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『ヘル・レイザー〈4K〉』『マエストロ:その音楽と愛と』 [映画]

『ヘル・レイザー〈4K〉』を観た。1987年、イギリス、1時間35分。
究極の快楽を得るため男が手に入れたボックス。しかし快楽を得るのにはその代償も受けなければならなかった。

シネマート新宿にて。2Kでの上映。
4Kで上映されている所は有るのか分からない。

『ヘル・レイザー』と言えばのピンヘッドの存在だけは知っていたが怖いのでこれまで観れず今回が初見。シリーズ化されるが1作目だけに・(中黒)が入って2作目以降は『ヘルレイザー』になるのだとか。ウィキペディアより。
とにかくビジュアルの完成度がとんでもなく高かった。1980年代のまだCGが本格的に登場する以前での最高到達点ではないかと思った。
それだけのビジュアル、恐らく出来上がるまでに労力も時間も相当に掛かっているのだろうけど映画の中で映し出されるのはじっくりと鑑賞出来るほどの長い時間ではなくて、ここまで作り込んだからじっくり見て欲しいと長い時間映したら映画としてのテンポが悪くなるかもしれない。テンポを最優先させて一瞬だけしか映さず、その一瞬だけでも完成度の低いものが映し出されたらここぞとばかりにやいのやいのと言われたり。映画は贅沢な芸術、娯楽である事を思い知らなければならないと思った。
ジャッキーの映画でここぞのアクションシーンで別テイクやアングルの違うカットを繰り返し見せる(『プロジェクトA』の時計塔からの落下や『ポリス・ストーリー』のデパートでの落下など)のを確かスチャダラパーのどなたかが「ジャッキー・エフェクト」と命名していたが、恐らくその編集はジャッキー自らがやっていて、それはサービス精神も有るのだろうけどそんな命懸けのアクションをわずか数秒で終わらせるのは忍びない、せめてあと数秒だけでも見て欲しいという想いからなのではないだろうか。それにより「ジャッキー・エフェクト」と呼ばれるような印象的なアクションシーンになったとも言える。
その手法は日本ではバラエティ番組での罰ゲームやドッキリ企画に受け継がれているのではないだろうか。

話の内容は難しくは無いのだけど分かったような分からなかったような。キリスト教的な側面が有るのだろうなとは思うがあまり詳しい説明がされないのが原因かもしれない。そこが謎めいていて幻想的ではあるのだけど。



『マエストロ:その音楽と愛と』を観た。2023年、アメリカ、2時間11分。
アメリカを代表する音楽家レナード・バーンスタイン。名声を得てからの妻フェリシア・モンテアレグラと歩んだ人生を描く。

音楽のジャンルに関わらず名を成した音楽家というの平穏で平坦な人生では無いのだなと思って、やっぱりそういう映画になってしまうのかとも思った。
それは全ての芸術家に言えるのか。平穏な人生を望むようでは芸術家には向いていないのかもしれない。波乱の人生だからドラマチックな映画にもなるのだろうし。
「芸のためなら女房も泣かすそれがどうした文句があるか」「酒や酒や、酒買うてこい」のド演歌『浪花恋しぐれ』のモデルになった上方落語の初代桂春団治もまた然りで。


これまでレナード・バーンスタインについてはミュージカル映画『ウェスト・サイド物語』の音楽を担当していた事くらいしか知らなかった。
アメリカを代表する偉大な音楽家という事だけどその偉大さは本作を観てもあまりピンと来ない。『ウェスト・サイド物語』の事にもほんの少ししか触れられない。



『リドル・オブ・ファイヤー』で寝た。

ヒューマントラストシネマ渋谷 "カンヌ監督週間 in Tokio"にて。

近頃は観たいと思える映画が映画館であまり上映されずやっと観たいと思えるのが上映されたら居眠りしてしまうという。観る映画が減る中でも順調に居眠り映画を増やしていくスタイル。

早い段階で寝たのであまり長い時間ではないけど観ていた間での印象はウェス・アンダーソン監督作品の様な、北欧の子供が主役の映画の様なでカンヌに選ばれる作品な感じだった。

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『君たちはどう生きるか』『バッド・デイ・ドライブ』 [映画]

『君たちはどう生きるか』を観た。2023年、日本、2時間4分。
戦時中の日本。空襲で母親を亡くした牧眞人(まき まひと)少年。一年後父親は妻の妹夏子(眞人にとっての叔母)と再婚しその元へと父子揃って疎開する。眞人を出迎えたのは叔母とそして一羽のアオサギだった。

二回目。初回の時は導入部プロローグが長いと感じたがやっぱり長かった。テレビアニメ世界名作劇場『赤毛のアン』の時にアンがカスバート家に引き取られるまでに6話、放送期間でいうと一ヶ月半を費やしたバクさんからしたら宮さんもまだまだなのかもしれない。
本作での導入部が長かったからといって退屈だったという事ではなく、ただ、エピローグの呆気なさからすると変わったバランスの作品ではあるなと思う。しかしそれでも成立させてしまうという。
眞人が小説の『君たちはどう生きるか』を読むのが眞人の人間性と物語としての大きな転換点でそこからが本題なんだろうと思う。本作のタイトルにもなっているくらいだし。
『君たちはどう生きるか』は未読なので小説なのかエッセイ的な読み物なのかも分かっていないが本作を理解するにあたっては読むべきなのだろうと思うが思うだけに終わってしまうかもしれない。

作画が良かった。作画監督は本田雄(ほんだ たけし)さん。本作では作画面では本田さんに一任されていたのだとか。なんと言うかこれまでのジブリ作品とは違う艶っぽさが有ったと思う。さすが業界内で大御所達からも「師匠」と呼ばれている凄腕アニメーター。
インコたちのデザインがちょっと手抜きの様に見えるのはあの擬人化されたインコたちは大伯父が創造したもので、ペリカンは上の世界から連れてこられたんだったっけか?大伯父にはそういうキャラクターデザインの才能はそんなに無かったんだろう。
液体の描写がドロッとしているのは変わらずだった。ああいう感じが顕著になったのは『千と千尋の神隠し』からだろうか。あれがちょっと苦手。『もののけ姫』にも有ったか?

巷の本作への意見を聞きかじった感じでは賛否両論、観る人によって見方も異なる。
その意見や見方も同じ人でも観る度に異なったり別の見方になる。その様な作品だと思った。
大伯父が地下の世界で作ろうとしていたのは地上の世界とは違うそこで生きるもの全てが平等で争いの無い完全な世界だったのだろうと思う。インコ大王はそういう名前なだけで君主ではなくインコ集団のリーダーという存在なのだろう。
しかしその世界は完全である事を維持し続けなければならずとても脆く壊れやすい。確かに殺生が許されない世界で肉食動物は何を食べればいいのかという事だし。そのために殺生する人間を特別に許すとか完全な世界からはちょっとずつズレていくがそれでもこれが完全であると言い張るしかない。
そういった大きな理想を掲げて成功したかの様に思えたが理想とは違う方向に向かっていくのはロシア革命とその後のソビエト連邦と似ているのだろうか。
世界の生き物が全て草食動物だったら殺生は無くなるのかと言えばそれでは草木が全て食い尽くされて食うもの無くなって生き物全滅の末路になるのだろう。草木が有って草食動物がいて肉食動物がいてその食物連鎖で生き物のバランスは取れていて、そこには殺生という行為がどうしても必要になってくるわけで。その弱肉強食を言い訳にして殺し合いや戦争を成立させている。
大伯父が不完全と考えているであろう地上の現実の世界は確かに不完全なのかもしれないが不完全である事で上手い事バランスが取れている。本作自体の構成のバランスが変わっているのもその事を現しているのかも。
『風の谷のナウシカ』の原作では腐海の世界で生きる人間は浄化される過渡期に適応するように人工的に施された存在であり、浄化が成された時には不必要とされるが果たしてそこで生き抜いてきた人間は本当に不必要な存在なのか?否っ!とナウシカは言う。眞人もまた大伯父に自分の後を継いで完全な世界を保ち続けて欲しいと言われても断る。生きるものを変えようとした『風の谷のナウシカ』と世界を変えようとした本作。人間が自分たちだけのために自然の摂理に反して物事を変えようとすると強烈なしっぺ返しを喰らうと。

キリコおばあさんの若い頃に煙草を吸う描写が無かった。おばあさんの時のキャラクターからすると若い時の仕事の後の一服とか入れるべきだったと思うが敢えて一服の描写を入れなかったのだとするとやっぱり理由が有るんだろうと思う。完全を目指した世界では煙草は害悪でしかなくて、だから排除されていて煙草そのものが存在しないのか?

