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『ザ・ディープ・ハウス』『四畳半タイムマシンブルース』『LAMB/ラム』 [映画]

『ザ・ディープ・ハウス』を観た。2021年、フランス=ベルギー、1時間25分。
世界中の曰く付きの廃墟を探索する動画で一攫千金を狙うカップル、ベンとティナ。フランスのとある田舎町に湖底に沈んだ屋敷が存在するとの情報でその町を訪れる。町は寂れていてベンの期待通りだったが湖は観光客で賑わっていて湖底の屋敷の情報は得られなかった。諦めきれないベンが一人の男に声を掛けるとその男は地元の人間でここから離れた別の湖にそれは有ると言い、親切にその場所まで案内してくれるのだった。

映画のほとんどが水中シーンで、しかも水中の一軒家。どうやって撮影したんだろう?どこかに本当に湖底に沈んだ屋敷が存在するんだろうか?と思っていたがどうやら外観も内観も全部がセットらしい。どっちにしろよくこんな映画撮ったなあと思う。思い付いてもやっぱ無理と諦めるか、もしくはCGにするか。あのジェームズ・キャメロンでさえ『アバター』の新作ではCGに多くを頼っているのに。とてつもなくハイレベルなCGなのだろうけど。





水中での恐怖と曰くが有りそうな屋敷との恐怖がダブルできてとても怖い。
最後の最後までその恐怖を緩める事が無かったのがホラー映画としてとても良かったと思う。

ベン役のジェームズ・ジャガーのジャガーJAGGERがミック・ジャガーのジャガーと似たような綴りだなあとは思ったがまさか本当のミック・ジャガーの息子だとは思いもしなかった。顔はあまり似ていないし。



『四畳半タイムマシンブルース』を観た。2022年、日本、1時間32分。
京都の大学に通う若者たち。盆地であるために熱気がこもる京都の夏を優雅に過ごすのにはクーラーが必要だった。しかし救いのクーラーは若者たちのたまり場であるアパートには一部屋にしかなく、運の悪い事にリモコンにコーラが被り使い物にならなくなる。クーラー本体に作動スイッチは備えられていなかった。万事休すの若者たちはアパート内のガラクタ置き場に無造作に置かれていたタイムマシンを見つける。

『四畳半神話大系』と『サマータイムマシン・ブルース』の悪魔的融合という事だったけど正にその通りと言っていいのかと思う。両作品とも本作を観る前に観直しておいた。『サマータイムマシン・ブルース』は2005年の本広克行監督による映画版。元々の舞台版もDVD、ブルーレイ化されているらしい。
『四畳半神話大系』のメンバーが『サマータイムマシン・ブルース』を乗っ取ったと言うか逆に乗っ取られたと言うか。
基本的には『サマータイムマシン・ブルース』の流れに則っていて、そこに『四畳半神話大系』のエピソードが絡まってくる。それが違和感無い感じで上手くいっていると思う。

タイムトラベルモノとしてはそんなにガッチリとはしていなくて、むしろ緩いからタイムパラドックスについて深くは考えないで済むという所は有ると思う。
ただ一つ疑問に残ったのは羽貫さんの存在。今日(8月12日)の羽貫さんは師匠と共に昨日(8月11日)から今日に戻っていったわけだけど、その後昨日の羽貫さんは銭湯帰りの昨日のみんなと一緒にアパートに戻ってくる。どこかで合流したと言われれば納得するしかないが。コミュニケーション能力が異常に高い羽貫さんだから昨日のみんなが全く身に覚えの無い今日の羽貫さんの事を話していても話を合わせられるのかも。そこら辺の事は配信のディズニープラスでしか観られないエピソードで描かれているのかもしれない。

ちょっとと言うよりかなり残念だったのは絵的には劇場版ならではのゴージャス感みたいなものが無かった。むしろテレビアニメの『四畳半神話大系』の方が絵的に優れていたような。本作は元々は配信を目的として製作されたからという理由ではないのだろうけど。



『LAMB/ラム』を観た。2021年、アイスランド=スウェーデン=ポーランド、1時間46分。
アイスランド、人里離れた山間部で牧羊を営んでいる夫婦。羊たちの出産期を迎え次々と子羊が生まれる中、夫婦は一頭の羊が生んだ子羊を一目見て自分達で育てる事を決める。

ネタバレ有り。

常識的に有り得ない、思いもつかない事が起こるので不条理と言われてしまうかもしれないが、それは人間側から観ればそういう事で、羊側からしたらただ不条理なだけでなくそれまでの羊と人間との関係性から起こるべくして起こった復讐劇と言える。今までどれだけの羊が人間によって殺されてきたのか。それもまだ子供の羊をいわゆるラム肉として肉質が柔らかく臭みが無いと言って容赦なく。
そんな羊にとって鬼畜外道な人間が一匹の子羊の一部が人間の姿をしているからといって天からの恵みと都合のいい解釈を勝手にして我が子として可愛がる。そんな事が許されるわけはない。と無自覚に罪深い人間を断罪し鉄槌が下される。
物語の始まりはクリスマスイブで、それを考えるとあの子羊は羊たちにとってのイエス・キリストなのかも。誰をも魅了してしまう魅力は確かに有った。
追記
ノオミ・ラパスの役名がマリアなのも何かを示唆している様。しかし本作のマリアはキリストの母親になろうとしてなれなかったのは人間に対しての痛烈な皮肉が込められている。
追記終わり

映画の初めの方に夫婦の会話の中に時間旅行の話題が出て来て、それを真に受けると現代ではない未来の話という事になるだろうけど、どうもその後に未来であることを感じさせるものは無くて、あの会話はちょっとした空想話しだったのだろうと思う。
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