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『どぶ鼠作戦』『血と砂』 [岡本喜八監督の映画]

『どぶ鼠作戦』を観た。1962年、日本、1時間42分。
第二次世界大戦末期、北支(中国北部)戦線。激戦は続き日本軍の新しく赴任してきた指揮官が捕虜となる。救出作戦を任命された特務隊には一本の短刀が渡される。それは救出が成された時に指揮官の自決を促すためのものだった。

まだ観ていなかった岡本喜八監督作品。『独立愚連隊』『独立愚連隊西へ』に続くシリーズ三作目だとか。三作品に話の繋がりはなく第二次世界大戦末期の北支戦線での物語のシリーズという事らしい。

主演はシリーズ三作品に出演している佐藤允(さとうまこと)さん。無骨ながら飄々としていてこういう役が自然に、そしてカッコ良く演じられる人もそういないんではないかと思う。
ジブリ作品『もののけ姫』ではタタリ神の声を演じられているが佐藤允さんと気付ける人はほとんどいないんじゃないだろうか。

主人公だけではなく他のキャラクターも戦時の悲惨さを感じさせない。本作が戦争の酷さ醜さを描いていないという事ではなくて、戦争の醜悪さがしっかりと下地に有りつつその中で戦争活劇が展開される。恐らく現実にはそういう活劇的な事は無かった。でもそんな事が有っても良かったのに。という意味で本作はファンタジーなのではないかと思う。
『独立愚連隊』以前は日本映画で第二次世界大戦を描くにあたって娯楽活劇作品というものは無かったらしい。なので『独立愚連隊』公開当時は好戦的という批判も有ったとか。

上原謙さんと加山雄三さんの親子共演作品。一緒のシーンは無かった。上原謙さんが加山雄三さんの代表作『若大将』シリーズに数本出ている様なので共演作品がそれほど珍しいという事でもないのか。



『血と砂』を観た。1965年、日本、2時間12分。
第二次世界大戦末期、北支戦線。戦禍を戦い抜いてきた曹長と音楽学校から学徒出陣してきた若者たちが前線に送られる。若者たちは曹長にしごかれ重要拠点である砦の奪還作戦に就く。

本作も『独立愚連隊』シリーズの一本とする見方も有るみたい。佐藤允さんも出演している。
確かに戦争活劇ではあるけどまだ初(うぶ)な若者たちを登場させる事によって反戦メッセージが色濃くなっている。
本作も現実には有り得なかった(有ったのかもしれない)という意味でファンタジーなのだと思うけど、それは当時の若者たち、戦時下で青春を過ごし短い一生を終わらせられた若者たちにせめて映画の中で活劇映画の登場人物となって活躍してもらおうという、ご自身も戦時下で青春時代を過ごした岡本喜八監督ならではの戦友たちへの慰霊、鎮魂なのではないかと思う。



新文芸坐、「映画を通して歴史や社会を考える"反骨の映画作家・岡本喜八の流儀"」の二本立てで観た。
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