え再度母に電話をすると電話に出たのは荷物を届けに来た配達員だという。

よく分からない映画だった。

追記。
よく分からないはアリ・アスター監督にとっては恐らく褒め言葉。よく分からない映画を撮ろうとしているのだろうし。
宇宙規模で言ったら分かっている事より分かっていない事の方が圧倒的に多いはずで。それを分かっている範囲で物語を作るのが常識とされてきて、でも現実にはよく分からない事は起きるわけで。人間同士が殺戮兵器を使って大量に殺し合う戦争が起きるのも本当ならするはずが無いのに起こってしまう。戦争に関しては色々理屈は付けられそうだけど、よく分からないのに起きてしまう事を憶測とか希望的観測とかであれこれと理由付けしないで描いている。映画として大分誇張されている所は有るけど。だからよく分からなくて当然。
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