眞人の母親の子供時代の声がミュージシャンのあいみょんさんと知って驚いた。めちゃくちゃ上手いんだけどただ上手いだけじゃなくて声に個性が有る。
あいみょんさんはこれまでに演技経験は有ったのだろうか?誰があいみょんさんに声優としての素質が有るのを見抜いたのか?鈴木プロデューサーか。

二回目は109シネマズプレミアム新宿にて。109シネマズプレミアム自体も二回目。料金の事を抜きにすればやはり落ち着いて映画を観られて良い。
多分今のところあの料金設定でもやっていけているのだろう。素人が単純に考えれば一人入場すれば二人分の利益になるわけで、二人入れば四人分、四人入れば八人分と。高価格設定に見合うだけの初期費用と維持費への投資は必要だけど通常の営業で十分に取り戻せるという事か。
飲み物一杯とポップコーンがサービスされる。持続可能な社会の取り組みとして飲み物のストローは紙ストロー。初めて使ったけど人によっては紙の味がしてしまうらしいが舌がバカなのでそれは気にならなかったが途中から水分に浸かっている部分がふにゃふにゃになるのが使いづらい。コップの方も紙製だったと思うがコップがふにゃふにゃになる事はなく。紙の厚さで違ってくるのか。
ストローを作る工程はプラスチックなら円筒型になるよう引き伸ばして(どうすれば円筒型になるのかはさっぱり分からないが)それを適宜な長さにカットするのだろうけど、紙の場合は細長い紙をお菓子のピコラの様に螺旋状にローリングさせて糊で接着するという方法だと知った。他の作り方も有るのか?
持続可能のためには石油原料はなるべく使わない方がいいという事なんだろうけど紙の方が製造の手間が掛かるように思えるしその分の燃料費なんかを考えるとどうなんだろうか。
ストローを使うのであればいっその事原点に帰って麦わらをなんにも加工しないでそのまま使えばいいんじゃないだろうか。それで使いづらいとか言って遺伝子操作してストローに適した麦が作られるのかも。だからそういう身勝手な事はしない方がいいよ。と宮崎駿監督は仰られているのだろう。





『バッド・デイ・ドライブ』を観た。2023年、イギリス、1時間31分。
見知らぬスマートフォンに掛かってきた通話から車内に爆弾が仕掛けられている事を知らされた男。座席から離れた瞬間に爆破装置は起動する。

池袋シネマロサにて。

韓国映画『ハード・ヒット発信制限』のリメイクかと思ったがオリジナルはスペインの『暴走車ランナウェイ・カー』。ドイツでのリメイクは『タイム・リミット見知らぬ影』。スペインとドイツのは未見。
韓国のとはちょっと違う内容になっていたかと思うがどちらかがオリジナルに忠実でどちらかがアレンジしていて、もしくは両方ともアレンジしているのか。

本作のリーアム・ニーソンは座席から離れられないのでノー・アクション。車に乗る前にサンドバッグを叩いていた。
元々名前を知られるようになったのは体がデカいという意味での大型演技派でという印象だった。そんな中で『ダークマン』(1990年)という怪作も有ったがアクションスターとしてのスタートは2008年の『96時間』からだろうか。
そろそろ演技派に戻ろうかなという事なのだろうか。その前に30年以上振りの『ダークマン』の続編で年老いたダークマンを観てみたい。ダークヒーローとしてのダークマンは事前の準備が一番大切でそれを用意周到にしていれば成り立つから年老いていても全然問題は無いと思う。


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『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』 [映画]

『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』を観た。2021年、アメリカ=メキシコ、1時間46分。
学生時代からの無二の親友バーブとスター。アラフォーとなった現在も同じ職場で働き、別々の事情で共に夫を失ったため同じ家で暮らしている。突然職場が廃業する事になり行く末を案じる二人はとりあえず気分を変えるためにフロリダのリゾート地ヴィスタ・デル・マールへとヴァカンスに出掛ける。

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』と同じくクリステン・ウィグの脚本・主演作品。W主演のアニー・マモローも『ブライズメイズ』に出ていたらしいが覚えていない。『ブライズメイズ』も2011年の作品でもう12年も経ってしまった。
なので『ブライズメイズ』の作品自体の事をあまり覚えていない。女性が主人公の映画となるとコメディであっても生活感が滲み出てしまって最終的にはちょっと感動みたいな作品になりがちではないかと思う。クリステン・ウィグの脚本作品、『ブライズメイズ』と本作しか観ていないけど生活感をあまり感じさせないし感動もそんなにしない。『ブライズメイズ』はどうだったかやはり思い出せないが。生活感が無くて感動もさせない所がコメディとしてとてもいいと思う。ひたすら笑わせるためだけの物語とキャラクター。それに徹しているからエンドクレジットでの印象的なシーンを振り返る仕掛けに自然と笑顔になる。
コメディとしての欠点になるのかもしれないが主人公の二人は至ってまともな人物。異常に仲が良くて二人ともお喋りなだけ。素っ頓狂な言動をするいわゆるおバカキャラではない。だからコメディとしてはちょっと弱くなるのかもしれない。
そんな二人は元々故郷の田舎町での生活にはなんの不満も無く。しかし今風な視点からすると田舎町での生き方は本当の自分たちを押し殺していたという事になり、それが色々ドタバタが有って解放される物語は『バービー』と通じる所も有るのかもしれない。
追記
二人が異常に仲が良いために二人だけの世界を作ってしまう。それが周囲に迷惑をかけていなくもない。二人だけの世界に閉じこもりがちだったのがヴィスタ・デル・マールで外の世界とも繋がる事になる。その事によって二人の間に色々有るけどそれでも二人の仲の良さは変わらないままなのが本作の一番の美点だったのだと思う。追記終わり。

本作のヒロイン役、男性だけど。ジェイミー・ドーナンはなんかで見た事はある人だなあと思いながら観ていた。全米大ヒットのエロティックサスペンス『フィフティなんとか』シリーズで人気になった人だった。『フィフティなんとか』シリーズは観ていないのでなんかで見たのは予告とかだったのか。観ていないけどエロティックなのは知っている。サスペンスなのかは知らない。
そのエロティックイメージでの本作のヒロイン役になったのでは。

有名どころのカメオ出演としてはあの人と、これはネタバレになってもいいのだと思うが一応

ネタバレ有り。

モーガン・フリーマン。モーガン・フリーマンはてっきり本人だと思っていたけどIMDbで確認すると別の人による物真似だった。そっくりだった。
有名どころではない人(自分が知らないだけかもしれない)のカメオ出演も有った様な感じっぽい。

デイモン・ウェイアンズ・Jrという人が出ているがその名前の通りデイモン・ウェイアンズの息子。デイモン・ウェイアンズに子供がいるのも当然だろうなと思ったけどJrの年齢が40代初めと知るとそんな中年の子供がいるのが驚きだった。そうなると孫がいて20代の可能性も有る。デイモン・ウェイアンズ・JrJrになるのか
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『ロスト・フライト』 [映画]

『ロスト・フライト』を観た。2023年、イギリス=アメリカ、1時間47分。
大晦日のシンガポールから東京へのフライト。機長のブロディ・トランスはフライト後にハワイ、ホノルルで大学生の娘と新年を過ごす予定だった。しかし離陸して間もなくフィリピン上空で予想はされていた悪天候により機体の制御を失ってしまう。

面白かった。しかし興行としてはそれほどヒットしたとはいかなかったみたいで、配信などで稼げるのかもしれないが。『コマンドー』とか『ダイハード』とかの時代だったら間違いなく大ヒットもしくはそれなりにヒットしてトランス機長がアクション映画のアイコンの一人になっていた可能性も有ったと思う。ジェラルド・バトラーの熱演も流石だったし。時代的に登場するのが遅かったのが悔やまれる。
今の時代悪役にも何かしらのドラマと言うかバックグラウンドがないと悪役として成立しないのかもしれない。本作の悪役にも悪役にならざるを得ない理由自体は有るのだろうけど映画の中では描かれない。ただ凶悪で残酷で野蛮な集団として描かれる。アクション映画の悪役としてはそれは間違っていないと思うが差別的な表現とも取られかねない。
本作では悪役だけに限らず登場人物が抱えているドラマにはそれほど踏み込まない。それが物足りないのではなくて、多分1日か1日未満の出来事で余計なものを盛り込まないのがすっきりとしていていい。

