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『七人樂隊』『声/姿なき犯罪者』 [映画]

『七人樂隊』を観た。2021年、香港、1時間51分。
1960年代から現在そして未来の香港と香港の人々が十年区切りで七人の映画監督によって描かれる。

「稽古」サモ ・ハン
「校長先生」アン・ホイ
「別れの夜」パトリック・タム
「回帰」ユエン・ウーピン
「ぼろ儲け」ジョニー ・トー
「道に迷う」リンゴ ・ラム
「深い会話」ツイ・ハーク
の七つの短編作品。
当初はジョン・ウーも加わって八つの短編になるはずだったが体調不良により不参加となったのだとか。


一本目の「稽古」、二本目の「校長先生」はノスタルジーたっぷりに描かれる。
やはり1997年の中国への返還が大きな変わり目で1980年代が描かれる三本目の「別れの夜」で既にその影響は起こりはじめている。
四本目の「回帰」と五本目の「ぼろ儲け」の間で1997年は過ぎている。大きく変わっていく予兆は見られるがまだそれほど大きな影響は出ていない様にも思える。その代わりに2003年にSARSが発生して大変な事になっている。
六本目の「道に迷う」で街や人は大きく変わり、七本目の「深い会話」では未来が描かれるがこれまでの総括という意味も有ったのだろうと思う。いつの時代の香港も混沌としていて、時代によって"混沌"の意味も変わってはいるがその混沌を受け入れるおおらかさ取り入れていくしたたかさが香港なのであると。そういう事なのではないかと思った。
現在の混沌は取り入れるのにはあまりにも巨大過ぎるのかもしれないが。

昔の良き香港がクローズアップされているが、間違いなく昔の悪かった香港も有ったはずで、そっちのダークサイドを赤裸々に描いたバージョンも観てみたい。

香港映画と言えばアクションかコメディばかりを観てきた(なのでサモ・ハンが監督した「稽古」とユエン・ウーピンが監督した「回帰」が良かった)ので香港の普通の日常生活というものがあまりよく分からない。本作では普通の日常生活も描かれているのが良かった。



『声/姿なき犯罪者』を観た。2021年、韓国、1時間49分。
振り込め詐欺の被害にあった夫婦。激しく動揺した妻が交通事故に遭い意識不明の重体となり、夫が働く建設会社も詐欺の被害に遭い多額の被害を受ける。同一犯による犯行と睨んだ元刑事である夫は犯人を探し出し殺す覚悟で独自の捜査を進める。

振り込め詐欺は韓国でも年々被害額が増え深刻な社会問題になっているという事。
本作はそういった現実の問題を取り込みつつエンターテインメント性の高いリベンジサスペンス映画になっていて面白い。
今年大ヒットしたネットフリックスドラマ『イカゲーム』は観ていないのだけど、地下組織によって搾取される人々。といった所は『イカゲーム』っぽいのかなあとなんとなく思った。『イカゲーム』から影響を受けたという事でもないのだろうけど。

それにしても旦那さんがある事情によって警察を辞める事になった腕利きの刑事という設定であるとはいえ奥さんにしたら本当に頼りになる旦那さんでカッコ良かった。
犯人を見つけ出したらどうするのか?と聞かれ迷う事なく「殺す」と一言だけ答えるのがカッコいい。そして犯人を見つけ出した時に実際にどうするのか。復讐を取るのか元刑事としての矜持を取るのかという所でもサスペンスが展開される。
演じるピョン・ヨハンは甘いマスクの二枚目だけど復讐に燃える男を熱く演じていて良かった。初めて見る人だなあと思っていたが、去年観た『茲山魚譜 チャサンオボ』でソル・ギョングとW主演していた人だった。

アクションシーンがどれも高水準で良かった。中でもエレベーターシャフトでのアクションが結構長めなのが良かった。高低差のある場合相手もしくは自分が落ちてしまえばそこで大体の場合アクションも終わってしまうのでそんなには長くは続けられない。そこを本作では粘って結構長く続いた。『チョコレート・ファイター』のビルの壁面でのアクションが自分が知る限りでは最長じゃないかと思う。


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