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『ブラックボックス:音声分析捜査』『コーダ あいのうた』『ライダーズ・オブ・ジャスティス』『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』『シルクロード.com ‐史上最大の闇サイト‐』 [映画]

『ブラックボックス:音声分析捜査』を観た。2021年、フランス、2時間9分。
乗客乗員全員が死亡した旅客機墜落事故の原因を調べる航空事故調査局。回収されたブラックボックスと呼ばれるフライトレコーダーの音声を分析すると事故ではなくテロの可能性がある事が分かる。

ネタバレ有。

テロの方向で話は進んでいくのかと思わせる。まんまと引っ掛かったのは主人公も一緒だけど主人公は有能なので別方向への道筋を見付けられる。そもそも主人公が引っ掛かったのも有能だから。
いくら便利なものを発明、開発したとしてもそれを使う人間が使いこなせなかったり悪用すれば逆に人間にとって脅威になってしまうという事なのだろう。それを代表するものの一つが飛行機であって、人間が大空を飛ぶ夢の道具として発明されたものの軍事兵器としても使われ、旅客機でも航空業界が自分達の利益を優先させると安全性が損なわれ非常に危険な乗り物になってしまう。
本作の悪者どもに反省も後悔も全く見られない所も問題。まあでもそんな簡単に反省されてもという所ではあるからあれくらいふてぶてしい方が悪役としてはいいのかも。



『コーダ あいのうた』を観た。2021年、アメリカ=フランス=カナダ、1時間52分。
港町で漁業を生業とする一家は両親と兄が聾啞者で妹のルビーだけが健聴者。そのためルビーは幼い頃から家業や家族の諸々の事に責任を負っていた。高校の新学期の選択授業で合唱を選んだルビーはその才能を認められ合唱にも打ち込む事になるが歌う事に対する両親からの理解はなかなか得られずにいた。

本作の予告を見た時に同じ様な映画がなかったっけか?と思ったら2014年のフランス映画『エール!』の英語リメイク作品だった。
『エール!』は多分予告しか見た事が無いので本作がオリジナルに忠実なのか、アメリカに舞台を移した事で物語もそれに合う様に変えているのかは分からないが、アメリカ映画ならではのハートフルドラマといった感じなので変えているんじゃないかと勝手に想像する。
ハートフルなシーンでは父親が娘の門出を見送る場面が有る。シチュエーション的に名シーンになる確率が高い様に思う。ただ単に『プリティリーグ』にそういったシーンが有ってそこでいつもウルウルしてしまうからそう思うのだけど。

ルビーのお兄ちゃん役の人の面構えが良かった。ダニエル・デュラント。ちょっとクライヴ・オーウェンに似た感じ。
あのお兄ちゃんもルビーとは違う葛藤を抱えていて、自分がお兄ちゃんだからもっと家族から頼られたいのにそれが叶わないでいる上に自分も妹に頼らなければいけないケースが多く有る。両親から頼られている妹に嫉妬しつつ妹が自分たちに束縛されずに自由でいる事も願っている。そんなお兄ちゃんのドラマももっと掘り下げて欲しかったが、ルビーが自分の道を進んでいったという事が作品的にはハッピーエンドであるし、お兄ちゃん的にも良かったのかもしれない。

ルビーが思いを寄せている男子学生が赤い頬っぺたでもしかして『シング・ストリート 未来へのうた』で主役だった子なのではないかと思いながら観ていて後で調べたらやっぱりそうだった。フェルディア・ウォルシュ=ピーロ。名前が覚えづらい。何かニックネームは無いのだろうか。フェルウォルピーとかフェウォピとか。

そういえば『シング・ストリート』の主人公のお兄ちゃんも弟の選んだ人生を応援するお兄ちゃんだった。演じていたジャック・レイナーはその後にアリ・アスター監督の『ミッドサマー』でえらい目に遭う青年役を演じる。ダニエル・デュラントがそんなえらい目に遭う映画も観てみたい。



『ライダーズ・オブ・ジャスティス』を観た。2020年、デンマーク=スウェーデン=フィンランド、1時間56分。
列車事故で妻を失った軍人のマークス。同じ列車に乗っていた娘は助かり父と娘の二人暮らしとなるが二人の心の傷は癒えず、これまで離れて暮らす事も多かったため父娘の関係はギクシャクとしていた。
ある時マークスの前に列車事故の原因がギャング組織"ライダーズ・オブ・ジャスティス"にある確率が極めて高いと分析する数学者が現れマークスはギャングへの復讐へと突き進んでいく。