近年、個人的には2019年の『エンド・オブ・ステイツ』からアクション映画においての安心安定のジェラルド・バトラー印の作品(製作も兼ねている)を提供してくれていて嬉しい限り。
今後も大統領警護官マイク・バニングを演じている『エンド・オブ』シリーズ4作目だったり(ボンバーマン爺さんニック・ノルティの出番は有るのか?)『ザ・アウトロー』(2018年)、『グリーンランド地球最後の2日間』(2020年)の続編等も予定されている。もしかしたら本作の続編も有ったりするのかもしれない。
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『スラムドッグス』 [映画]

『スラムドッグス』を観た。2023年、アメリカ、1時間34分。
どれだけ邪険にされても飼い主の事を愛して止まない犬が飼い主のチンコを噛み千切る決意をする。

下ネタ盛り沢山のコメディ。そういう情報は事前に得ていたのでこれは我が百点映画『お!バカンス家族』に似た感じなのかも。と期待していたがどちらかというと宣伝コピーにも題名が出ていた『テッド』に近い感じだった。一括りにしてしまえば下ネタコメディという事にはなるけど自分の中ではちょっと違う。『お!バカンス家族』が『クレヨンしんちゃん』だとすると『テッド』は『がきデカ』といったところだろうか。と言いながら『がきデカ』は詳しくは知らない。死刑!
それにしても本作は下ネタを目一杯詰め込んだな。とある意味で感心する。犬がそんなに下の事ばかり考えているだろうかとも思うが。人間の事を考えれば本作の犬たちとそんなに変わりないのかもしれないし。その人間が犬たちの逆襲を喰らって去勢されるのは因果応報と言うしかないのだろう。

確認はしていないが犬たちの立ち振舞いには恐らくCGも使っているんだろうと思う。CGを使ってないんじゃないかと思えるほど自然に見えた。映画賞のそういった部門で受賞なりノミネートされたりするんじゃないだろうか。『ジャッカス クソジジイのアメリカ横断チン道中』も2013年のアカデミー賞のメークアップ部門でノミネートされたし。作品としては権威的なアカデミー賞とは絶対縁が無いのに評価するべき所はちゃんと評価するのがいいなと思う。残念ながら受賞はならず。受賞作は『ダラス・バイヤーズクラブ』。
映画の登場キャラクターとして顔の表情が無いのは魅力に欠ける所ではあるけど、でもCGで犬に表情を付けたら気色の悪いものになってしまうかもしれないし難しい所ではある。
その分声の演技でキャラクターはしっかりと表現されてはいる。主人公の犬の声はウィル・フェレル。『エルフ サンタの国からやって来た』とか『主人公は僕だった』などのおバカとはちょっと違うピュア過ぎるキャラクターをやっても上手いし面白いなあと思う。日本語吹き替えではロバートの秋山さんなのは気になる所。きっと上手いんだろうけど。

ジョシュ・グリーンバウム監督は前作のクリステン・ウィグ製作・脚本・主演の『バーブ&スター ヴィスタ・デル・マールへ行く』の評判が高かったらしい。ウィル・フェレルも製作に加わっている。
日本でも劇場公開の予定は有ったけどコロナで中止になったとか。そういえばそんな事が有った様な気もする。と都合よく記憶を上書きしてすぐに忘れる。その後一部の映画館でかなり限定的に上映はされたらしい。
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アビス4K [映画]



アメリカでジェームズ・キャメロン監督作品『エイリアン2』『トゥルーライズ』『アバター』そして『アビス』が4Kブルーレイ化される。
それにあたり『アビス』が12月6日に一夜限りで劇場公開される。という事でいいのか?日本でも一夜限りとは言わずにやればいいのに。
"SPECIAL EDITION"という事だから2時間51分の『完全版』。個人的には『144分版』の方を映画館で観たい。
元々は20世紀フォックスなので『アビス』も今はディズニー。名前を変えた20世紀スタジオはディズニーの子会社。
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『ドミノ』『SISU/シス 不死身の男』 [映画]

『ザ・キラー』でダウンした。
ネットフリックスの映画をわざわざ映画館まで観に行ったが途中から気持ちが悪くなる方の頭痛になってこれは家に帰れなくなるかもと思って最後まで目を閉じて安静にしていた。どうにかこうにか家には帰れたのと後日に体調不良を引きずらなかったので良かった。
途中まで観ていた映画はスタイリッシュな殺し屋映画みたいな感じで良かったけど、自分の中での規律、自分の感情を持ち込むな流されるな。を徹底して重んじていた一流の殺し屋がその規律に反する事になる己の感情だけのための復讐を規律を重んじながら行う様が描かれていて、規律に反する事を規律に則って行うある意味で倒錯した面も有ったんではないだろうか。殺し屋という職業(?)自体に倫理や道徳を持ち込んでもしている事そのものが倫理や道徳に反している事だから元々が倒錯はしている。
自分の中での規律に反した復讐の結末はどうなったのか。大概そういうのは失敗するものだけどミステリー状態のままでわたくしの映画人生終わるのかもしれない。



『ドミノ』を観た。2023年、アメリカ、1時間34分。
刑事のダニーは娘を誘拐され犯人は捕まるが犯人は自分が誘拐した記憶すら失っていて娘の居場所が不明なままだった。銀行が襲撃され貸金庫が狙われるという一報で銀行に向かったダニーは一足先に貸金庫の中身を確保する。そこには娘の写真があり「レブ・デルレーンを見つけろ」というメッセージが書かれていた。

予告の段階から今までのロバート・ロドリゲス作品っぽくはないなと感じでいたが本編を実際観てもやっぱりロバート・ロドリゲス作品っぽくはなかった。どこがどうでとか詳しい事は分からないけどトニー・スコット作品っぽさがあった。と思っていたらトニー・スコット監督も邦題が同じ『ドミノ』(こちらは原題も"DOMINO")を2005年に撮っていた。ちなみにブライアン・デ・パルマ監督も2019年に『ドミノ 復讐の咆哮』(原題"DOMINO")を撮っている。
主に映像はトニー・スコットっぽさがあって、物語はフィリップ・K・ディックっぽさがあったが、ベン・アフレックは2004年にフィリップ・K・ディックの短編小説が原作の『ペイチェック 消された記憶』(ジョン・ウー監督)に主演していた。

映像がややチープに見えるのがロバート・ロドリゲス作品の特徴の一つではないかと思うが本作にはゴージャス感が有ったのも今までと違うように思えたのかもしれない。ただ最後の"組織"の全体像はやっぱりチープに思えた。総勢2、30人くらい。少数精鋭な"組織"なのかもしれない。

ロバート・ロドリゲスの映画プロダクションは「TROUBLEMAKER STUDIO」だと思っていたが、本作では「DOUBLE R PRODUCTIONS」(ROBERT RODRIGUEZのイニシャルからのプロダクション名DOUBLE Rで間違いないだろう)になっていた。どういういきさつなのか詳しい事は分からないがそこら辺も作風の違いに影響しているのだろうか。



『SISU/シス 不死身の男』を観た。2022年、フィンランド、1時間31分。
第二次世界大戦末期のフィンランド。ひとりで金塊を堀当てたフィンランド人の老人はナチス軍の戦車小隊と遭遇する。敗戦が見えてきたナチス軍は撤退の最中闇雲に行く先々の町を破壊し人々を蹂躙し虐殺していた。

面白かった。まさかフィンランドの映画でこんなハードなバイオレンス映画が作られるとは思ってもいなかったがサミュエル・L・ジャクソンがアメリカ大統領役だった『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』(2014年)の監督と同じ人だった。ヤルマリ・ヘランダー監督。
多分『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』を観た時にもまさかカウリスマキ兄弟でお馴染みのフィンランドでこんな映画が作られるとは。と思ったかもしれない。

"SISU"とはフィンランド語特有の言葉で他の外国語への翻訳は不可能で強いて言えば"不屈の闘志を持つ人物"が当てはまるという事。
それは言葉だけの意味ではなくて、その人物の在り方そのものを理解する事が不可能という事になるのだろうと思う。理解を超えた存在と言った方が正しいか。そういう前提が有れば老人が何をしようともそれは彼が"SISU"だからという事で納得するしかない構造になっていて、自分はそれに納得出来て存分に楽しめた。

ナチスドイツ兵が全員英語を喋っているのは気になってしまうが、フィンランド人とドイツ人が会話する時に(会話ではなくナチスドイツ兵による暴言や命令が主だけど)その会話を成立させるためには片方がフィンランド語で片方がドイツ語では都合があまり良くないから両者が英語を話す(理解している)事で成立させたのだろう。
しかし老人は無口で喋るのは最後だけ。確かフィンランド語だったと思う。いくらSISUだと言っても重たいものは重たいと。
しかしあれは次回作の伏線なのかとも考えられる。恐らくあの老人が闘うべき相手は老人の家族を殺したソ連兵であって、今回のナチス軍とは行き掛かり上闘わなければならなかった。ソ連兵と闘うためにその軍資金として金塊を堀当ててナチスから守り抜いて準備万端で次の闘いが待っているのかも。
SISUはあの老人でなければならないという事ではないみたいだから女性でもいいのだろうし、なんだったらフィンランド人じゃなくてもいいような気がする。時代もいつでもいいのだろうと思う。現代篇とか未来篇でSISUは死のうと思わなければ生き続けられるのだから老人をリーダーとしたSISU軍団の血みどろの活躍を観てみたい。
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『福田村事件』『ガープの世界』『毒舌弁護人 正義への戦い』 [映画]

