スペース・カズキ [カズキ]
「ちっ」
カズキの表情に焦りが見えてきた。
出力180%で航行しているのにも拘らず正体不明のスペースシップを一向に引き離せないでいた。
「ええい、出力を200%に上げろっ!」カズキは操縦席にいるパイロットに向かって怒鳴った。
「そりゃあ無茶じゃけえっ!」パイロットは簡潔に答えを出した。
そうこのスペースシップ、ゴールデン・ベアー号のパイロットでありカズキの長年の相棒であるみよ子の答えはいつでも簡潔でありそして正しかった。
今現在においてもこの出力のままで航行していればいずれ原子炉エンジンに支障をきたす事は誰が見ても明らかだ。
船内がガタガタと大きく振動していた。船内温度も急激に上昇していた。
「ちっ」。カズキは拳を強く握りしめウィンドウスクリーンに映るスペースシップを睨みみよ子に告げた。
「出力を120%にダウン」
正体不明のスペースシップはゴールデン・ベアー号との距離をみるみる間に詰めてきた。
しかし射程距離に入ってもミサイルもビーム砲も撃ってはこなかった。恐らく弾切れなのだろう。あれだけ盛大な攻撃を仕掛けたのならば当然の事ではある。
それはこちらにも言えた事だ。ゴールデン・ベアー号も弾切れだった。盛大な攻撃を仕掛けられたならば盛大にやり返す。それがカズキの流儀だ。
今回はどちらの攻撃も相手に致命傷を与えるには至らなかった。しかし不意打ちを喰らった分のゴールデン・ベアー号の損害は大きかった。それが正体不明のスペースシップを振り切れなかった理由でもある。
一撃必中の攻撃が失敗したにも拘らず尚も追跡を止めようとしないスペースシップの意図する所は何なのか。
カズキは理解していた。
それはみよ子も同じだった。「こりゃあ本気で体当たりする気じゃ」
「・・・ああ」カズキは静かに頷いた。
「出力を80%にダウン」カズキはみよ子に告げた。
「なんじゃとぉっ!?」みよ子は驚いた。後8,000kmほどでアステロイドベルトの存在が確認されていた。そこに逃げ込めばスペースシップを振り切ることが出来る。カズキはそれを目指すものだと思っていた。
みよ子はカズキの顔を覗き込んだ。
カズキの表情には先ほどの焦りの色は見えなかった。落ち着いている。むしろ微かに笑っているようにも思えた。
この表情の時のカズキは信頼に値する。みよ子はそう思っていた。確かにアステロイドベルトまでは遠過ぎた。
「出力80%」みよ子は従った。
スペースシップがあっという間に間合いを詰める。その距離100km。
60・・・
40・・・
20・・・
「1号エンジンをパージする!」カズキの声が静まり返った船内に響いた。
「なっ、なん・・・」みよ子が驚く前にカズキが強化プラスチックカバーを叩き割り、中にある赤いレバーを力強く引いた。
稼働中のエンジンをパージする事など前代未聞である。パージした瞬間に爆発を起こしてもなんの不思議もない。
出力を低下させたことによって一時的に冷却された1号エンジンは爆発することなく射出された。それに伴いゴールデン・ベアー号のスピードも急激に落ちた。
「みよ子、出力全開!急げっ!」
「なっ、なんじゃあっ!!」みよ子は残りのエンジンを全開にした。
猛スピードで突っ込んできたスペースシップにこの近距離で突如現れた障害物を避ける事は不可能だった。スペースシップの鼻面にゴールデン・ベアー号の1号エンジンがのめり込む。
船内を粉々に破壊しながら尚も1号エンジンは止まる気配すらなかった。それはあたかもスペースシップのエンジンルームを目指しているがごとく破壊の限りを尽くして突き進む。
暫くの間、宇宙にはいつもの静寂が訪れていた。しかし船体内部から幾条もの光線をほとばしらせた後大爆発を起こしたスペースシップがその静寂を打ち消す。
爆発はゴールデン・ベアー号も巻き込んだが、残り2基のエンジンを250%の出力でその場を緊急離脱し被害を最小限にとどめた。
爆発のまばゆい明かりはとても美しかった。そしてその明かりを全身に受けた黄金の機体ゴールデン・ベアー号は漆黒の宇宙の暗闇の中一際光り輝いていた。
カズキの表情に焦りが見えてきた。
