切腹 [サ行の映画]
『切腹』
(1962・日本) 2h14
監督 : 小林正樹
出演 : 仲代達矢、石浜朗、岩下志麻、三國連太郎、丹波哲郎、中谷一郎、青木義朗
「浪人の身ゆえ侍としての展望一向に開けず。かくなる上は侍として切腹いたし候。貴殿の庭先拝借いたし候。」
相手先が金銭付きで丁重に断る事を見越したいわゆるたかり行為。
侍として風上に置けない行為が密かに流行していた泰平の世。また一人の浪人津雲半四郎が彦根藩井伊家のお屋敷を訪れる。
アンチ武士道な時代劇映画。武士道、侍がそんなに立派な訳でもあるまいと。
武士道を重んじる立派な侍もいたかもしれないけど、泰平となった江戸時代となるともはや侍は身分制度を形成するための一つの役割に過ぎず、武士道もその役割を格調高く飾り付けるためだけのものではなかったのかと。
役割でい続ける事に無自覚で役割をこなす事が侍であると傲慢なまでに勘違いしている侍たち。
その姿、行いは役割から外れてしまった浪人から見ると憤懣やるかたないものであった。
その構図はあの戦争における日本を思い起こさせる。社会派の小林正樹監督らしい作品だった。
しかしながら侍としてたかり行為は許せんとするのは、それは間違いであったとしても江戸時代では正論で、侍である前に人間であり人間としての権利が尊重されるべきとするのは現代においての正論。
時代を隔てた正論と正論のぶつかり合い。それは結論出ない。時代劇としては江戸時代の正論の方も正しいと思えてしまう。それが間違いだと分かっていても。
なんともモヤモヤした感じが残る時代劇映画だった。
銀座シネパトス《日本映画レトロスペクティブ‐Part22‐巨匠・小林正樹の足跡》にて。
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