『福田村事件』を観た。2023年、日本、2時間17分。
1923年9月1日関東大震災発生。その数日後福田村で起きた人災は何故起きたのか。

池袋シネマ・ロサにて。

福田村で起きた事件の事だけが描かれるのではなくそれまでの経緯や歴史的背景と当時の社会的背景も描かれていた。
日本と朝鮮半島の歴史的な背景で言ったら本当はもっと遡らないといけないんだろうけど。よく分かっていないのでちらっとだけ調べると大和時代(現在は呼称は古墳時代になるとか)から色々と有って隣国だけあって千年以上の関係。それはさすがにこの映画の中だけでは描ききれない。

日本が貧乏だったという事も人々の心が荒んでいたりする原因の一つなんだろうと思う。しかし日本が世界的に裕福だった時期というのもそんなに長くはなかったわけで1960年代の高度経済成長からバブル経済が崩壊してからのしばらくの間の30年間くらいだろうか。現在は裕福なイメージをどうにかこうにか引っ張り続けているだけ。それは主に世界に認知されている一流企業による所が大きいのだろうと思う。なので国は世界を相手に頑張ってもらわないといけない一流企業をいろんな面で優遇する。
貧乏である自覚が無かった時期も長かったのではないか。それが世界を知って自分達が貧乏である事も知ってしまったがために裕福さへの憧れだとか嫉妬だとかが入り交じる。そうなると裕福な側は妬みに対する恐怖だったり過度な防衛などが行き過ぎて、そんなこんなで国同士での争いに発展するのかも。

日本人が戦争に関して被害者面、善人面する日本映画は最近特に多いが本作では日本人の嫌な部分が描かれている。露悪趣味的にではなく日本と日本人の実態を誠実に実直に描くとそういう事になるのが本当なのだろう。村社会の嫌な所も存分に描かれている。
福田村の事件が起きた当時は共産主義者への弾圧いわゆる赤狩りが行われていた。権力に反発する意見を述べると弾圧されてしまう社会で大多数の総意であっても間違っていると思う事を正そうとするのにはどうしたらいいのだろうか。特に日本人は大多数の意見に流されやすいと言われているし。



『ガープの世界』を観た。1982年、アメリカ、2時間17分。
第二次世界大戦下、看護婦のジェニーは戦地で子供を授かり産まれた男の子はガープと名付けられる。やがてガープは大学で知り合ったヘレンと結婚し子供に恵まれ幸せな家庭を築く。

ル・シネマ渋谷宮下 『ワーナー・ブラザース創立100周年記念上映"35ミリで甦るワーナーフィルムコレクション" selected by ル・シネマ』にて。

相当久し振りに観た。ウン十年前にレンタルビデオで観て以来。
ジョージ・ロイ・ヒル監督の『スティング』が好きでそれで監督作品を何本か観て(全作品は観ていない)、やっぱり『スティング』が好きだなという事で現在に至っている。昨年2022年が生誕100年の記念の年だった。没後20年でもあった。どこかで遅くなったけど生誕100周年記念上映をやらないものだろうか。
久し振りに観て、昔観た印象よりもかなり良かった。多くの人がそう認める様に名作の中に入るんだろうなと考えを改めた。
本作の中で起こる出来事、その内の一つくらいは普通に生きている人達の中で起こるか起こらないかくらいの出来事ではないかと思うし、その一つの出来事だけで一本の映画なり一冊の小説が出来上がってしまうほどだと思う。それらがまとめてガープとガープの周りの人達の世界に起こる。でもそんなに深刻にはならなくて起きてしまったものは仕方ない。くらいの感じで受け入れて、そして後腐れなく引きずらない。そこら辺はあっさりしているというか淡白ではあるけど、人生どんな事も起こり得るのだからそんなに引きずらない方がいいよ。という事なのかも。

ロビン・ウィリアムスの若々しい頃はちよっとだけメル・ギブソンっぽい感じが有った。映画に出始めの頃でしかも監督がジョージ・ロイ・ヒルとなると本職のコメディアンの部分は抑え気味。それもまた初々しさになっていて良かった。最初の方に本作への出演が有ったから後にシリアスな作品にもコメディにも幅広く出演出来たんじゃないだろうか。
ジョン・リスゴーの役は今観てもそうだけど当時もかなりのインパクトが有っただろうと思う。それがインパクトだけじゃなくて好感が持てるキャラクターになったのはさすがジョン・リスゴー。ちょっとシガーニー・ウィーヴァーに見える瞬間が有り、元アメフト選手の役としての身体能力の高さもしっかりと見せてくれる。
グレン・クローズは本作が映画デビュー作という事だけど既にベテランの風格が有った



『毒舌弁護人 正義への戦い』を観た。2023年、香港、2時間13分。
不満を抱きつつ続けていた裁判官をクビになり弁護士に鞍替えしたラム・リョンソイ。大物との接点を持つ事だけに力を入れようと目論んでいたが弁護士としての初の裁判がリョンソイを変える。

香港での記録破りの大ヒットをした作品だとか。香港映画と言えばスター映画の印象が強いが本作の主演俳優ダヨ・ウォンの事は今まで全く知らなかった。ドニー・イェンに見える瞬間が度々有った。
香港映画も近年大分様変わりしたという事が本作の公式サイトに書かれてあった。ダヨ・ウォンも香港では大スターらしいけどかつてのアクション映画を中心としてコメディありラブロマンスありサスペンスありといったエンターテインメント作品よりももっと現実にも即した中での心を動かすいわゆる感動作が受ける傾向に有るらしい。確かに本作もそんなような感じだった。

真実と正義の追求よりも法律の知識と相手との交渉によって少しでも自分の有利な判決を勝ち取る事を目的としていた弁護士が正義に目覚め熱血弁護士となる。という物語は『ア・フュー・グッドメン』とほぼ一緒だと後になって気付いた。そういう法廷モノは他にも有るのかもしれないが。
『ア・フュー・グッドメン』とほぼ一緒と考えると弁護士側のチーム構成男二人に女性が一人なのも一緒だった。
デミ・ムーアに当たる女性弁護士役の人はフジテレビの椿原慶子アナウンサーに似ているなあと思いながら見ていた。映画の中では主人公のバディと言ってもいいほどの役だったけど公式サイトなどではそのキャラクターも演じていた女優さんの事にも一切触れられていない。その女優さんがなんかやらかして触れてはいけない人なのかと思ったけど、そんな何かをやらかしたといった記事も見当たらず名前がレンシ・ヨンとだけ分かった。
本作でジャック・ニコルソンに当たる人物はマイケル・ウォンなのだろう。ジャック・ニコルソンほど致命的ではなかったが法廷での証言で墓穴を掘る所も有ったし。
マイケル・ウォンはアメリカ育ちという事も有って英語も堪能なのは他の出演作品でも見られた。しかし法廷で英語と中国語(多分広東語)をチャンポンで話すのは許されるものなのかはよく分からない。



『トンソン荘事件の記録』で寝た。寝たと言うより映画開始から何十分か経った辺りからほぼずっと睡魔と闘っていて内容が全然頭に入ってこなかった。
警察に保管されていたいわくの有る事件の取材記録映像を取り戻した取材者の関係者がその映像を編集して観やすいドキュメンタリーに仕上げたという体の作品でいいのか。
見てはいけないビデオ映像を見てしまったために呪われる。というと日本の某ホラー映画の様だけど、その映像をこの作品の観客も見てしまった。という所も恐怖であったのか。
ファウンドフッテージであるのだろうけど『ブレアウイッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』みたいに記録映像の素材そのものといった感じではなく、映画として観やすい感じにはなってはいたのだけどそれでも寝不足状態で観るのは自分には無理が有った。
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『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『ザ・クリエイター/創造者』『カンダハル 突破せよ』『北極百貨店のコンシェルジュさん』 [映画]

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観た。2023年、アメリカ、3時間26分。
1920年代、アメリカ、オクラホマ州オセージ。先住民のオセージ族は自分達の土地を追いやられこの地にやって来た。石油が出た事によって財産を得るがオセージ族に使われる身となった白人たちがその財産を狙っていた。

