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『ファーゴ』『ナイル殺人事件』『巴里のアメリカ人』 [映画]

『ファーゴ』を観た。1996年、アメリカ、1時間38分。
1987年、アメリカ。ミネソタ州ミネアポリスの自動車ディーラー、ジェリー・ランディガードは誰にも知られずに借金を返済するため妻の偽装誘拐を企み誘拐を依頼した二人組に会うためノースダコタ州ファーゴの酒場へと向かう。

午前十時の映画祭11にて。

劇場公開以来に観る。思い出してみると本作以前のコーエン兄弟の監督作品で観ていたので当時は『ミラーズ・クロッシング』が面白かったけど『バートン・フィンク』はちょっとよく分からなかった。『未来は今』も今イチだったかなという印象。そして本作を観て自分としては巷の高評価ほどでは無かった。という事で現在に至る。本作以降の作品も面白かったり(『ビッグ・リボウスキ』『オー・ブラザー!』『ノーカントリー』『トゥルー・グリッド』『バーン・アフター・リーディング』など)そうでもなかったりして、それらを経て25、6年振りに観る『ファーゴ』。
映像がカッコいい。各ショットが一枚絵として成り立つ様なカッコよさ。
『ファーゴ』の撮影エピソードで印象深いのは、直接的なものではないのだけどコーエン兄弟の盟友であるサム・ライミ監督が『シンプル・プラン』を撮影する際に雪景色でのシーンを撮影する時の注意点をコーエン兄弟に聞いたら、引きのシーンが有るならそっちを先に撮影しておいた方がいいよ。とアドバイスしたという事。その理由は先に顔のアップとかを撮影してから引きの撮影をしようとすると雪面に撮影クルーの足跡等が残ってしまっていてそれを消すのが大変だから。本作の撮影でそういう苦労が有ったのかもしれない。

スティーヴ・ブシェミが良かった。この年の映画賞にほとんど絡まなかったのが不思議。唯一MTVムービーアワードでピーター・ストーメアとのベスト・コンビ賞のノミネートだけ。賞とは縁遠いのはアダム・サンドラー作品の常連なのがマイナスになっているのだろうか?と失礼な事を考えてしまう。

最初は誰も傷付けずに済む計画だったのが一旦暴力が絡むとそこからは歯止めが効かず凶悪犯罪へと発展する。頭脳明晰で一般常識の有る警察署長のマージがいなかったらさらに酷い事になっていたかもしれない。人間がみんなマージみたいだったら世界はもっと平和だったのだろうけど、金のために愚かな計画を企てる人や、暴力ですべてを解決しようとする人がいるのが人間という生き物で、だからこそこういった事件が起きて映画にもなる。
という事でてっきり映画冒頭の文章を信じて実話だと今まで思っていた。映画を観た後にウィキペディアを見たら一部で実際に起きた事件からインスパイアされてはいるけどほぼ創作なのだとか。それもどういう事なんだろう?初めからそれを意図していたのか、それとも映画が出来て「これ実話って言ったらみんな信じちゃうんじゃない」くらいの感じの後付けだったのか。
実際に実話と信じて隠された約百万ドルを探しに現地を訪れた日本人女性を主人公にした菊地凛子さん主演の『トレジャーハンター・クミコ』(2014年)という映画も有るが(未見)、その日本人女性に関して確かに現地は訪れているのだけど百万ドルを探しに行ったわけではないらしい。それを知った上で映画は百万ドルを探す女性を主人公にしている。と、なんか『ファーゴ』に関しては色々と虚実が入り交ざっている。




『ナイル殺人事件』を観た。2020年、アメリカ、2時間7分。
エジプトを訪れた名探偵エルキュール・ポアロ。壮大なピラミッドを見上げながらティータイムを嗜もうとしていた所にピラミッドの中腹で凧揚げをしている男を見つける。情緒を台無しにされ憤慨するがその青年は友人であるブークであった。ブークは家族付き合いのある大富豪の娘リネットの新婚旅行に同行していた。リネットはある問題を抱えていてそのために予定を変更したナイル川のクルーズにポアロにも同行して欲しいと頼む。

新婚旅行に同行者がいるというのがよく分からない所ではあるけど金持ちだし、1912年とかの話なのでそういった事も有り得るのかも。
二発目の銃声は誰も聞かなかったんだろうか?三発目は銃声を消す細工はしていたけど二発目は細工はしないで普通に撃っていた様に描かれていたと思うが。誰も聞かなかったとしたのならそれは実際は犯人がそのように細工していたという事でいいのか。
真犯人は自分が犯人ではないアリバイ作りはしていたけど、クルーズ中の船内という場所で犯行が出来る人物が限定されている中で誰かを陥れるわけでもなくて、ただ自分が犯人ではないと証明出来れば逃げおおせると考えていたのだろうか?
もしポアロが一緒じゃなかったらどういう事になっていたのだろう?それでも第二、第三の犯行は起こるが結局犯人は見つけられず、でも確実に犯人は船に乗っていた人物という状況でエジプトの警察はどういう判断を下すのだろう?捜査は続けられるが時効を迎える。犯人は最初からその時まで待ち続ける計画だったのか?そういった犯人への疑惑が残る中で手にしたい物を手に入れられるものなのだろうか?と、疑問も有るが、登場人物のほぼ全員が誰かになんらかの愛情(愛憎でもある)を抱いていて、自分勝手な愛でもあるけどその愛ゆえに起きた殺人事件という事で異国情緒が漂い美女と美男が織りなすロマンチック殺人ミステリー。



『巴里のアメリカ人』を観た。1951年、アメリカ、1時間53分。
第二次大戦後パリに残り画家としての活動を続けるアメリカ人のジェリーがフランス人の娘リズに恋をする。

"テアトル・クラシックス ACT.1 愛しのミュージカル映画たち"にて。
https://www.theatres-classics.com/
6作品がラインナップされていてどれも名作、傑作らしい。とりあえず観てみようという感じなので何とは決めずに時間が丁度合う作品を観た。

ミュージカル映画の大スタージーン・ケリーが主演。しかしこれまで出演作品は1本も見た事が無く、名前は知っていたけど顔は知らなくてこういう感じの二枚目だったんだなと知った。誰かに似てるなと思いながら観ていて途中でスティーヴン・セガールに似ている事に気付いた。
あと、浦沢直樹先生の作品にはハリウッドスターに似せたキャラクターがよく出てくるがその中にジーン・ケリーに似せたキャラクターもいたんではないかと思う。多分。

本作は1951年度の第24回アカデミー賞で作品賞を受賞。観た後に知って意外だった。あくまで個人の好みとして。

監督はヴィンセント・ミネリ。ジュディ・ガーランドと結婚していたが1950年には離婚している。二人の間に生まれた娘がライザ・ミネリ。
本作には出ていないがジュディ・ガーランドもこの当時を代表する大スターだったのだなと思う。しかし輝けるスターを賞賛するともれなくハリウッドの闇も浮き彫りにされるという。本当に当時のハリウッドを象徴する存在。
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