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『柳生一族の陰謀』『長靴をはいた猫』『空飛ぶゆうれい船』 [映画]

丸の内TOEI ≪東映創立70周年"エンターテインメント・アーカイブ"特集上映・2021冬≫の3本を観た。

『柳生一族の陰謀』1978年、日本、2時間10分。
徳川幕府二代将軍秀忠が急逝。世継ぎは嫡子であるが秀忠からは疎まれていた家光か、秀忠に寵愛され家臣からの人望も厚い忠長かで幕府内は揺れる。京の朝廷の復権への思惑も絡む中で幕府の兵法指南役で家光から絶大な信頼を寄せられる柳生但馬守宗矩(やぎゅうたじまのかみむねのり)は家光を将軍にするためあらゆる手を尽くす。

最後の所は別としてうっかりこれが史実なのかと思ってしまったが現在の所の正しいとされている史実とはかなり変えているらしい。でも約400年前の出来事で何が真実かは実際の所分からないし、ある時その時の影響力のある誰かの発言によってそれまで正しいとされていたものがそうでは無いとされる事もちょくちょくあるわけだからもしかしたらこれが真実であるとされる時がいつか来るのかもしれない。

深作欣二監督の映画では初時代劇作品だとか。本作以前の代表作『仁義なき戦い』シリーズの路線である暴力や権謀術数で権力を手に入れようとする輩とそれらに否応なく巻き込まれていく者共のドラマを時代劇に持ち込んだという所も有るような感じ。でも時代劇としてもしっかりと作られている。
無情で悲劇なドラマがこれでもかというくらいに起こるが、それらをベタベタなお涙頂戴にしていない。それは史実とは違うのだろうけど、あの時代ではそれくらいの事が起こって当然というある意味での真実なのではないだろうか。その悲劇は1978年当時にも当てはまるし現代にも当てはまる。

本作の後1981年にほぼ同じ時代で同じ人物が多数登場する『魔界転生』が作られ千葉真一さんは両作品で柳生十兵衛を演じている。

金子信雄、成田三樹夫、梅津栄(敬称略)の公家トリオはその並びだけでも面白い。
志穂美悦子さんの凛々しい姿が見られるのも嬉しい。
原田芳雄さんが出ているが当時の大型時代劇に出演しているというイメージがあまり無かったので意外だったしその風貌からして何か他の人とは違う特殊な雰囲気も漂っていた。



『長靴をはいた猫』1969年、日本、1時間20分。
ネズミを助けた事によって仲間たちから命を狙われるネコのペロ。追っ手から逃れ雨宿りの軒先で家族から不遇な扱いを受けている人間の少年ピエールと出会い共に助け合い生きていく事を誓う。

東映動画の劇場用アニメーション作品。作画監督は森康二さん(キャラクターデザインもしているんじゃないかと思う)で、そのシンプルで整った可愛らしいキャラクターが生き生きと動き回るのがとても楽しい。原画には日本アニメ界のレジェンドの方々が参加している。

後の宮崎駿監督作品『ルパン三世カリオストロの城』に流用されていると指摘されるシーンが幾つかある。確かにその通りだと思う。宮崎駿監督は本作に限らず参加した作品には多くのアイデアを出したという事(それによって頭角を現す)だからご自身のアイデアを制作スケジュールがひっ迫していたカリオストロで使用したという事だろう。

ペロ役は石川進さん、ピエール役は藤田淑子さん。





『空飛ぶゆうれい船』1969年、日本、1時間。
船舶事故が急増し生存者からは事故の原因が幽霊船であるとの情報が得られる。造船会社のオーナーでもある黒潮財団の会長と夫人の命を自動車事故から救った少年隼人だったが幽霊船の手下である巨大ロボットゴーレムの破壊行動により両親を失う。幽霊船への復讐を誓う隼人は仲間同士であるはずの幽霊船とゴーレムが争うのを見てその裏にある陰謀を見抜く。

東映動画の劇場用アニメーション作品。恐怖映画路線で小さい時に観ていたらかなり怖かったかもしれない。
しかし、ゆうれい船、巨大ロボット、怪獣、戦車がアクションを繰り広げてエンターテインメントとしてはサービス精神旺盛。
ロボットのゴーレムが街で暴れてビルを破壊、迎え撃つ国防軍の戦車。といったシーンは原画で参加している宮崎駿さんが担当しているとの事。描き込みがえげつない。

能力的には何も特殊な力を持たない少年が主人公で大事件に立ち向かうというのはかなり無理が有る(それを言ったらクレヨンしんちゃんは5歳児だけど)が、子供向け作品の主人公は少年もしくは少女という不文律が有った時代なのだろうか。でもウルトラマンや仮面ライダーだと主人公は青年だからそういった事でも無いのか。

『長靴をはいた猫』『空飛ぶゆうれい船』両作品で参加したスタッフの名前がしっかりとクレジットされている。参加した全員なのかは分からないけど当時の作品では省略される事も多かったんじゃないだろうか。そういった所は東映動画での労働組合の活動が盛んだった影響なのだろうか。
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