白人たちがオセージ族に媚びへつらって親切な隣人を装いながら財産を掠め取ろうとする姿が全編に渡って描かれていてとても胸糞が悪い。
ディカプリオが演じる主人公がなんにも考えずに悪事を重ねるがそれを悪い事だとは思っていなくて、でも善悪の区別がつかない人間ではなくて、ただオセージ族の人達に対してだけは酷い事がナチュラルに出来てしまう。それは結局なんにも考えていないからなんだろうと思う。
悪事を働く時に頭を使う人間は自らは実行せず誰かにやらせる。実行犯に適しているのはなんにも考えない人間で、世の中の悪事を実行するのは大体がなんにも考えていない人間だという真理が描かれていたのかもしれない。

終盤に差し掛かってからFBIが出て来て胸がすく。『ミシシッピー・バーニング』ほどではないが。
FBIが世に知られるようになった事件の一つであるらしいがイーストウッド監督作品『J・エドガー』にはこの事件の事は描かれていただろうか。覚えていない。
本作は当初はFBIをメインに描かれる予定だったとか。ノンフィクションである原作ではそうだったのかもしれない。それをディカプリオの提言をスコセッシ監督が聞き入れてFBIの出番はかなり減ったのだとか。
そういえばデ・ニーロの監督作品『グッド・シェパード』もFBIの話じゃなかったっけかと思っていたが『グッド・シェパード』はCIAの話だった。ちなみに『グッド・シェパード』の脚本は本作ではスコセッシ監督と共同脚本のエリック・ロス。

ブレンダン・フレイザーが出ているのは知っていたがその事をすっかり忘れていた頃の登場だったのでちょっと驚いた。更に側にいたのがジョン・リスゴーでジョン・リスゴーが出ている事は知らなかったのでかなり驚いた。久し振りに姿を見たという事でもなく現在も映画にテレビドラマに活躍中。配信作品も有るのかもしれないし舞台にも立っているのかも。

デ・ニーロが『アイリッシュマン』の時とは違って年相応な役だったのが良かったが、ディカプリオの弟役の人がどう見てもディカプリオの弟には見えず、最初誰かの弟と言われていてデ・ニーロの弟なのかと思っていた。
スコセッシ監督は役者の見た目と役の年齢の合致にはあんまりこだわらない人なのか。まあ実際にもお兄さんだと思っていたら弟さんだったりその逆も有ったりはするけど。
ディカプリオが若く見え過ぎるという所も有るのだろう。役者として見た目で得していた時期から見た目で損する時期になっていくのかもしれない。ジャック・ニコルソンを真似てみても拭いきれないお坊っちゃま感が。



『ザ・クリエイター/創造者』を観た。2023年、アメリカ、2時間13分。
A.I.がロサンゼルスに核爆弾を落とす。アメリカはA.I.根絶のため破壊兵器"ノマド"を投入して全面戦争に突入しA.I.を擁護するニューアジアとも敵対する。

未来を舞台としたSF。ビジュアルの完成度が高くそれだけでも満足できる。
話の方は途中までハードSFな感じで良かったけど最後の方と結末はちょっと甘くなってしまった様に思えた。A.I.とかけているわけではないのだろうが"愛"が地球を救うとなったら甘くなるのも致し方ないけども。

軍人役の人の声の低音の響き方が凄いなと思って、あんまり聞いた事の無い声だった。軍服姿で帽子を被っているので顔がはっきりとは見えずに最後まで誰が演じているのか分からなかった。調べたらラルフ・アイネソンというイギリスの俳優さんでフィルモグラフィを見ると出演作は結構観ていた。本作での声はとても印象的なのに今まではなんで印象に残らなかったのだろうか。
あの声は日本語吹き替えではどうなっているんだろう。
ちなみに渡辺謙さんの日本語吹き替えはクレヨンしんちゃん二代目野原ひろしでお馴染み(お馴染みはもっと沢山有るだろうけど)森川智之さん。やっぱり謙さんに似せてる感じになっているのだろうか。



『カンダハル 突破せよ』を観た。2022年、イギリス、1時間59分。
MI6からCIAに出向しているトム・ハリス。イランの核施設の破壊に成功し帰国のため空港に向かうが新たな任務を依頼される。

CIAにイランの諜報部にタリバンにISISにパキスタンのイケメン兄さん、その他にもどこかの誰かが加わっていただろうか?軍閥間でのいざこざみたいなのも有ったか。そういった組織やイケメンが絡んでいてその関係をちゃんと理解出来たかは怪しいがアクション映画としてのストーリーはそれほど複雑ではなくむしろシンプルなので楽しめた。

それにしてもパキスタンのイケメン兄さんはカッコ良かったけどちょっと間が抜けていた。砂漠で追跡するのになにもバイクを選ぶ必要は1ミリもなかったと思う。結局ガス欠になるし。追跡するのにガス欠ってなんだよ。と全く関係が無くても思うのだから迎えに行った人達からしたら余計に(バイクでなんか行くなよ)と心の中では思っていたに違いない。黒ずくめの出で立ちでバイクで颯爽と飛び出して行った瞬間に既に(バイクでなんか行くなよ)と思っていたかも。
最後のトム・ハリスとのタイマン勝負もあれはカッコいいのかどうか自分には判断しかねる。



『北極百貨店のコンシェルジュさん』を観た。2023年、日本、1時間10分。
動物たちをもてなす北極百貨店の新人コンシェルジュが接客を通して百貨店ならではのもてなしを日々学んでゆく。



とにかく動物キャラクターたちの絵柄が可愛らしくて目と心の保養になった。物語も優しい。
個人的に動物の作画と言えば森康二さんだけど(動物だけじゃなくて描くものなんでも上手いし可愛らしい)匹敵するくらいじゃないかと思う。

作画で『カリオストロの城』で幽閉されているクラリスの前にルパンが現れるシーンでの動きっぽい所が有った。シチュエーションは違うけど。

原作漫画は未読。どうやら北極に有るから北極百貨店ではないみたい。実は地理的には北極で温暖化で住みやすい土地になったのかもしれない。それはただの妄想だけどではなんで北極百貨店なのか?と勝手に考察してみると、日本の有名百貨店に西武(西武・そごう)と東武が有って、それなら北でそれなら北極だ。となったんじゃないだろうか。英語とか外国語では何かの意味が有ったりするのか。南極百貨店も有るのか。
ところで昔雑誌の頃のぴあの欄外の"はみだしYOUとPIA"という読者投稿のコーナーで東西南北の東西の位置の覚え方で北が上に位置するのが前提にはなるが漢字の北の右側の部分がカタカナのヒに似ているので右がヒガシ東(その反対の左が西になる)という投稿が有ってそれで東西の位置を覚えてとても役に立った。
「東西南北」で位置を覚えようとすると頭の中でごちゃごちゃになってしまうのかもしれない。「東南西北トンナンシャーペー」の方が並びが時計周りになっているので位置を覚えやすいかも。

動物界の弱肉強食については大豆を使った代替肉を食用としているらしい。そういうとこをちゃんといているのが良かった。
何故動物たちが人間の言語を使い二足歩行する種類もいるのか?そこら辺の理由もきちんと有るのかもしれない。物凄いSF的な設定だったりして。
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『オペレーション・フォーチュン』『シアター・キャンプ』『宇宙探索編集部』 [映画]

『オペレーション・フォーチュン』を観た。2023年、イギリス=アメリカ、1時間54分。

フリーランスのスパイ、オーソン・フォーチュン。MI6からの依頼によりウクライナの研究所から強奪され100億ドルで取引されるという通称"ハンドル"を奪回するための任務に就く。

ネタバレ有り。

本来は敵対する人物も仲間に引き入れて難事に立ち向かうのは『ワイルド・スピード』っぽい。そういったシリーズ化も目指しているのだろうか。引き入れた人物はまだ敵か味方か分からないので状況が変わればいつでも敵対関係に戻りそう。何か弱味を握られているという事だけど。

真犯人は何がしたかったんだろうか。"ハンドル"を手に入れるのが一番の目的であるはず。そのために裏社会の大物に仲介してもらうがその仲介料が恐らく莫大でしかも大きな借りを作る事になる。それならば横取りした方が安く済んで大物の面目も潰れて目の上のたんこぶがいなくなるといった所だろうか。"ハンドル"を手に入れれば世界経済の頂点に君臨出来るわけでそれなのに仲介料を出すのが惜しかったのだとするとあまりにもセコい。世界経済を破綻させようとした悪党が実際は悪党とも呼べないくらいの小物だったという事か。



