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ジーエム2016 [ヒロミツ]

― 「あ! ジーエム!」


ジーエム 「お、おう、イパタか。久し振りだな。どうだ元気でやってるか。やっぱり向こうの方が待遇はいいだろ…」


― 「あっ! ジーエム!」


ジーエム 「おおっ! おー、お、おう、タニシケ。奇遇過ぎるな。…まー今回はあれだな。お前も分かってるだろうけど、これが勝負の世界って…」


タニシケ、イパタ 「カミサンブサイク」


ジーエム 「え?」


タニシケ、イパタ 「カミサンブサイク」


ジーエム 「え? 不細工? かみさん?」


タニシケ、イパタ 「カミサンブサイク!


ジーエム 「おい、やめなさいよみっともない。こんな皆さんのいる所でオレのかみさんの事を大きな声のユニゾンで言うんじゃないよ」


タニシケ、イパタ 「カーミーサーン! ブーサーイークッ!


ジーエム 「おい! 待て! ハモれって意味じゃないよ! そういう事を大きな声で言うんじゃないってーの! でもって言いながらオレから離れるんじゃないタニシケ! イパタも! フクシ! 二人を追え! ・・・フクシ? フクシっまだペガサス流星拳は早いっ! 届かないよ! 届かない! え? カラノキントウン? あーフクシさんのー流星拳からのー筋斗雲なー。来るかなー筋斗雲。来るといいなー。…あ、フクシ! ノー! フクシ、ノーよ。チョウチョ、ノー。追いかけない、追いかけないよフクシ、ノーノーノーノー。オゥイエスっ! フクシ、ソーイエスっ! よーしよしよしよしっ、よーしよしよしよしっ、フクシーよぉく我慢したなぁ、よーしよしよしよしっ、どうしたフクシ? 嬉ションか? 嬉ションしちゃったかあ。よーしよしよしよしっ、構わない、全っ然構わないよフクシ。ほーら、ご褒美のチョコバーだぞお、よーしよしよしよしっ。たらふくお食べフクシー」


タニシケ、イパタ 「カアーミサアーン、ブウーサイーク!


ジーエム 「こらあフクシ、それはオレの手だぞお。オレの手まで舐めるなあ。フクシったら、もー」


タニシケ、イパタ 「カミサーンブサイーク」


ジーエム 「アハハハハ!」


タニシケ、イパタ 「カミサーン…」


ジーエム 「アハハハハ!」


タニシケ、イパタ 「…」


ジーエム 「アハハハハ! アーッハッハッハッハ! ワーッハッハッハッハ!」


おしまい

息子へ











イパタ 「クソッ! なんてふてぶてしいんだ」

タニシケ 「…待て、こいつ…ジーエムじゃねえ」

イパタ 「なんだって!? 」

タニシケ 「こいつぁ…」

ジーエム 「ワーハッハッハッハ! どうやら気付いたようねぇ。そうよ、肉体はダンナであってもその内側にはこのあたくしが巣喰っているのよ! 」

タニシケ 「やっぱり。てめえは、ノブコフジンっ! 」

フジン 「オーホッホッホッホ! 」

イパタ 「クッソッ! なんておぞましい。なんておぞましい夫婦なんだ! 」

フクシ 「さあ君たち、そろそろ決着を付けようじゃないか」

タニシケ 「フクシっ! …お前、まともに喋れんのか!? 」

フクシ 「ああそうだよ。今まではちょっとおつむが弱い僕を装っていただけなのさ。さてさて今から僕とマミーとダディで君たちにちょっとしたお仕置きをしてあげようかな。マミー! ダディー! 」

フジン 「オーホッホッホッホ! 」


そうしてフジンは顔いっぱいに口を広げフクシを一口で呑み込んだ。

イパタ 「…グロい、グロ過ぎる。なんてグロい家族なんだ」

タニシケ 「ああ。…!、 なんだこいつぁ…」

3人の集合体オチアイケとなったその生き物は急速に巨大化を始めた。細胞の一つ一つからいびつに巨大化し、肉の塊が皮膚を突き破りさらに肉の塊が肉の塊を突き破り続けた。もはや人間としての形を留めていない醜い物体からは異様に折れ曲がった骨が飛び出しひび割れた表面の至る所から赤黒い液体が湯気を立てジュワジュワと垂れ流されていた。

オチアイケ 「ヴオーヴォッヴォッヴォッヴォ! キエーッ! ケッケ! 」

オチアイケにもはやヒトの言語は通じなかった。その化け物が有しているのは道理の通じない破壊衝動だけであった。

イパタ 「まずい、このままじゃ俺たちだけではなく東海地方全域が破壊されてしまう」

タニシケ 「…こうなったら彼らを呼ぶしかない」

イパタ 「そうか! よしっ! 」

タニシケ 「出でよ! 竜戦士たち! カミサンっ! 」

イパタ 「ブサイクっ! 」

タニシケ、イパタ 「オチアイヒロミツっ! 」

竜戦士たちを呼び起こすその言葉を二人が唱えると遥か彼方の空に飛行物体が現れた。その物体を認識するや瞬く間にこちらに迫ってくる。それは一匹の竜であった。離れていてもその巨躯は歴然としていたが、飛行はあくまで軽やかであった。舞うが如く空を飛びこちらに向かってくる。
竜が目前に迫ってくるとその背中に多くの竜戦士たちを乗せている事が分かった。歴々の竜戦士たち、見慣れたあんな顔やこんな顔、そして懐かしい顔も見える。

カミサンっ! ブサイクっ!
竜戦士たちは地上のタニシケとイパタを見付けると右の拳を高々と挙げ一斉に声を合わせた。
カミサンっ! ブサイクっ!
タニシケとイパタも同じ様に右拳を突き挙げ声を上げると二人も竜の背中にテレポートしていた。

醜王オチアイケVS.竜戦士の戦いの幕は今まさに切って落とされようとしていた。



オチアイケの巨大化はとどまる事は無くその姿は見る者に畏怖の念を押し付けた。竜戦士たちもあまりの巨大さに圧倒されるしかなく勝利の希望は捨て去るしかなかった。しかし、このままおめおめと引き下がるわけにはいかない。
我が身を捨て相討つのみ。竜戦士たちの悲壮な決意は固まった。だが勝負は思いもしなかった所で既に決していた。

一つの集合体であるオチアイケの中では3人の肥大したエゴがぶつかり合い、それぞれがそれぞれの流儀を押し通そうとした結果内部崩壊が始まっていた。内部崩壊は肉体の結合を拒否し分離を起こさせた。
破壊衝動だけがオチアイケを突き動かしていたがもはや肉体はそれについていく事は出来なかった。一歩進むごとにボロボロと肉塊が崩れ落ちる。
肉塊の列を作り、遂には歩く事さえままならず動きを止めたオチアイケ。しかしその肉塊は何かを破壊しようとする意識を持ちいまだズブブブ、ズブブブと不様に蠢いていた。

イパタ 「なんて、なんて醜い生き物なんだ」

タニシケ 「・・・」

竜戦士たちは上空からオチアイケのあっけない最期を静かに見届けていた。
タニシケは何故この争いが始まったのか、そしてこの争いの後に何が残されたのかを考えていた。どちらが勝ってどちらが負けたのか。タニシケにその判断はつかなかった。そもそも初めから勝ち負けなど無かったのかもしれない。

オチアイケが残したおびただしい量の肉塊は竜の吐く炎によって燃やし尽くされた。
その肉塊の総量は旧本拠地ナゴヤ球場2.8個分に相当したという。
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