てっきり復讐モノかと思っていた。途中まではその様な感じであったけど段々とそうではないのか?と疑問を持ち始める。そして観終わった時にはこれは一体何だったのだろう?と、どうにも掴み所が無いと言うか掴むのが難しい映画だった。
ブラックコメディの大人の寓話。という事で一応納得はしてみた。
寓話であると共にセラピー映画でもあったのかとも思う。それぞれの心の傷を持った者達が心を通わせる事でお互いの傷を癒していく。みたいな。そんなハートウォーミングな内容だけどバイオレンスも満載と変わった映画。変わってるのは北欧映画ならではだからだろうか。



『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』を観た。2021年、アメリカ、1時間37分。
ニューヨーク。転校した学校でいじめっ子に目をつけられている6年生のメアリー・エリザベスは目立たないようにしてやり過ごそうとしていた。しかし小さな赤い子犬と出会った事でニューヨーク中で一番目立ってしまう。

こういった場合でかくて赤い犬の存在を何とかして隠そうとするのが一般的ではないかと思うが、そこはニューヨークなので堂々としていた方が逆に目立たないというのがなるほどなと納得だった。そもそもあのでかさでは隠しようが無いので結果的にはニューヨークでも目立つんだけど。隠せないものは隠せないんだから堂々としていた方がいいよ。というのが今の時代に合っているのかもしれない。

ジョン・クリース以外は知らない人たちだなと思っていたが主人公のお母さん役の人は『バイオハザード』シリーズに出ていたシエンナ・ギロリーだった。

でっかくなっちゃった猫とかゴルフカートを運転しちゃったオランウータンなどのシリーズ化を観てみたい。






『シルクロード.com ‐史上最大の闇サイト‐』を観た。2021年、アメリカ、1時間57分。
何者にも束縛されない自由を謳い闇サイト"シルクロード"を立ち上げ成功させた若者ロス・ウルブリヒト。その自由は法に触れサイバー犯罪を専門とする刑事達にネット上で追われるがロスは素性がバレないシステムを構築していた。
サイバー犯罪課に事実上の左遷をされ閑職に追いやられたリック・ボーデンは現場主義の叩き上げの刑事でその経験を用いてロスへの接触に成功する。

デジタル社会に取り残されているという点において完全にリック側の立場で映画を観ていた。リックの場合執念でそこそこ使いこなせるようになるのがカッコ良かった。
実際に起きた事件を基に独自の解釈を盛り込んで作られたらしい。こういった事件が起きていた事自体知らなかったので事件の概要も顛末も知らなかった。本作では何が起きたのかは描かれるがあまり詳しく突っ込んでは描かれない。でもそれでも殆ど問題は無かったし不満にも思わなかった。あんまり詳しく描かれても理解出来なかったかもしれないし。
事件はあくまで概要にとどめて犯罪者と刑事の追われる者と追う者、どちらが優勢でどちらが劣勢か。状況によって変化していくその力関係が描かれていて面白かった。
サイバー的な事に関してはロスは天才でリックは凡才以下、しかしロスは犯罪者としてはド素人でリックは刑事としては海千山千のベテラン。闇サイト事件はどの様な結末を迎えるのかおおよその事は想像出来るのだけどその中で二人の力関係の決着はどの様につけられるのか天才のド素人が勝つのか凡才以下のベテランが勝つのか、そこは読み切れなかったので最後まで興味深く観れた。

テロップ大きい映画好きなのでその点でも良かった。

リックの情報屋役の人が良かった。ダリル・ブリット=ギブソン。観た映画の中では『スリー・ビルボード』や『キアヌ』に出ていた。
ダニエル・カルーヤがアカデミー賞助演男優賞を受賞した『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』にも出ているらしい。
配信が始まっているのをすっかり忘れていた。今年のアカデミー賞授賞式とかのタイミングで劇場公開されたりはしないのだろうか。
このサムネイルでは「予告編」の文字で顔が隠れているのが多分ダリル・ブリット=ギブソン。

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