『シアター・キャンプ』を観た。2023年、アメリカ、1時間33分。
演劇を教える子供達のサマー・キャンプが経営危機に。最終日の発表会の出来がキャンプ存続のカギを握る事となった。

モキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)という事でいいのだと思うけどモキュメンタリーとしての出来は今イチ。ドラマとしての筋を追うためにドキュメンタリーならカメラの前でしないであろう会話や行動をする。偽とは言えしっかりとしたドキュメンタリーの体裁を保たないと興醒めしてしまう。
しかし発表会のミュージカルは良かった。ミュージカルは苦手だけど見せ場を繋いだダイジェスト的な見せ方なのが自分には良かった。

演劇のサマーキャンプとなると参加者は本当に本作に出てくるような子供達ばかりなのだろうか。大人びていながら普段の行動は演劇の好きな子供を演じているようなどこか芝居じみている。モキュメンタリーだからそういう風に演じているのだろうけど、そういう子供達が実際にもいるからそういう風に演じさせているのだろうし。
普段の学校生活では浮いているというか仲間が出来にくいと嘆いているかもしれないが、相手の側からしてみたら仮に仲間になりたいと思っていても近付きづらいと思われているのかも。



『宇宙探索編集部』を観た。2021年、中国、1時間51分。
かつての人気UFO雑誌『宇宙探索』は現在はじり貧状態。しかし編集長の宇宙への熱意だけは変わっていなかった。

思っていたより静かな映画で、つまらなかったわけではないけど最後の方の肝心な所で少しの間ウトウトしてしまいそこで何が起こったのか(何も起こらなかったのか)分からず結局どういう映画だったのかもよく分からなかった。ハッピーエンドみたいではあった。
エピローグで宇宙の広大さが映し出される所はちゃんと観て、アプリ版のぴあで押井守監督と映画ライターの渡辺麻紀さんとの対話形式で投稿された質問に答える連載があって、少し前が「宇宙人は存在するのか」というテーマ。押井監督はそこで三次元的には異星人は存在するであろうけどそこに時間を加えた四次元では地球人と同じ時間軸を持った異星人がいる可能性が低いので遭遇する確率も極めて低くほぼゼロ。みたいな事を話されていた。
本作のエピローグでの宇宙の広大さが現わされているのを目にすると同じ時間軸を持った異星人がいたとしても距離が光の速度で何百年とか何千年とか離れていたらワープ機関が存在しないとやっぱり遭遇は出来ないんだろうなあと思う。
では宇宙人とは遭遇出来ないのかといえば地球人も宇宙人であるのだから毎日どこかで学校で職場でコンビニで宇宙人と遭遇している事にはなる。本作の中で地球上にある全ての砂粒の数より宇宙に存在する星の数の方が多いといわれていたのが印象深い。そのもしかしたら無限に存在するかもしれない星の中で生き物が生存する事ができる星がレアだったとしたら、毎日顔見知りの宇宙人や初対面の宇宙人に遭遇するのは天文学的な確率でレアな事で。しかし普段の生活をしていて宇宙レベルの事に気付くのは難しいので同じ星で生きる宇宙人同士が争いを起こしてしまう。
押井監督は地球人が異星人と遭遇する事が出来ないと知った時には、それまで異星人は存在するはずでいつかは遭遇する事も有るはずというぼんやりとした認識が崩壊し、その頼りない認識の上に成り立っていた価値観やものの考え方も崩壊するであろうとも話されていた。
本作ではどうだったんだろうか。遭遇はしていなくても宇宙人が存在する痕跡みたいなものが主人公の前に現れたのだろうか。

本作も『シアター・キャンプ』と同じくモキュメンタリー。モキュメンタリーとしての出来はこちらの方が良かった。
しかし、こういった変化球的な作品はA級からZ級まである程度の作品が出尽くした頃合いに出てくるものかと思う。そういったタイプの作品が色んな過程をすっ飛ばしていきなり現れる中国映画の進歩の速さに驚くばかり。『ライオン少年』もいきなり高品質なCGアニメが現れて驚かされたし。

ところで、公式サイトやallcinemaのあらすじに主人公はUFO雑誌の編集長と記されていて自分もUFO雑誌と記しているがUFO雑誌って何?UFOの事だけが載っている雑誌なのだろうか。月刊誌なんだか季刊誌なんだかどれくらいのページ数なのか分からないがそんな珍しい雑誌を何十年も刊行し続けられているのは読者が興味を持つかは別にしてUFOネタ自体には困っていないという事なのか。
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『ロスト・キング 500年越しの運命』『コカイン・ベア』 [映画]

『ロスト・キング 500年越しの運命』を観た。2022年、イギリス、1時間48分。
健康、家庭、仕事において不調な主婦フィリッパ・ラングレー。気乗りのしないまま観劇した『リチャード三世』でこれまでになくリチャード三世を不憫に思う。果たしてリチャード三世はこれまで伝えられてきた様に極悪人だったのか。フィリッパの探求が始まる。

ネタバレ有り。

良い映画だった。最後でモヤッとした感じになってしまうがああいう事はイギリスだからというわけではなくどこの国でも起こる事だろう。
それを映画だからといって事実を曲げてみんなハッピーなエンディングにしてしまってはフィリッパがリチャード三世の真実を探りそして伝えようとする想いからは離れる事になるだろうし。

英国国王リチャード三世についてはほとんど知らない。フィリッパが観たシェイクスピアが書いた舞台劇『リチャード三世』でそのイメージが決定付けられたらしい。
アル・パチーノの今の所の唯一の監督作『リチャードを探して』(1996年)がその舞台劇『リチャード三世』を通してシェイクスピア作品の魅力に迫るといったドキュメンタリーだったと思うが内容はほとんど覚えていない。
シェイクスピアが『リチャード三世』を書いたのがリチャード三世の没後から100年近く(100年以上だったか)経ってからという事で、フィリッパの疑問もそこから始まって、確かにそれだけの時間が空いて真実に近い人物像が描けるかといったらどうなんだろうと思う。歴史なんかそれを伝える人の主観でコロコロ変わるし変えられるし。
ただ、紛れもない事実というのも後世に伝わるわけで、だからこそフィリッパはその事実を基にしてこの偉業を成し遂げられた。
リチャード三世に関して伝えられている事はシェイクスピアが作劇する前に誰かによって事実をねじ曲げられたのではないかと擁護派は推測するが結局真実はどうだったのかは分からずじまい。身体的な特徴は伝えられている通りではあった事からこれまでの説を信じている人達は更に信じる事になるのかもしれない。



『コカイン・ベア』を観た。2022年、アメリカ、1時間35分。
1985年、アメリカ。ジョージア州の国立公園にコカインを食べてハイになった熊が出没。

動物系のパニックムービー。熊に襲われるだけでは時間が持たないので襲われる人間のドラマも描かれるがそんな大したドラマでもない。なのでそれで話が膨らむという事もなく逆に話が散漫になってしまったと思う。

話が進むにつれ段々と日が沈んできて嫌な予感がしたけど思った通りにクライマックスでは夜になって画面が薄暗い。クライマックスがあまり盛り上がらないのを暗くして誤魔化していたのではないかと疑ってしまう。

レイ・リオッタの遺作の内の一本。日本では公開されていない作品がまだ有るみたい。

某TOHOシネマズの4DXのスクリーンで上映された。4DXではなく通常版での上映。本作の4DXでの上映が有ったのかは知らない。たまたま空いていたので遊ばせておくのはなんだし10円でも20円でも儲けるために上映されたのだろう。
4DXは4つの座席が繋がっている構造なので他の人がちょっと体を動かすとその振動がダイレクトに伝わってきて落ち着かない。
自分もよくもぞもぞしてしまうので他人の事はうるさく言えないのだけど上映したTOHOシネマズには値上げしといてそんなケチくさい事すんなよとうるさく言いたくなってしまう。
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『アントニオ猪木をさがして』『ハント』『PIGGY ピギー』 [映画]

『アントニオ猪木をさがして』を観た。2023年、日本、1時間47分。
昨年亡くなられた元プロレスラーアントニオ猪木さんへの想いをそれぞれの人が語る。

猪木さんの全てを語るのには時間がいくらあっても足りないのだろう。なので猪木さんと猪木イズムに影響を受けた人達がアントニオ猪木という人物はその人たちにとってどの様な存在だったのかを語る事によって猪木さんの人物像を探っていく内容だった。それはそれで良かったけどプロレスラー時代も引退後も破天荒な面白エピソードやなかなか表には出しづらい危ない意味でのヤバいエピソード、それもワールドワイドにいっぱい有る人だっただろうからそういった内容のドキュメンタリーもいつか観てみたい。
馬場さんとの関係も触れないわけにはいかないだろうし、絶頂時には猪木さんと人気を二分していたタイガーマスクとか、テレビ中継実況の古舘さん解説の小鉄さんなど、その他にも多くの猪木さんを取り巻く人達も濃いい個性派ばかりなので大長編になってしまうかもしれない。だとしたら『プロレススーパースター列伝』の猪木さん編を読み直すべきかと考えるが『プロレススーパースター列伝』にはかなりのフィクションも入っているらしい。その原作者の梶原一騎(『プロレススーパースター列伝』では高森朝雄名義)さんとも色々と有ったり。

