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カズキ [カズキ]

ショックだった。いや屈辱だった。

生まれてから今まで年上世代たちからの受けは抜群にいいはずだった。

そしてその事を最大の武器として芸能界という世界でこれまで活躍していたエナリカズキという存在。

例え夫婦喧嘩の真っ最中というアドバンテージは有るにしても完全無視は有り得なかった。いや有ってはならなかった。

これまでに無視された事など無いと言えばそれは嘘になるだろう。学生時代のクラスメイトからの妬み嫉みなどは日常茶飯事と言っても差し支えは無い。

しかし、こと年上世代とあれば話は全くの別だ。とにかく受けが抜群に良かった。自分たちの子供と比較して現代風ではない朴訥な雰囲気に心癒される部分が少なからず有るのであろう。

とにもかくにも受けが抜群に良かった。



そんな自分へのまさかの完全無視。呆然とした。まるで宇宙の暗闇が自分だけに襲いかかってきたかのように目の前が真っ暗になった。

そして鼻の奥がツンとなり、ただただ涙が溢れてきた。

しかし涙を流さなかった。それだけが今唯一出来るエナリカズキとしての意地だった。

これまでで最高に受けが抜群に良かったあの日、あの時の、あの場所での事。それだけを脳裏に思い浮かべ、ひたすらに天井を見つめ続けた。

涙がこぼれ落ちない様に。




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