出力180%で航行しているのにも拘らず正体不明のスペースシップを一向に引き離せないでいた。
「ええい、出力を200%に上げろっ!」カズキは操縦席にいるパイロットに向かって怒鳴った。
「そりゃあ無茶じゃけえっ!」パイロットは簡潔に答えを出した。
そうこのスペースシップ、ゴールデン・ベアー号のパイロットでありカズキの長年の相棒であるみよ子の答えはいつでも簡潔でありそして正しかった。
今現在においてもこの出力のままで航行していればいずれ原子炉エンジンに支障をきたす事は誰が見ても明らかだ。
船内がガタガタと大きく振動していた。船内温度も急激に上昇していた。
「ちっ」。カズキは拳を強く握りしめウィンドウスクリーンに映るスペースシップを睨みみよ子に告げた。
「出力を120%にダウン」
正体不明のスペースシップはゴールデン・ベアー号との距離をみるみる間に詰めてきた。
しかし射程距離に入ってもミサイルもビーム砲も撃ってはこなかった。恐らく弾切れなのだろう。あれだけ盛大な攻撃を仕掛けたのならば当然の事ではある。
それはこちらにも言えた事だ。ゴールデン・ベアー号も弾切れだった。盛大な攻撃を仕掛けられたならば盛大にやり返す。それがカズキの流儀だ。
今回はどちらの攻撃も相手に致命傷を与えるには至らなかった。しかし不意打ちを喰らった分のゴールデン・ベアー号の損害は大きかった。それが正体不明のスペースシップを振り切れなかった理由でもある。
一撃必中の攻撃が失敗したにも拘らず尚も追跡を止めようとしないスペースシップの意図する所は何なのか。
カズキは理解していた。
それはみよ子も同じだった。「こりゃあ本気で体当たりする気じゃ」
「・・・ああ」カズキは静かに頷いた。
「出力を80%にダウン」カズキはみよ子に告げた。
「なんじゃとぉっ!?」みよ子は驚いた。後8,000kmほどでアステロイドベルトの存在が確認されていた。そこに逃げ込めばスペースシップを振り切ることが出来る。カズキはそれを目指すものだと思っていた。
みよ子はカズキの顔を覗き込んだ。
カズキの表情には先ほどの焦りの色は見えなかった。落ち着いている。むしろ微かに笑っているようにも思えた。
この表情の時のカズキは信頼に値する。みよ子はそう思っていた。確かにアステロイドベルトまでは遠過ぎた。
「出力80%」みよ子は従った。
スペースシップがあっという間に間合いを詰める。その距離100km。
60・・・
40・・・
20・・・
「1号エンジンをパージする!」カズキの声が静まり返った船内に響いた。
「なっ、なん・・・」みよ子が驚く前にカズキが強化プラスチックカバーを叩き割り、中にある赤いレバーを力強く引いた。
稼働中のエンジンをパージする事など前代未聞である。パージした瞬間に爆発を起こしてもなんの不思議もない。
出力を低下させたことによって一時的に冷却された1号エンジンは爆発することなく射出された。それに伴いゴールデン・ベアー号のスピードも急激に落ちた。
「みよ子、出力全開!急げっ!」
「なっ、なんじゃあっ!!」みよ子は残りのエンジンを全開にした。
猛スピードで突っ込んできたスペースシップにこの近距離で突如現れた障害物を避ける事は不可能だった。スペースシップの鼻面にゴールデン・ベアー号の1号エンジンがのめり込む。
船内を粉々に破壊しながら尚も1号エンジンは止まる気配すらなかった。それはあたかもスペースシップのエンジンルームを目指しているがごとく破壊の限りを尽くして突き進む。
暫くの間、宇宙にはいつもの静寂が訪れていた。しかし船体内部から幾条もの光線をほとばしらせた後大爆発を起こしたスペースシップがその静寂を打ち消す。
爆発はゴールデン・ベアー号も巻き込んだが、残り2基のエンジンを250%の出力でその場を緊急離脱し被害を最小限にとどめた。
爆発のまばゆい明かりはとても美しかった。そしてその明かりを全身に受けた黄金の機体ゴールデン・ベアー号は漆黒の宇宙の暗闇の中一際光り輝いていた。
2012-08-04 21:52
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