後は猪木さんと言えば猪木さんを物真似する人が多い。その中でも個人的に猪木さんの物真似と言えば春一番さん。ウィキペディアを見ると春一番さん以前の猪木さんの物真似と言えばアゴを突き出して「なんだこの野郎」とお決まりの文言を言えば通用していた中で春一番さんはそのお約束をあまりしないで猪木さんの言動を再現した初めての人とあってそう言われると確かにそうだったかもと思い出す。『お笑いウルトラクイズ』でのプロレスのリングを使ったコーナーが有った時は締めは春一番さんの猪木さんの物真似でそれを楽しみにしていた。猪木さんの「元気ですか!元気があれば何でも出来る」と、ご唱和バージョンの「1、2、3、ダァーッ!」がプロレスファン以外で一般的にも認知されるようになったのも春一番さんが一役買っていたかも。


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恐らくマンガ界にも多くの影響を与えていて『プロレススーパースター列伝』も初めに猪木さんと新日本プロレス有りで連載が始まったという所も有るのではないか。そしてなんと言っても忘れてはならないのが『1・2の三四郎』。
「1、2、3、ダァーッ!」はちょっとだけ『1・2の三四郎』とつながっているような。

猪木さんの引退の時のスピーチ
「この道を行けばどうなるものか
危ぶむなかれ危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となりその一足が道となる
迷わず行けよ行けば分かるさ」
猪木さん御自身が元々は一休和尚の詩と言われていてずっと信じていたけど本当は違う別の人の詩らしい。猪木さんが本当に一休さんの詩だと信じていたのか、騙されやすい人だとは本作の中で藤原喜明さんが言っていた。冗談好きな所もあるらしいのでちょっとしたいたずらだったのか。
プロレスラーとして最期の時に本当か嘘か分からない事をするのもなにか猪木さんらしいっちゃらしい気もする。

池袋シネマ・ロサにて。
今年の9月からネット予約、QRコードでの入場への対応を始められた。ロサに文明開化がやって来た。
受付の窓口はなくならないんだろうけど。ほとんど外と同じなのであの狭い所で今年の夏は特に暑かっただろうと思う。当然エアコンは付いてるんだろう。



『ハント』を観た。2022年、韓国、2時間5分。
1980年代独裁政権下にある韓国。旧KCIAの安全企画部は市民による民主化運動と北の不穏な動きに手を焼いていた。極秘事項の漏洩が発覚し以前から噂されていた北からのスパイを見付け出す事が優先され安全企画部職員同士がお互いに疑いを持ち始める。

俳優イ・ジョンジェの監督デビュー作。面白かった。デビュー作にしてよくこんなスパイエンターテインメント大作を撮ったなと観ている間感心しきり。しかも脚本も。
アクションシーンはアクション監督が撮ったのかもしれないけど。俳優からの監督デビュー作はちょっと地味で控えめな作品になるのが常な中で破格のエンタメ作品となっていた。
エンタメ作品で有りつつ朝鮮半島の南北問題を取り入れる所はイ・ジョンジェ監督に限らず韓国の方には素地として有るのかもしれない。

公式サイト等であらすじを読むと二重スパイとなっている。「二重スパイ」という言葉が出てくると一気に訳が分からなくなるのだけど本作の劇中には使われなかったので助かった。
本作では二重スパイだったか?と考えるといつも通りに訳が分からなくなりそうだったけど、
ネタバレ有り
北の人間が南に送り込まれたらそれはただのスパイで、南にいる南の人間がなんらかの理由で北側のスパイになると二重スパイになるという事なのか。
送り込まれたスパイが実は送り込まれた側のスパイだったのが二重スパイの解釈で固定されていたけど、送り込むのではなくその現地にいる人間を寝返らせるのも二重スパイなのか。
本作ではいないけど更に三重スパイ(さんじゅうすぱい。三重県のスパイではない)というのもいて、それは全く理解出来る気がしない。



『PIGGY ピギー』を観た。2022年、スペイン、1時間39分。
太った体型を同級生達からからかわれ酷い仕打ちを受けるサラ。おとなしい性格のサラはひたすら耐える日々が続き夏のある日の午後にも数名の女子からいじめられる。その帰り道サラはサラをいじめた女子達が車で連れ去られるのを目撃する。

スペインの映画はちょっと変わった作品が多いので本作にもいじめられっ子が救いのヒロインとなるがそれプラス何か変わった事が起こる作品を期待していた。

ネタバレ有り。

やはりこちらの期待を裏切る作品でそこら辺はスペイン映画らしくも思えた。サラが救いのヒロインになかなかなろうとしない。最終的にはなるのだけど、それは誰かを助けるためではなく、それまでのおとなしくて少し卑屈だった自分から抜け出すため、自分自身を救うためだったのだろうと思う。言わば自立の物語。
そのために誰かの力を借りるのではなく、『俺たちに明日はない』のボニーとクライドか『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の様なバイオレンスカップルが誕生するのかとも思ったけど今の時代誰かの力を借りて、特に異性の力を借りてなんてのはナンセンス極まりないのかもしれない。『バービー』も然りで。
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『ビッグ ウェンズデー』『沈黙の艦隊』 [映画]

『ビッグ ウェンズデー』を観た。1978年、アメリカ、2時間。
カリフォルニアのビーチ。サーフィンで結ばれた若者たちの友情を1962年の夏、1965年の秋、1968年の冬、1974年の春に亘って描く。

Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下 "ワーナー・ブラザース創立100周年記念上映"35ミリで甦るワーナーフィルムコレクション"selected byル・シネマ"にて。

初見。観ようと思っているリストには長年入っていて劇場で上映されたので観た。
観たい理由の一つはゲイリー・ビジーが出ているから。同じくサーフィン、サーファーの生態が描かれている映画『ハートブルー』好きとしてはもっと早く観るべきだったと思えるほど本作の出演が有ったから『ハートブルー』への出演が有ったんだろうなと思えた。本作でミートボールサンドは食べないが。
『ハートブルー』では「サーファーなんかの考えてる事は全く分からん」と言っていたのに本作ではサーフィンして仲間たちと馬鹿騒ぎしてる。

しかし1962年の夏の馬鹿騒ぎは本当に酷かった。この映画ってこのままサーフィンもあんまりしないで終わってしまうんだろうか?と心配になるほどだったけど、やはり青春映画の名作と言われるだけあって年を重ねるにつれ物語としての厚みが増してくる。1974年の春になると1962年を懐かしんだりするが観ているこちらはほんの数十分前に目にした事なのに一緒に懐かしんでいた。
映画はただ過ぎた日を懐かしんでるだけじゃなくて馬鹿騒ぎしながらもサーフィンには真剣に打ち込んでいたのだろうし(そういった描写はほとんど無いけど)その総決算として、長年待って遂にやって来た"ビッグウェンズデー"に三人が立ち向かうというスペクタクルが用意されているのが良かった。

メインの三人組はゲイリー・ビジーと、メインの中でも主役はテレビドラマ『エアーウルフ』のジャン=マイケル・ヴィンセントになるのだろう。そしてもう一人、テレビドラマ『アメリカン・ヒーロー』のウィリアム・カット。ウィリアム・カットは映画ではブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』に出ていた。
ジャン=マイケル・ヴィンセントは2019年に亡くなられていた。
端役では『エルム街の悪夢』シリーズのフレディ役でお馴染みのロバート・イングランドが出ていた。各章の初めのポエティックなナレーションもやられている。

Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下は以前の渋谷TOEI。渋谷TOEIからそんなに大きく変わってはいなかった。若干客席数は減っているみたい。
道玄坂の方のル・シネマは昔のミニシアターといった感じだったけど渋谷宮下の方は昔の映画館といった感じ。



『沈黙の艦隊』を観た。2023年、日本、1時間53分。
海上自衛隊ディーゼル潜水艦やまなみ艦長海江田四郎と乗組員はやまなみが沈没し全員が死去したとされているがそれは一部の人間の悲願である原子力潜水艦を手に入れるためのカモフラージュであり、海江田たちは日米で極秘に建造した最新鋭の原子力潜水艦シーバットの乗組員となっていた。

