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人間の條件 [ナ行の映画]

銀座シネパトス《日本映画レトロスペクティブ~Part22~ 巨匠・小林正樹の足跡》にて。


小林正樹監督の作品を観るのはおそらく初めて。
戦争を描く全6部作。観てみたいと思いながらも、全作を集中的に観れる機会が無い事を言い訳にどこか避けていた所もあり。
今回の特集で全作を観れる機会が出来たので観た。


人間の條件 第1部 純愛篇


『人間の條件 第1部純愛篇』
(1959・日本) 1h45
監督・脚本 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、新珠三千代、山村聰、宮口精二、淡島千景



第2次大戦中、満州の鉱山。鉱山会社社員の梶(仲代達矢)は現地工人の待遇を改善しようとする。
軍の押し付けによる抗戦地区の捕虜も工人として加わり採鉱の効率は上がるが、脱走者も後を絶たなかった。
現地工人とも信頼関係を築きたい梶だったが、会社内部には脱走させる事によって私腹を肥やす人間がいた。


人間の條件 第2部 激怒篇


『人間の條件 第2部激怒篇』
(1959・日本) 1h39
監督・脚本 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、新珠三千代、山村聰、宮口精二、淡島千景



脱走者に死者が出た事によって少しずつ積み上げてきた梶と現地工人の信頼関係は失われてしまう。
工人への管理を厳しくした会社に加え軍部も介入し、遂には脱走を疑われた者達への処刑にまで発展してしまう。
それに対して抗議した梶は軍部、会社に睨まれる事となる。


人間の條件 第3部 望郷篇


『人間の條件 第3部望郷篇』
(1959・日本) 1h43
監督・脚本 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、新珠三千代、佐藤慶、田中邦衛、南道郎、岩崎加根子



満州、関東軍に徴兵された梶ら初年兵は古参兵からの理不尽で執拗な仕打ちに耐え続けるしかなかった。
やがて初年兵仲間の一人が厳しい訓練と仕打ちに耐え切れず自ら命を絶ってしまう。
梶は軍の上層部への告発を決意する。


人間の條件 第4部 戦雲篇


『人間の條件 第4部戦雲篇』
(1959・日本) 1h16
監督・脚本 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、佐田啓二、藤田進、千秋実



徴兵から1年が経ち梶が配属された部隊の上官は友人の影山(佐田啓二)だった。
影山は梶に初年兵の指導の助手を任せるが、指導方針を巡り梶と古参兵は対立してしまう。
対立が深刻になった時影山は梶と初年兵の半分を別地の任務に就かせる事にした。
そんな折戦線は激化し、梶らが所属する部隊もソ連の戦車軍との交戦を迎えるのだった。


人間の條件 第5部 死の脱出


『人間の條件 第5部死の脱出篇』
(1961・日本) 1h31
監督・脚本 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、新珠三千代、川津祐介、内藤武敏、金子信雄、岸田今日子、中村玉緒


北満州での梶のいた部隊はほぼ全滅した。数名の兵隊、道中で行動を共にする事になった避難民と南満州を目指すがその道のりは過酷を極めた。
原生林をさまよい、餓えに苦しみ、敵兵との戦闘も続く。
苦難の道のりを経て目的地到達へのめどが付いた頃、ある一人の兵隊の行いに梶は激怒するのだった。


人間の條件 第6部 曠野の彷徨


『人間の條件 第6部曠野の彷徨篇』
(1961・日本) 1h41
監督・脚本 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、川津祐介、金子信雄、内藤武敏、高峰秀子、笠智衆



南を目指す梶たちだったが、ある開拓村に立ち寄った時にソ連軍の捕虜となってしまう。
収容所でも自分の信念に基づき行動する梶は、捕虜たちを管理するかつての上官たちからは邪魔な存在だった。
数々の仕打ちにも耐えてきた梶だったが、梶に私怨を持つ者の非道な仕打ちに耐えかねた時、ある決意を持って決死の行動に出るのだった。



全6部作と言うより途中休憩有りの3部作な感じだった。

あの戦争で日本という国、そして日本人は何をしてきたのかを包み隠さず描く。
とは言え本作で描かれる事が全てという事ではないんだろうと思う。
一つの側面。ただ日本人としては隠しておきたい側面ではある。それを包み隠さず描く所がこの映画、小林監督の良心だろうか。

隠されていないので観ていて辛いものはかなり有った。人間ってヤな生き物だなとつくづく思わされる。
救いは主人公梶の人間性。常に気高く、主義や信念を貫き通そうと努力する。
しかしそういう人物は叩かれるのが日本社会のヤな所で。さまざまな試練、受難が梶を苦しめる。
また気高い梶ではあるけど、聖人君子ではなく人間らしいエゴも持ち合わせていて、そのエゴがさらに梶を苦しめる事になる。
その苦しみを乗り越えようとする梶。

エゴのみで生き抜くのも人間らしいといえばらしいのかもしれないし、梶の様にエゴを乗り越えて気高く生きようと努力するのが人間の理想なのかもしれない。
しかし梶の様に生きるのは正直難しい。信念のために喰らったビンタ何十発。
でも戦争という極限状態の中、常に自分の信念を貫き通そうと努力した男がいた。という事だけは忘れないでいたいと思う。



5部の終わり方が印象的。梶の怒りがその発せられた言葉に全て乗り移っているよう。
怒りの矛先の金子信雄さんが最強の憎まれ役だった。
なので糞尿まみれの最期はすっきりしたけど、あれをやっちゃいけないんだと思う。でも梶をもってしてもやってしまい、それが梶を苦しめる事となる。
梶一人の身に人間の罪と罰が背負わされ、観客はその姿を見届けなければいけない。それがこの映画を観る意味なのかも。



1部2部の仲代さんと山村聰さんのコンビは『ミシシッピー・バーニング』のウィレム・デフォーとジーン・ハックマンのようだった。
山村聰さんかっこよかった。

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