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赤鼻のトナカイ・ザ・ウォー [トナカイ]

真っ赤なお鼻のトナカイさんは

いつもみんなの笑い者

でもその年のクリスマスの日

サンタのおじさんは言いました

暗い夜道はピカピカの

お前の鼻が役に立つのさ

いつも泣いてたトナカイさんは

今宵こそはと喜びました


サンタのおじさんとトナカイたちは光の届かない深い宇宙の暗闇の中にいた。
物体が物体として存在できる速度を遥かに超えてしまったため、サンタのおじさんとトナカイたちは一つに溶け合い意識の集合体として宇宙にも溶け合っていた。
溶け合った中でトナカイたちは見て感じ共有した。サンタのおじさんの中にある深い心の闇を。

宇宙と一つになっていたサンタのおじさんとトナカイたちはある星の引力に導かれそれぞれを取り戻し、その星へと降り立った。
その星の環境は驚くほど地球と似ていた。若干の重力の重さが気になる所ではあったが普段の生活での支障は感じられなかった。

その星には季節の移り変わりもあり、朝晩に肌寒さが感じられる頃サンタのおじさんの表情に厳しさが見え隠れするのをトナカイたちは敏感に察していた。
次第に言葉にとげとげしさが現れ、トナカイたちを見る目にも凄味が増してきた。
トナカイたちは練習を始めた。もちろんこの星をサンタのおじさんと一晩で駆け巡るために。

練習を始めて改めて思い知らされたのはこの星の重力の重さだった。地球と較べて微差ではあるが一晩で駆け巡るとなるとその微差が積み重なり膨大なものとなってトナカイたちにのしかかる。
自分たちの力だけではどうにもならないと悲観したトナカイたちは戸惑い、サンタのおじさんは怒り狂った。
この星では無理だ。トナカイたちにその考えがよぎったがサンタのおじさんにその考えはこれっぽっちも無かった。

重力の重さはサンタのおじさんのムチにより大きな影響を及ぼしていた。
ペシッ、ペシッ。とまるで弱弱しい。トナカイたちのあきらめムードを高めるのに十分過ぎたがそれでもおじさんはムチを振り続ける。
やがて鬼の形相で滝のような汗を流し一心不乱に振り下ろしていたムチに変化が訪れる。
ビシッ! バシッ! ズバシッ!! ズズドバシーンッ!!!
ムチを振り下ろしていた巨木が木っ端微塵に砕け散りトナカイたちの目にも失われていた輝きが戻った。

そしてサンタのおじさんが独断でその星の聖夜と定めたその日はやってきた。
その夜は壮絶を極め、12頭いたトナカイたちは赤鼻のトナカイただ1頭を残すだけになっていた。
すでに足は止まっている。動かそうという意思はある。だがもう動かないのだ。
サンタのおじさんのムチもその時点で力無くまるでそよ風のように優しく肌を撫でるだけでそれがより一層の悲愴を感じさせる。

ブヒヒッ!
その時うなだれる赤鼻のトナカイの鼻が突如輝きを増し煌煌と光り輝いた。
ブヒヒヒヒーンッ!
真っ赤な光は赤鼻のトナカイと繋がれたままの11頭のトナカイたちの骸を包み込み、その光がサンタのおじさんの中へと入りおじさんの鼻が赤々と光りだした。

おじさんの体はみるみる膨れ上がり煌めく星星もその巨体に隠され濃いダークブルーだった夜空は完全な暗闇となった。
体内からは赤い液体が滲みおじさんの全身を深紅に染め上げると目からゴウゴウと燃え上がる炎が全身を覆った。
闇に燃える真っ赤な炎の中にそびえ立つ巨大な人影。その姿は、そう悪魔。悪魔と呼ぶのに相応しい姿だった。
紅蓮の炎を纏ったムチは一振りで山を薙ぎ払い、一撃で大地を裂いて奈落の谷を作り出した。
あらゆる生き物は逃げまどい、全てのものは燃やし尽くされ、海は枯れ果てた。
そして悪魔はおぞましい雄叫びを永遠に続く恐怖としてただそれだけを住人たちに残し忽然と消え去った。

平和そのものだったその星は一変した。
住人は悪魔に恐れおののきそれ以来その日を悪魔の日と定めるが、それを神と崇める者たちが現れ両者の言い分の違いは長く続く大きな争いへと発展した。

サンタのおじさんとトナカイたちをその日以来見た者はいない。

俺たちゃトナカイ、サンタのおじさんと心は一つ
俺たちゃトナカイ、サンタのおじさんと体も一つ
例えサタンと呼ばれたとしても
おじさんと共に駆け続ける
いつまでもどこまでも
例え争いを起こしたとしても
おじさんと共に生き続ける
いつまでもどこまでも
俺たちゃトナカイ、サンタのおじさんと心は一つ
俺たちゃトナカイ、サンタのおじさんと体も一つ
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いつだってやめられる1、いつだってやめられる3 [ア行の映画]

いつだってやめられる 7人の危ない教授たちを観た。
不遇な扱いを受ける学者たちが違法ではないドラッグを製造販売。

いつだってやめられる 戦う名誉教授たちを観た。
刑務所に収監されている学者たちが神経ガスによるテロを未然に防ごうとする。

ネタバレ有。

いつだってやめられるシリーズの1作目と3作目。ル・シネマにて。
シリーズ2作目のいつだってやめられる 10人の怒れる教授たちは今年の6月に観た。ル・シネマで。
ル・シネマその時以来だけど、その間に長い事(4か月)休館していて、どれだけ変わったんだろうとちょっと期待していたが映画館の施設は全然変わっていなくて残念。

シリーズ3作品の2作目観てから半年後に1作目と3作目を続けて観るというかなり変則的な観方になってしまった。
しかも2作目の内容をかなり大雑把にしか憶えていないという。3作目にそれまでのおさらいが有るのを期待していたがそれも無いという。
そうなると問題は3作目だけど、それでも一応何とか大体の内容は理解出来た様な気がする。当然シリーズの順を追って観た方がいいには決まっている。

素人ギャング集団がドラッグ密売に手を出した事による顛末を描くドタバタコメディの1作目から、ドラッグの製造が神経ガスの製造へとつながってあわや一大テロ発生か。という膨らませ方が面白い。
そのテロの規模が思っていたよりこじんまりとしていたのが残念だったけど、基本ドタバタコメディなのであれ位でいいのかもしれない。
学者側には10人だか11人だかそれくらいの人数がいてそれぞれのキャラに合わせた見せ場がちゃんと有るのが良かった。
やっぱり主人公が一番見せ場が多い訳だけど、その主人公を演じたエドアルド・レオはサンドラ・ブロックに似ている。

気になるのはこれは初めから3部作にする予定で作られていたのだろうか。3作品を通して話が上手くつながっている所には感心するけど、それはちょっと強引過ぎるのではと思えたりする所もある。

一応一つの区切りはついたがこの先も続けられそうな感じ。新3部作とか。
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