原作漫画はモーニング連載当時の30年以上前に途中まで読んでいた。初めの方の潜水艦による海戦は面白く読んでいたが段々と政治色が濃くなってからついていけなくなって途中離脱したまま現在に至っている。
今回の映画化では何部構成になるのか告知はされていない(自分が知らないだけか)がこれ一本で終わるわけがないのは分かっているので続編が有る事は承知の上で観ていたけど、それにしてもこの一本だけでは海江田が何をしたいのかが不明過ぎたと思う。確か原作でも海江田の真意はなかなか明かされなかったかもしれないが海戦の面白さで自分も含めて読者を惹き付けていたと思う。この映画で観ている者を惹き付ける何かが有ったかと言うと自分には見つけられなかった。
ウィキペディアをチラッと見るとどうやら軍事力はあくまで世界平和のために使うべき。その為に海江田は身を挺して礎になる事を選んだ。という事になるみたいで、連載当時と現在では世界情勢が変わっているが海江田がやろうとしている事は現在でも誰も為し得ていないわけで、そもそもやろうとする人もいるのかいないのか。ある意味で理想の世界を目指そうとする姿は現在でも描く意味は有るのかもしれない。
しかし軍事力による世界平和のためには正義の基準が重要になるわけでその正義の基準を誰が決めるのかという所が最大のネックになるのではないだろうか。いきすぎた正義というのもそれはそれで問題になるわけで。
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『バーナデット ママは行方不明』『台風クラブ』 [映画]

『バーナデット ママは行方不明』を観た。2019年、アメリカ、1時間48分。
シアトル在住の主婦バーナデット・フォックス。会社を経営する良き夫と可愛くてたまらない愛娘との暮らしには不満はなかったがそれ以外の人にも町にも不満を抱え近所付き合いも一切しないために地域では孤立していた。その孤立がやがてバーナデットを窮地に追い込んでいく。

勝手な想像で不条理劇と言われる『ゴドーを待ちながら』みたいな作品なのかと思っていた。ママはそんなに出てこないような。ママを演じているのがケイト・ブランシェットだからそんな事にはならないんだろうとも思ってはいた。実際の映画はケイト・ブランシェットがほぼ出ずっぱりのファミリードラマだった。思っていたのとは違ったけど良く出来たファミリードラマで面白かった。
リッチなセレブだから成立する話で庶民にとっては現実感は無いのだけど、それをあまり感じさせない語り口の巧さが有ったと思う。
ネタバレ有り。
隣家のママ友、いがみ合っているので友ではなかったが。その人と意外な形で和解し、和解する事になる原因も予想外。バーナデットが自分を取り戻す事になる南極行きもそういう事が出来る人はそうそういないはずで突拍子も無い事のようにも思えるが、それまでに至る経緯がしっかりと描かれているので納得が出来る。

ケイト・ブランシェットはやはり上手い女優さんだなと思った。『TAR/ター』の時もそう思って、本作は日本での公開は後になってしまったけど『TAR/ター』よりも2、3年前の作品で、それよりももっと前からアカデミー賞主演女優賞、助演女優賞のWホルダーだから折り紙付きなのだけど近年はそのレベルが更に高くなっている様に思える。
とか思ってても"名優、役を選ばず"の境地なのか出演作選びは自由で『ルイスと不思議な時計』とかにも出るし。『ルイスと不思議な時計』の監督でもあるイーライ・ロスの監督作"BORDERLANDS”でもジャック・ブラックと共演するみたいで二人とよっぽどウマが合ったのか。

エピローグみたいな所で移動型(?)の南極基地が映されて、あれがバーナデットが設計したものだとしたらこれって実話?と思ったがそうではないらしい。でもあの基地は実在するのだろうか?CG?



『台風クラブ 4Kレストア版』を観た。1985年、日本、1時間36分。
東京から離れた地方の中学校。中学生達はそれぞれの悩みや想いを抱えて日々を過ごす。

ユーロスペース "作家主義 相米慎二2023"にて。

初見。1985年当時での中学生の描き方が斬新だったのではないだろうか。当時中学生がどの様な扱われ方だったのか。まだ子供の小学生と大人になりつつある高校生の間で中途半端な存在として扱われていたのではないか?テレビドラマ『3年B組金八先生』が始まったのが1979年。『金八先生』でも中学生を取り巻く様々な問題が描かれているが、本作では子供と大人の狭間にいる中学生の純粋で未熟であるからの暴力や性への衝動を更に突っ込んで描かれているように思えた。

恐らくコメディと言ってもいいんだろうと思う。コメディだと思いたい所も有った。一人の中学生の犬神家の一族の有名シーンの様な最期もあれはそのパロディで急いで引っ張り上げて助かったはずと思いたい。
その中学生役を演じていたのは映画の中で鶴見辰吾さんがお兄さんを演じていたが実際にも兄弟という事は全く知らなかった。

三浦友和さんが先生役。後に北野武監督作品の『アウトレイジ』でヤクザ役を演じる事になるがその準備はもうこの時に出来ていたんだなと思える。『アウトレイジ』以前にもヤクザ役を演じていたかもしれないが。
あの先生のキャラクター、ぶっきらぼうな所とかは相米慎二監督の人柄が反映されていたりするのだろうか?


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『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』 [映画]

『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』を観た。2023年、アメリカ、1時間40分。
ニューヨークの地下下水道で隠れて暮らす1匹のネズミと4匹のカメ。人間の年齢で15歳、ティーンエイジャーのカメたちはネズミの事を自分たちを育ててくれる父親として、また人間から身を守るための護身術の師匠として慕っているが、人間とは絶対にかかわらない事とするネズミの教えとは裏腹に人間たちとのハイスクール生活を夢見ていた。

面白かった。これまでのタートルズ映画を全部観たわけではないけど、カメ達の普通のティーンエイジャー(あくまで人間的な意味での普通)への憧れはこれまではひとつのネタとして扱われる事が多かった様な気がする。今回はその憧れと、でも冷静に考えれば無理なことは分かっている諦めが切なさになっている所にキュンとなる。ただこれまでと同じでネタにする事も忘れていなくて笑いと切なさのバランスが絶妙に取れていて、それは敵の側にも言えて、そこら辺の上手さは脚本にも参加しているセス・ローゲンならではないかと思える。

セス・ローゲンとは『ネイバーズ』『ネイバーズ2』で夫婦役だったローズ・バーンがワニ(?)のレザーヘッド役だったのには気付かなかった。
声に関しては最初ジャッキーにも気付かなかったがよく聞いてみればジャッキーだと分かって、『カンフー・パンダ』の全シリーズと合わせてもこっちの方が台詞が多いんじゃないかと思えてそれが嬉しかった。英語での演技も上手くなっているという事なのか。

これまでの作品でもそうだったけどカメ4匹のキャラクターの違いが最初はよく分からなかった。それは見た目と名前が一致しない事も原因だったと思うがその解決法の一つとしてベルトのバックルに名前の頭文字が有る事にようやっと気付いて、Lレオナルド真面目、Rラファエロ喧嘩っ早い、Mミケランジェロお笑い、Dドナテロ頭がいい。というキャラクターだとようやっと分かった。
公式サイトのキャラクター紹介文がいい。https://turtles-movie.jp/character.html

気になったのは画面が暗い。屋外では夜のシーンが多いし、日中では地下にいる事になるので仕方ないのかもしれないけど、上映設備が多分最新のシネコンで観たけどそれでも暗く思えたので一般家庭のテレビ、モニターで観たら真っ暗になってしまうんじゃないだろうか。テレビやモニターの性能も上がっているのでそんな事にはならないか。



別の映画を下北沢に新しく出来た映画館シモキタ-エキマエ-シネマ「K2」で観た。映画館のオープンは去年の1月だったらしいけどそんな情報は一切入ってこない情弱ぶりが泣ける。下北沢に滅多に行かないのも原因なのかもしれない。再開発されているらしいという事はなんとなくは知っていて、実際に行ってみたら大分変わったんだろうなとは感じられたけどどこがどう変わったのかは全然分からない。
映画館の客席に入ると照明がボール状なのが珍しいなと思って、それが予告が始まって客席の照明が少し落とされた時に複数のボール状の明かりだけがぼんやりと浮かび上がるのがカッコよかった。
肝心の映画は寝不足気味だった事もあって寝てしまった。今年は観る本数も減ったのもあってまだ2本と少ない方。もう1本はモリコーネのドキュメンタリー。これからどうなるかは分からないが。
シモキタ-エキマエ-シネマ「K2」はちょっと席の間が狭いけどまた観たい映画をやっていたら行ってみたい。
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